溶接で熱い金属を守り、複層ガラスで熱の移動を抑える。アルゴンは、目立たない気体として製品の品質と性能を支えています。原料は、どの国にも存在する空気です。
Ar|原子番号18|アルゴン
第3周期・第18族の希ガス。空気中に体積で約0.93%含まれ、通常は単原子の気体として存在します。
見てみよう:姿・色・三態の変化
気体・液体とも無色です。空気から分離して得られ、溶接や金属の保存では反応を抑える雰囲気をつくります。放電管で見える紫系の光は、電気で励起した原子が出す光です。普段のアルゴンガスが紫色に見えるわけではありません。
| 項目 | 状態・温度 |
|---|---|
| 20℃・約1気圧 | 気体 |
| 融点の目安 | 約−189.3℃ |
| 沸点の目安 | 約−185.8℃ |
| 三態の見取り図 | 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安) |
温度は純物質の代表値を読みやすく丸めています。約1気圧を基本とし、同素体・純度・圧力で値は変わります。融解や沸騰の境界では二つの相が共存します。
同素体と原子の並び方
通常は単原子の気体です。低温では原子が集まって液体や固体になります。炭素のように共有結合のつなぎ方を変えた身近な同素体はありません。弱い引力でも、熱運動が小さくなれば原子を集められます。
同位体の分布:原子核の違いを読む
⁴⁰Arの一部は放射性⁴⁰Kの崩壊から生まれます。岩石中のカリウムとアルゴンを調べる年代測定は、この親子関係を利用します。空気と地下の試料では同位体比が異なるため、下表の広い範囲を大気の組成と読み替えないでください。
同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。
| 同位体 | 代表的な割合・範囲(原子数%) |
|---|---|
| 36Ar | 0–2.07% |
| 38Ar | 0–4.3% |
| 40Ar | 93.6–100% |
割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。
出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024
発見の歴史:窒素の密度が合わない
1894年、レイリーとラムゼーは、空気から得た窒素と化合物から得た窒素の密度の違いを追究し、アルゴンを発見しました。空気由来の試料には、窒素とは別の気体が混ざっていました。小さな測定値のずれを放置しなかったことが、新しい元素の発見につながった例です。
性質:高温の金属を空気から守る
アルゴンは通常の条件で化学反応を起こしにくい気体です。溶接では、溶けた金属の周囲をアルゴンなどで覆い、酸素や窒素との反応を抑えます。仕上がりを決めるのは気体の名前だけでなく、純度、流量、他のガスとの混合比です。材料と接合方法に合わせて保護雰囲気を設計します。
具体例:窓の中のアルゴン
複層ガラスでは、ガラスの間にアルゴンを封入して気体を通じた熱の移動を減らします。透明な気体なので窓の見え方を保ち、断熱性能を高めます。ガラスの間隔、低放射膜、枠の構造、封止の性能と組み合わせて窓全体の性能が決まります。
具体的な用途と製品
| 製品・用途 | 使われる形 | 性質と役割 |
|---|---|---|
| 金属の溶接 | 高純度アルゴンや混合ガス | 高温の金属を酸化などから守る |
| 断熱窓 | ガラス間に封入したアルゴン | 熱の移動を抑える |
| 金属・半導体材料の製造 | 管理されたアルゴン雰囲気 | 製造中の不要な反応を抑える |
主な産地と供給網
アルゴンは空気分離装置で酸素・窒素とともに分離します。生産拠点は製鉄所、化学工場、半導体工場など大量の産業ガスを使う場所と結び付いています。中国、日本、米国、欧州などの工業地域に供給設備があります。資源鉱床を保有する国を探す視点より、空気分離設備と液化・輸送網を持つ地域を見る視点が適しています。
資源貿易と地政学
空気は豊富でも、高純度の液化ガスを必要な場所へ届ける設備は限られます。大型装置の停止、電力供給、貯槽やローリーの確保が供給を左右します。酸素を多量に製造する工場の稼働とアルゴンの回収が結び付くため、製鉄などの動きが別の産業のガス調達にも波及します。
生産拠点の国名は設備立地の例で、世界生産量の順位を示していません。アルゴンは空間の酸素濃度を下げるため、密閉場所では換気と濃度管理が必要です。
出典:Air Liquide:酸素・窒素・アルゴンの供給設備
資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。
