インジウム(In):透明な電極が画面を動かす

元素の世界:索引

インジウムは、光を通しながら電気を流す薄膜に使われます。スマートフォンやディスプレイの画面は、透明な材料の中に電気回路の役割を組み込んでいます。

In|原子番号49|インジウム
第5周期・第13族の軟らかい金属。酸化物やリン化物など、化合物の機能が多くの用途を支えます。

見てみよう:姿・色・三態の変化

銀白色で、とても柔らかい金属です。約157℃で融け、他の金属の表面になじませる材料にも使われます。画面の透明電極に使うITOはインジウムとスズを含む酸化物です。光を通す電極は、銀色の金属をそのまま薄く貼ったものとは異なります。

純インジウムのインゴット。
純インジウムのインゴット。
画像:Nerdtalker / Indium.jpg(Wikimedia Commons) / CC BY-SA 3.0。Commons掲載版の縮小画像。元画像の加工・合成に関する記載は出典をご覧ください。
項目 状態・温度
20℃・約1気圧 固体
融点の目安 約156.6℃
沸点の目安 約2027℃
三態の見取り図 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安)

温度は純物質の代表値を読みやすく丸めています。約1気圧を基本とし、同素体・純度・圧力で値は変わります。融解や沸騰の境界では二つの相が共存します。

同素体と原子の並び方

常温では正方晶の結晶をつくります。柔らかさは原子の層の動きに、透明導電膜の働きは酸化物中の電子に関係します。金属の構造と化合物の構造を見比べることで、用途の差を説明できます。

出典:英国王立化学会(RSC):インジウムの基本物性・発見史

同位体の分布:原子核の違いを読む

天然の約96%は長寿命の放射性¹¹⁵Inで、安定な¹¹³Inは少数です。「天然で一番多い同位体は必ず安定」という規則はありません。

同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。

同位体 代表的な割合・範囲(原子数%)
113In 4.281%
115In 95.719%

割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。

出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024

発見の歴史:藍色のスペクトル

1863年、フェルディナント・ライヒとヒエロニムス・リヒターは亜鉛鉱物の分析から新しい元素を見いだしました。分光で観測した特徴的な色が、インジウムの名前につながりました。微量成分を光で識別する技術が、ガリウムやタリウムと同じ時代に新元素の発見を進めました。

性質:透明さと導電性を両立する

酸化インジウムスズはITOと呼ばれ、薄膜にすると可視光を通しながら電気を流します。透明電極には、電気抵抗、光の透過率、膜の均一さが同時に求められます。膜を薄くするだけでは抵抗が増えるため、材料の組成と成膜方法を調整します。

具体例:画面と光通信

液晶ディスプレイでは透明電極が画素を制御します。タッチパネルにもITOが使われます。リン化インジウムInPは光通信用の発光・受光素子などをつくる基板で、JX金属は高品質の結晶を供給しています。画面の酸化物と通信の半導体で役割が分かれます。

具体的な用途と製品

製品・用途 使われる形 性質と役割
ディスプレイ・タッチパネル ITO透明導電膜 光を通しながら電極として働く
光通信部品 リン化インジウム系材料 光を出す・受ける素子をつくる
低融点接合材 インジウムを含む合金 低い温度で接合する

主な産地と供給網

インジウムは亜鉛鉱石に伴って存在し、製錬の副産物として回収します。中国は重要な精製拠点で、日本には高純度材料や化合物半導体の加工企業があります。ITOの成膜材料などの製造では、工程内で発生する材料の回収も供給を支えます。

資源貿易と地政学

画面は薄い膜を使うため、使用済み製品から微量のインジウムだけを集める作業は複雑です。一方、工場内の成膜材料や加工くずは濃度が高く回収しやすい原料です。製造段階の循環と、製品設計による使用量削減を組み合わせることが資源対策になります。

透明電極にはITO以外の材料もあります。画面やタッチパネルのすべてが同じ構成ではありません。

出典:英国王立化学会(RSC):インジウムの発見史・性質

出典:JX金属:InP結晶と光電子用途

出典:USGS:中国のインジウム産業(2024年)

資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。

元素の一覧に戻る