ストロンチウムは赤い炎色、フェライト磁石、蓄光材料に使われます。原子の発光と、結晶の中にエネルギーを蓄える仕組みを分けると、光る製品の違いが分かります。
Sr|原子番号38|ストロンチウム
第5周期・第2族のアルカリ土類金属。化合物では主にSr²⁺となり、カルシウムと似た性質を示します。
見てみよう:姿・色・三態の変化
銀白色の柔らかい金属で、空気中では表面が変化します。花火の鮮やかな赤は、ストロンチウムを含む化合物を高温にしたときの発光です。金属片自体が赤いのではありません。試料の色と炎の色を比べると、光の生まれ方の違いが分かります。
| 項目 | 状態・温度 |
|---|---|
| 20℃・約1気圧 | 固体 |
| 融点の目安 | 約777℃ |
| 沸点の目安 | 約1377℃ |
| 三態の見取り図 | 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安) |
温度は純物質の代表値を読みやすく丸めています。約1気圧を基本とし、同素体・純度・圧力で値は変わります。融解や沸騰の境界では二つの相が共存します。
同素体と原子の並び方
常温では面心立方構造で、加熱すると他の結晶構造を取ります。金属単体と、花火やセラミックスに使う塩・酸化物とは結合が違います。
出典:英国王立化学会(RSC):ストロンチウムの基本物性・発見史
同位体の分布:原子核の違いを読む
⁸⁸Srが最も多く、⁸⁷Srは⁸⁷Rbの崩壊によっても増えます。岩石・水・歯のストロンチウム同位体比を比較すると、物質や生物が関わった土地の情報を探れます。人工放射性⁹⁰Srとは別の話です。
同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。
| 同位体 | 代表的な割合・範囲(原子数%) |
|---|---|
| 84Sr | 0.56% |
| 86Sr | 9.86% |
| 87Sr | 7% |
| 88Sr | 82.58% |
割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。
出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024
発見の歴史:スコットランドの鉱物
18世紀末、スコットランドのストロンチアンで得られた鉱物が分析され、既知の石灰などとは異なる成分が認識されました。クロフォードやホープらの研究を経て、1808年にデービーが金属を単離しました。地名が元素名として残り、鉱山の歴史と周期表を結んでいます。
性質:二つの光り方
ストロンチウム塩の赤い炎色は、励起された粒子が光を出す現象です。アルミン酸ストロンチウム系の蓄光材料は、添加元素や結晶中の欠陥を利用し、受け取った光のエネルギーを時間をかけて放出します。燃焼による発光と、照らした後の残光は異なる仕組みです。
具体例:磁石と蓄光表示
ストロンチウムを含むフェライトは、モーターやスピーカーなどの磁石材料になります。蓄光材料は暗所で見える表示や雑貨に使われます。磁石では結晶構造と磁気的性質、蓄光では光を受け取って放つ過程を設計します。
具体的な用途と製品
| 製品・用途 | 使われる形 | 性質と役割 |
|---|---|---|
| フェライト磁石 | ストロンチウムフェライト | 磁気的な性質を利用する |
| 蓄光表示・塗料 | 添加元素を含むアルミン酸ストロンチウム | 光を受けた後に残光を出す |
| 赤色の信号・花火 | ストロンチウム塩 | 赤い発光を生む |
主な産地と供給網
主な鉱石は硫酸ストロンチウムを含む天青石です。スペイン、中国、メキシコなどが供給に関わり、スペインは2024年の大きな生産国です。採掘した鉱物を炭酸ストロンチウムなどへ加工し、磁石やセラミックスの原料にします。鉱石と高純度化合物では取引する製品段階が異なります。
資源貿易と地政学
用途が変化すると必要な品質と加工設備も変わります。ブラウン管向けのガラスから磁石や機能性セラミックスへと需要の重心が移ったことは、資源需要が製品技術に左右される例です。鉱山の分散に加え、材料メーカーが求める純度と粒度を満たす加工能力が供給を支えます。
工業材料に使う通常のストロンチウムと、核分裂で生じる放射性同位体ストロンチウム90は区別します。
出典:英国王立化学会(RSC):ストロンチウムの発見史・性質
資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。
