カドミウムは亜鉛製錬から回収され、電池や化合物半導体に使われます。用途の歴史は、有害な物質を製造から回収まで管理する必要性を示しています。
Cd|原子番号48|カドミウム
第5周期・第12族の金属。主にCd²⁺の化合物をつくり、亜鉛鉱石に伴って存在します。
見てみよう:姿・色・三態の変化
青みを帯びた銀白色の柔らかい金属です。比較的低い温度で融け、沸点も多くの金属より低い元素です。赤や黄色の顔料として知られるものはカドミウム化合物で、金属の色とは異なります。
| 項目 | 状態・温度 |
|---|---|
| 20℃・約1気圧 | 固体 |
| 融点の目安 | 約321.1℃ |
| 沸点の目安 | 約767℃ |
| 三態の見取り図 | 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安) |
温度は純物質の代表値を読みやすく丸めています。約1気圧を基本とし、同素体・純度・圧力で値は変わります。融解や沸騰の境界では二つの相が共存します。
同素体と原子の並び方
通常は六方最密構造です。金属と硫化物・セレン化物では、電子の動きや光の吸収が違います。鮮やかな顔料の歴史は、化合物をつくることで色を設計してきた歴史でもあります。
出典:英国王立化学会(RSC):カドミウムの基本物性・発見史
同位体の分布:原子核の違いを読む
¹¹⁴Cdが最も多く、複数の天然同位体があります。¹¹³Cdは中性子を強く吸収する性質をもち、核種の内訳が中性子に対する材料の働きを左右します。
同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。
| 同位体 | 代表的な割合・範囲(原子数%) |
|---|---|
| 106Cd | 1.245% |
| 108Cd | 0.888% |
| 110Cd | 12.47% |
| 111Cd | 12.795% |
| 112Cd | 24.109% |
| 113Cd | 12.227% |
| 114Cd | 28.754% |
| 116Cd | 7.512% |
割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。
出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024
発見の歴史:白いはずの薬品の変色
1817年、フリードリヒ・シュトローマイヤーは亜鉛化合物の変色を調べ、未知の成分を見つけました。酸化物から金属を得て、カドミウムと名付けました。製品の色が想定と違うという観察が、微量の別元素の発見につながりました。
性質:電池と半導体に変わる
ニッケル・カドミウム電池ではカドミウムが負極の反応を担います。テルルと結び付いたCdTeは半導体となり、薄い層で光を吸収します。合金や顔料に使われてきた歴史もあり、現在の用途を理解するには化学形態と管理された製品設計を分けて見る必要があります。
具体例:回収まで設計する太陽電池
First SolarはCdTe系の薄膜太陽電池を製造し、使用済みモジュールの回収・再資源化設備を運営しています。ガラスや半導体材料を分けて回収し、金属の再利用につなげます。高機能材料を社会で使うには、製造時の管理と寿命後の処理を一体で設計します。
具体的な用途と製品
| 製品・用途 | 使われる形 | 性質と役割 |
|---|---|---|
| 産業用の充電池 | ニッケル・カドミウム電池 | 負極の充放電反応を担う |
| 薄膜太陽電池 | テルル化カドミウム | 薄膜で光を吸収する |
| 放射線検出器 | CdTe・CdZnTe結晶 | 放射線を電気信号へ変える |
主な産地と供給網
カドミウムは主に亜鉛製錬の副産物です。中国などの亜鉛製錬拠点が供給に関わり、日本にも半導体結晶へ加工する企業があります。鉱石から金属を回収する工程と、高純度のCdTeやCdZnTeを製造する工程を分けて見ると、原料国と材料供給国の違いが分かります。
資源貿易と地政学
カドミウムは需要が減っても亜鉛鉱石の処理に伴って現れます。回収した物質を適切に保管・利用・処理する体制が必要です。国際的な材料取引では、価格に加え用途ごとの規制、作業者の保護、廃製品の回収能力が供給網の条件になります。
カドミウムとその化合物は有害で、体内に蓄積します。製品の分解や粉じんを伴う加工は行わず、対象製品の回収制度に従います。
出典:First Solar:太陽電池モジュールの回収・再資源化
資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。
