ジスプロシウム(Dy):熱に強い磁石を支える少量の添加

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ジスプロシウムは、ネオジム磁石の高温性能を支える重希土類です。電動機を小さく強くする技術が、この元素の供給と深く結び付いています。

Dy|原子番号66|ジスプロシウム
原子番号66。磁石や中性子を吸収する材料に利用されます。

見てみよう:姿・色・三態の変化

明るい銀色の金属です。ネオジム磁石へ加えて高温での性能を整える用途があります。モーターは働くと熱をもち、磁石も温まります。強い磁力だけでなく、熱の中で性能を維持できるかが実用上の課題になります。

ジスプロシウムの小片。
ジスプロシウムの小片。
画像:Materialscientist at en.wikipedia / Dy chips.jpg(Wikimedia Commons) / CC BY-SA 3.0。Commons掲載版の縮小画像。元画像の加工・合成に関する記載は出典をご覧ください。
項目 状態・温度
20℃・約1気圧 固体
融点の目安 約1412℃
沸点の目安 約2567℃
三態の見取り図 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安)

温度は純物質の代表値を読みやすく丸めています。約1気圧を基本とし、同素体・純度・圧力で値は変わります。融解や沸騰の境界では二つの相が共存します。

同素体と原子の並び方

常温では六方最密構造です。磁石材料ではジスプロシウムを結晶のどこへ配置するかも重要です。全体に大量に混ぜるだけでなく、必要な場所へ届かせる材料設計が資源の節約に関わります。

出典:英国王立化学会(RSC):ジスプロシウムの基本物性・発見史

同位体の分布:原子核の違いを読む

¹⁶⁴Dyや¹⁶²Dyなど複数の天然同位体があります。化学的に似た希土類同士を分離する工程と、同位体の割合を測る工程は、別の情報を扱います。

同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。

同位体 代表的な割合・範囲(原子数%)
156Dy 0.056%
158Dy 0.095%
160Dy 2.329%
161Dy 18.889%
162Dy 25.475%
163Dy 24.896%
164Dy 28.26%

割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。

出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024

発見の歴史:分けにくい元素を探す

1886年、ボアボードランは希土類試料からジスプロシウムを発見しました。名前は「得がたい」という意味に由来します。互いによく似た性質を持つ希土類を分ける難しさが、その名に残っています。

性質:保磁力を高める

永久磁石が磁化を失いにくい度合いを保磁力といいます。ジスプロシウムはNd-Fe-B磁石の保磁力を高め、高温での使用を支えます。磁石全体に大量に加える方法に加え、粒の表面付近を重点的に改質する技術が使われます。

具体例:モーターの熱に対応する

自動車や産業機械のモーターでは、運転中に温度が上がります。設計者は磁石の温度特性と磁気回路を合わせて検討します。信越化学工業の粒界拡散技術は、重希土類を効率よく使って保磁力を高める具体例です。

具体的な用途と製品

製品・用途 使われる形 性質と役割
電動機・発電機 Dyを利用するNd-Fe-B磁石 高温での減磁を抑える
中性子吸収材料 ジスプロシウム化合物 中性子を吸収する性質を利用する
磁歪機器 Tb-Dy-Fe系材料 磁場を機械的な変形へ変える

主な産地と供給網

中国は重希土類の分離・加工で重要な位置を占めます。Lynasの豪州資源を用いたジスプロシウムとテルビウムは、2025年10月から日本への輸入が始まりました。鉱山の所在と分離拠点を結ぶ複数国の工程が供給をつくります。

資源貿易と地政学

採掘量を増やす投資、分離設備を整える投資、少量で性能を出す磁石技術を組み合わせます。必要量の削減は調達リスクを下げ、他国での供給開始は選択肢を増やします。鉱石の確保だけで解決しない資源問題の代表例です。

磁石への添加量は用途と材質によって異なります。すべてのネオジム磁石がジスプロシウムを使うわけではありません。

出典:英国王立化学会(RSC):ジスプロシウムの発見史・性質

出典:双日:重希土類の対日供給(2026年3月)

出典:信越化学工業:重希土類の粒界拡散

資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。

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