量子化学:結合性・反結合性軌道とHOMO・LUMOをつなぐ

高校化学から大学初年級/内容確認:2026年10月14日

原子が近づけば、必ず結合するのでしょうか。二つの原子軌道を組み合わせると、結合を強める軌道と弱める軌道の両方が現れます。どちらに何個の電子が入るかを調べてみましょう。

同じ向きに足す場合と、逆向きに足す場合

二つの水素原子の1s軌道を考えます。核の間で波動関数が強め合う組合せでは、核間に電子が分布しやすくなり、結合性分子軌道ができます。打ち消し合う組合せでは核間に節ができ、反結合性分子軌道になります。二つの原子軌道から二つの分子軌道を作るので、反結合性軌道を省略すると、取り得る電子状態を半分捨てることになります。

結合性σ軌道

低いエネルギー。電子を入れると、通常は結合が強まる方向に働きます。

反結合性σ*軌道

高いエネルギー。*は「反結合性」の目印です。電子が入ると結合が弱まる方向に働きます。

電子を入れて結合次数を数える

結合次数 =(結合性電子数 − 反結合性電子数)÷ 2

H₂では二つの電子が低いσ軌道に入り、結合次数は1です。H₂⁺では電子が一つなので0.5になります。He₂に同じ簡単な模型を適用すると、σに2個、σ*に2個が入り、結合次数は0です。軌道が存在することと、安定な共有結合ができることは同じではありません。(OpenStax:1.11 分子軌道法)

電子数を変えると結合はどうなる?(1 − 0) ÷ 2 = 0.5

1s軌道だけを使う基底状態の模型です。非常に弱い分散力による会合は、この結合次数の計算には含めません。

反応で使うHOMOとLUMO

電子が入っている軌道のうち最もエネルギーが高いものをHOMO、空いている軌道のうち最も低いものをLUMOと呼びます。求核剤の電子対を含む軌道と、反応相手の空軌道の相互作用を考えると、「どこに結合ができるか」を説明しやすくなります。HOMOは常に結合性、LUMOは常に反結合性という定義ではありません。

例えばSN2反応では、求核剤の電子対がC–脱離基結合のσ*軌道と相互作用します。新しい結合を作る動きと、古い結合を弱める動きを同じ図で扱えるわけです。

発展:炭素どうしの四重結合はある?

二原子分子C₂の結合を何本と数えるかは、電子状態をどの模型で分解するかとも関係し、研究上の議論があります。高校で習う炭素の「四価」は、一つの相手と必ず四重結合できるという意味ではありません。特殊な二原子分子の議論を、そのまま普通の有機分子へ当てはめないことが肝心です。

考えてみよう:反結合性軌道が空なら、その軌道は不要?

不要ではありません。光で電子が励起された状態や、反応相手から電子を受け取る過程を説明するために必要です。