マグネシウム(Mg):軽量合金と耐火材をつくる金属

元素の世界:索引

マグネシウムは、持ち運ぶ機器の軽量化と、鉄を溶かす炉の耐熱性を支えています。金属の軽さと酸化物の熱への強さ。同じ元素が異なる姿で工業材料になります。

Mg|原子番号12|マグネシウム
第3周期・第2族のアルカリ土類金属。金属は銀白色で軽く、化合物では主にMg²⁺になります。

見てみよう:姿・色・三態の変化

銀白色の軽い固体です。薄いリボンを燃やすと強い白色光を出し、白い酸化物ができます。燃焼時の光、元の金属の光沢、反応後の粉末の白さは、それぞれ別の仕組みで生まれます。液体になる温度は約650℃です。

結晶状のマグネシウム。軽い金属でも、表面には金属光沢があります。
結晶状のマグネシウム。軽い金属でも、表面には金属光沢があります。
画像:Mark Fergus, CSIRO / CSIRO ScienceImage 2893 Crystalised magnesium.jpg(Wikimedia Commons) / CC BY 3.0。Commons掲載版の縮小画像。元画像の加工・合成に関する記載は出典をご覧ください。
項目 状態・温度
20℃・約1気圧 固体
融点の目安 約650℃
沸点の目安 約1090℃
三態の見取り図 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安)

温度は純物質の代表値を読みやすく丸めています。約1気圧を基本とし、同素体・純度・圧力で値は変わります。融解や沸騰の境界では二つの相が共存します。

同素体と原子の並び方

室温では六方最密構造を取ります。加工しやすさは原子の層がどの方向へ動けるかに関係します。軽いだけで使いやすい部品になるわけではなく、合金化や加工温度の工夫で性質を整えます。

出典:英国王立化学会(RSC):マグネシウムの基本物性・発見史

同位体の分布:原子核の違いを読む

²⁴Mgが約8割で、²⁵Mgと²⁶Mgも存在します。微量の同位体比の違いは、岩石の形成や生物の働きを研究する目印になります。原子核の違いが、物質の歩んだ道筋を記録します。

同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。

同位体 代表的な割合・範囲(原子数%)
24Mg 78.88–79.05%
25Mg 9.988–10.034%
26Mg 10.96–11.09%

割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。

出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024

発見の歴史:石灰との区別から単離へ

1755年、ジョゼフ・ブラックはマグネシアと石灰の違いを示しました。1808年にはデービーが金属の単離を進め、1831年にはアントワーヌ・ビュシーがまとまった量の金属を得ました。似た白色の鉱物を区別する分析と、酸素を取り除いて金属を得る操作が、別々の段階として積み重なりました。

性質:軽さを合金設計で生かす

マグネシウムの密度はアルミニウムより小さく、軽量化に有利です。製品ではアルミニウム、亜鉛などと合金にし、強さ、鋳造性、耐食性を調整します。ノートパソコンやカメラの筐体では、薄い部品を成形しながら剛性を確保する設計が重要です。表面処理も製品の寿命を左右します。

歴史と自然:閃光から葉緑素まで

マグネシウムが燃えると強い白色光を発する性質は、写真撮影用の閃光材料に利用されました。一方、植物の葉緑素ではマグネシウムが分子の中心に位置します。光を出す金属の反応と、光を受け取る分子の働きは、化学的な存在形態が変わると機能が変わる好例です。

具体的な用途と製品

製品・用途 使われる形 性質と役割
カメラ・パソコンの筐体 マグネシウム合金 軽さと成形性を生かす
製鉄炉の耐火れんが 酸化マグネシウム 高温の炉内を保護する
鉄鋼の精錬 金属マグネシウム 溶鉄中の硫黄を取り除く

主な産地と供給網

原料はドロマイト、マグネサイト、塩水などです。金属マグネシウムの供給では中国が中心を占めます。製造には鉱石を還元する方法と、塩化マグネシウムを電気分解する方法があり、原料とエネルギー条件に応じて選ばれます。海水中にも大量に存在する元素ですが、回収・精製・還元を経て初めて金属になります。

資源貿易と地政学

地球に多く存在することと、安定した価格で金属を入手できることは別の問題です。生産地域への集中と製造時のエネルギー消費が、供給網の弱点をつくります。マグネシウムはアルミニウム合金の添加元素にも使われるため、供給の停滞はアルミ製品にも波及します。スクラップの選別と再溶解は、新しい原料への依存を下げる手段です。

粉末や削りくずは塊状の金属より燃えやすく、専用の防火管理を要します。

出典:英国王立化学会(RSC):マグネシウムの発見史・性質

出典:USGS:世界の鉱物生産能力と供給網(2025年公表)

資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。

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