セレンは、光と電気の関係を利用する技術の発展に関わってきました。現代ではガラスや半導体材料にも使われ、銅を精製する工程から回収されます。
Se|原子番号34|セレン
第4周期・第16族の元素。硫黄に似た化学的性質を持ち、形態によって電気的・光学的性質が変わります。
見てみよう:姿・色・三態の変化
灰色の結晶、赤色の粉末、黒いガラス状の固体など、多彩な姿を取ります。光が当たると電気の通しやすさが変わる性質が、光電池や複写機の歴史に結び付きました。見た目の色と、光への応答の両方が面白い元素です。

画像:W. Oelen / SeBlackRed.jpg(Wikimedia Commons) / CC BY-SA 3.0。Commons掲載版の縮小画像。元画像の加工・合成に関する記載は出典をご覧ください。
| 項目 | 状態・温度 |
|---|---|
| 20℃・約1気圧 | 固体 |
| 融点の目安 | 約220.8℃ |
| 沸点の目安 | 約685℃ |
| 三態の見取り図 | 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安) |
温度は純物質の代表値を読みやすく丸めています。約1気圧を基本とし、同素体・純度・圧力で値は変わります。融解や沸騰の境界では二つの相が共存します。
同素体と原子の並び方
灰色セレンはらせん状の鎖を含む結晶です。赤色の結晶にはSe₈の輪があり、非晶質の赤色・黒色の形もあります。硫黄と同じ族でも、原子が大きくなると結合や電気的な性質が変わります。
同位体の分布:原子核の違いを読む
⁸⁰Seが最も多く、⁷⁸Seなど複数の同位体があります。⁸²Seは長寿命の放射性核種です。天然に普通に含まれる同位体の中にも、非常にゆっくり崩壊するものがあります。
同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。
| 同位体 | 代表的な割合・範囲(原子数%) |
|---|---|
| 74Se | 0.86% |
| 76Se | 9.23% |
| 77Se | 7.6% |
| 78Se | 23.69% |
| 80Se | 49.8% |
| 82Se | 8.82% |
割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。
出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024
発見の歴史:工場の沈殿から月の名へ
1817年、ベルセリウスは硫酸工場の残留物を調べ、セレンを発見しました。似た元素テルルの名が地球に由来することに対応し、月を意味する名が付けられました。工場で生じる少量の沈殿を分析したことが、新しい元素につながった例です。
性質:光で電気の流れ方が変わる
セレンは光によって電気伝導が変わる光伝導性を示します。この性質は光センサーや初期の複写技術に利用されました。光を受けた部分の電気的状態を変え、像をつくる発想は、光学と電子工学を結び付けました。材料の選択は、その後の技術進歩とともに変化しています。
具体例:ガラスと薄膜太陽電池
ガラスではセレン化合物を着色や色調の調整に使います。銅・インジウム・ガリウム・セレンを含むCIGS系材料は、薄膜太陽電池の光吸収層になります。金属の塊を使う用途と異なり、薄い化合物層の組成を調整して機能を生みます。
具体的な用途と製品
| 製品・用途 | 使われる形 | 性質と役割 |
|---|---|---|
| ガラス | セレン成分を含む材料 | 色調を調整する |
| 薄膜太陽電池 | CIGS系半導体 | 光を吸収して電気に変える |
| 光センサー・複写技術の歴史 | セレン系光伝導材料 | 光による電気的変化を利用する |
主な産地と供給網
セレンは銅の電解精製で生じる陽極泥などから回収します。中国は大きな生産拠点で、日本にもJX金属などの供給企業があります。銅を採掘する場所と、陽極泥を処理して高純度のセレンを取り出す場所は一致するとは限りません。
資源貿易と地政学
セレンの供給は、銅の生産量、原料中の含有量、回収設備に左右されます。セレンだけの需要が増えても、すぐに増産できる構造ではありません。薄膜材料などの用途では、使用量の節約に加えて加工くずの回収が重要です。主金属と副産物を一緒に見ることで、資源利用の効率を理解できます。
光センサーや複写機の説明には歴史上の用途を含みます。すべての現行製品がセレンを使うわけではありません。
資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。
