ケイ素(Si):石英・ガラス・半導体を結びつける元素

元素の世界:索引 / 化学Top

ケイ素は半導体、ガラス、シリコーン材料をつなぐ元素です。単体、酸化物、高分子という形の違いが、電子機器から建材まで用途を広げます。

Si|原子番号14|ケイ素
第3周期・第14族。元素記号Si。英語名silicon。常温での単体は固体で、原子の電子配置は[Ne]3s23p2です。

見てみよう:姿・色・三態の変化

灰色から青灰色の金属光沢をもつ、もろい固体です。砂の主成分である二酸化ケイ素SiO₂とは外見も性質も違います。純度を高め、微量の別元素を加えると、電流の流れ方を設計できる半導体になります。

精製したケイ素の固体。半導体も金属のような光沢を示します。
精製したケイ素の固体。半導体も金属のような光沢を示します。
画像:Rasiel Suarez on behalf of Luciteria LLC / A piece of zone refined silicon.JPG(Wikimedia Commons) / CC BY-SA 4.0。Commons掲載版の縮小画像。元画像の加工・合成に関する記載は出典をご覧ください。
項目 状態・温度
20℃・約1気圧 固体
融点の目安 約1414℃
沸点の目安 約3265℃
三態の見取り図 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安)

温度は純物質の代表値を読みやすく丸めています。約1気圧を基本とし、同素体・純度・圧力で値は変わります。融解や沸騰の境界では二つの相が共存します。

同素体と原子の並び方

結晶ケイ素では原子がダイヤモンド型の立体網目をつくります。アモルファスケイ素では長距離にわたる規則性がありません。原子の種類が同じでも、並び方によって電子の動きや光の吸収が変わり、太陽電池などの設計に関わります。

出典:英国王立化学会(RSC):ケイ素の基本物性・発見史

同位体の分布:原子核の違いを読む

²⁸Siが約92%で、²⁹Siと³⁰Siが続きます。²⁸Siに富む高純度結晶は、原子を精密に数える研究や量子情報の研究で使われます。材料の純度には、別元素の混入量だけでなく同位体の内訳も含まれます。

同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。

同位体 代表的な割合・範囲(原子数%)
28Si 92.191–92.318%
29Si 4.645–4.699%
30Si 3.037–3.11%

割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。

出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024

発見の歴史:石やガラスを使うことと、単体を得ること

人類は古くからケイ素を含む石を道具に使い、砂を原料にガラスをつくってきました。19世紀には、化合物からケイ素の単体を取り出す研究が進みます。

1811年にはゲイ=リュサックとテナールが不純なケイ素を得る実験を行い、1824年にはベルセリウスが比較的純粋なケイ素の粉末を得ました。ケイ素の発見者としてベルセリウスが挙げられるのはこの仕事によります。昔から身近だった化合物の中に、新たな単体が認識された例です。

出典:英国王立化学会(RSC):Silicon ― 発見史と性質

シリコン・シリカ・シリコーンを整理する

名前 何を指すか 代表例
シリコン 元素ケイ素。材料の文脈では単体のケイ素を指すことが多いです。 半導体用ウエハー
シリカ 二酸化ケイ素SiO2 石英、ガラスの主な成分
シリコーン Si–Oを骨格にもち、有機基などが結びついた高分子材料の総称 シーリング材、ゴム、オイル

市販の調理用型などが「シリコン製」と呼ばれることがありますが、材料としてはシリコーンゴムを指している場合があります。半導体用のケイ素の結晶と、柔らかいシリコーンゴムを同じ物質だと思うと、硬さや電気的な性質を説明できなくなります。

出典:信越化学工業:製品事典 ― シリコーンとシリコンの違い

半導体として働く理由

ケイ素の結晶では、原子が周囲の原子と共有結合して規則的な構造をつくります。金属のように自由に動く電子が多い状態とは異なり、電子を電流に関われる状態へ移すにはエネルギーが必要です。そのため、電気の流れ方が温度、光、添加する元素などによって変化します。

たとえば、リンなどを少量加えると、電流を担う電子を増やす方向に働きます。ホウ素などを加えると、電子の抜けた状態である正孔を電流の担い手として使えます。このように添加元素の種類と量を制御する操作をドーピングと呼びます。

半導体製造では、原料を高純度化した上で、狙った位置と量の添加元素を導入します。意図的な添加をドーピングと呼びます。精製とドーピングを使い分け、電流の流れ方を設計します。

出典:東芝デバイス&ストレージ:半導体の原料と添加元素

原料からウエハーまで

地殻中のケイ素は、主に二酸化ケイ素やケイ酸塩として存在します。酸化物の還元で得たケイ素をさらに精製し、結晶を成長させます。結晶を切断・研磨して、円板状のウエハーへ仕上げます。

ウエハーの上に薄膜、微細な素子、配線を形成して集積回路をつくります。原料精製、結晶成長、表面加工、素子製造が、石から半導体へ至る工程です。

出典:信越半導体 白河工場:製品・ウエハーの製造工程

主な用途と現代の製品

製品・用途 使われる形 性質と役割
スマートフォン・パソコンの半導体 高純度のケイ素結晶を加工した素子 添加元素や微細構造で電流を制御します。
結晶シリコン太陽電池 ケイ素を主な光吸収材料とする素子 光で生じた電子と正孔を利用して電気を取り出します。
窓ガラス・容器用ガラス SiO2などを含む酸化物材料 ケイ素と酸素の網目を基本に、他の成分で加工性や性質を調整します。
シーリング材・耐熱ゴム シリコーン系高分子 分子構造と架橋の仕方によって、柔らかさや耐熱性などを設計します。

信越化学工業が供給するシリコンウエハーは、スマートフォン、パソコン、自動車などに使われる半導体の基盤となる製品です。電子機器の画面からは見えにくい部材ですが、結晶の品質や表面の平坦さが、その後の加工に影響します。

出典:信越化学工業:シリコンウエハー

石器と半導体は、何がつながっているのか

石を割って道具にする段階では、材料の形や割れ方を利用していました。ガラスでは組成と加熱・冷却の条件を扱い、半導体では純度、結晶、電子の動きまで制御します。ケイ素の利用史は、単に用途が増えたというより、材料を制御する細かさが変わってきた歴史として読むことができます。

同じ元素が含まれるという共通点を保ちながら、単体・酸化物・高分子の違いも見落とさないことが、ケイ素を理解する第一歩です。

歴史・物性・製品の説明は、本文中に示した学会・公的機関・メーカーの資料を参照しています。資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。

主な産地と供給網

金属ケイ素の製造拠点には中国やノルウェーがあります。USGSの2024年資料では、ノルウェーは主要な金属ケイ素生産国です。中国ではElkemの永登工場が化学品向け金属ケイ素を製造しています。半導体用の高純度化とウエハー加工は、この先に続く別の工程です。

資源貿易と地政学

石英資源の確保、電力を使う還元、高純度化、単結晶の育成にはそれぞれ設備と技術が要ります。半導体用ウエハーでは信越化学などが精密な加工を担います。原料の量と、必要な純度・欠陥密度・寸法を満たす製品の供給力を分けると、半導体の供給網を正確に捉えられます。

金属ケイ素、フェロシリコン、半導体用ケイ素は統計・製品区分が異なります。

出典:USGS:ノルウェーの鉱業(2024年)

出典:Elkem:永登の金属ケイ素製造拠点

元素の一覧に戻る / 化学Topページに戻る