パラジウムは、排気ガス浄化、化学合成、水素の精製に使われます。金属表面での反応と、金属の内部を水素が移動する性質が用途を広げています。
Pd|原子番号46|パラジウム
第5周期の白金族金属。触媒作用と耐食性を持ち、水素を取り込む性質があります。
見てみよう:姿・色・三態の変化
銀白色の金属で、水素を取り込む性質が特徴です。取り込まれた水素は、金属中の隙間に関わりながら移動します。水素の分離膜や触媒の研究につながり、気体と固体が接する表面で何が起こるかを考える題材になります。

画像:images-of-elements.com / Palladium (46 Pd).jpg(Wikimedia Commons) / CC BY 3.0。Commons掲載版の縮小画像。元画像の加工・合成に関する記載は出典をご覧ください。
| 項目 | 状態・温度 |
|---|---|
| 20℃・約1気圧 | 固体 |
| 融点の目安 | 約1554.8℃ |
| 沸点の目安 | 約2963℃ |
| 三態の見取り図 | 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安) |
温度は純物質の代表値を読みやすく丸めています。約1気圧を基本とし、同素体・純度・圧力で値は変わります。融解や沸騰の境界では二つの相が共存します。
同素体と原子の並び方
通常は面心立方構造です。水素を含む材料では水素濃度に応じた相の違いが現れます。水素という別元素が加わるため、純粋なパラジウムだけの同素体とは区別します。
出典:英国王立化学会(RSC):パラジウムの基本物性・発見史
同位体の分布:原子核の違いを読む
¹⁰⁶Pdや¹⁰⁸Pdなど6種類の天然同位体があります。原子番号はすべて46で共通し、中性子の数が違います。
同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。
| 同位体 | 代表的な割合・範囲(原子数%) |
|---|---|
| 102Pd | 1.02% |
| 104Pd | 11.14% |
| 105Pd | 22.33% |
| 106Pd | 27.33% |
| 108Pd | 26.46% |
| 110Pd | 11.72% |
割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。
出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024
発見の歴史:新しい銀として売られた金属
1803年、ウォラストンは白金原料からパラジウムを分離しました。発見者をすぐには明かさず、新しい金属として販売したため、正体をめぐる議論が起きました。1805年に発見の経緯を公表しました。名称は小惑星パラスに由来し、当時の天文学と化学をつないでいます。
性質:表面で分子を反応させる
パラジウムは水素を使う反応や、有機分子を組み立てる反応の触媒になります。金属の表面や錯体の中で反応物の結び付きを変え、目的の生成物へ導きます。自動車触媒では、他の金属や酸化物と組み合わせて排気成分を処理します。
具体例:水素を選んで通す膜
パラジウム系の膜では、水素が金属中を移動する性質を利用してガスを分離します。十分な純度、膜の強さ、温度条件を設計し、水素精製に使います。一般のフィルターのように単に穴の大きさでふるい分ける仕組みとは異なります。
具体的な用途と製品
| 製品・用途 | 使われる形 | 性質と役割 |
|---|---|---|
| 自動車の排気浄化 | パラジウムを含む触媒 | 一酸化炭素や炭化水素などの反応を助ける |
| 化学品の製造 | パラジウム系触媒 | 水素化や炭素同士を結ぶ反応に使う |
| 水素精製 | パラジウム系金属膜 | 水素を選択的に透過させる |
主な産地と供給網
ロシアと南アフリカが主要な生産拠点です。ニッケル・銅や白金族の鉱石を処理する過程で回収し、精製します。自動車触媒のリサイクルも重要な供給源で、採掘と回収の両方が市場を支えています。
資源貿易と地政学
産地の集中と自動車需要への依存が、供給と価格の変動を生みます。原料を別地域から調達する場合も、触媒の配合や品質認定を直ちに変えられるとは限りません。白金との用途上の代替、使用量の削減、回収網の整備を組み合わせて供給リスクを下げます。
触媒材料の代替には性能と耐久性の確認が必要です。パラジウムと白金を同じ重量でそのまま交換できるという意味ではありません。
資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。
