トリウムは、希土類の鉱石にも含まれる放射性元素です。照明や光学ガラスの歴史を持ち、原子力分野では燃料資源として研究されています。
Th|原子番号90|トリウム
原子番号90のアクチノイド。天然では長寿命のトリウム232が主体です。
見てみよう:姿・色・三態の変化
銀白色で密度の高い放射性金属です。空気中では酸化します。かつてランプのマントルに使われたのは酸化トリウムを含む材料で、炎で熱せられた固体が明るく光る仕組みです。金属が燃料として燃えていたわけではありません。
| 項目 | 状態・温度 |
|---|---|
| 20℃・約1気圧 | 固体 |
| 融点の目安 | 約1750℃ |
| 沸点の目安 | 約4785℃ |
| 三態の見取り図 | 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安) |
微量の放射性試料については、物性表に評価値・推定値が含まれます。温度はRSCの代表値で、確定した大量試料の精密測定値と同じ意味ではありません。
同素体と原子の並び方
通常の金属は面心立方構造で、高温では結晶構造が変わります。酸化トリウムの高い耐熱性は、酸素と結び付いた結晶の性質です。
同位体の分布:原子核の違いを読む
天然では長寿命の²³²Thがほとんどを占めます。²³⁰Thも天然試料に含まれ、ウラン系列と関係する年代測定に使われます。表の組成はすべての鉱物で一定ではありません。
同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。
| 同位体 | 代表的な割合・範囲(原子数%) |
|---|---|
| 230Th | 0.02% |
| 232Th | 99.98% |
割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。
出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024
発見の歴史:雷神トールの名
19世紀前半、ベルセリウスはノルウェー産鉱物から新元素を見いだし、北欧神話のトールにちなんで命名しました。後に放射性であることが分かります。長い寿命の同位体が残るため、現在の地球にも資源として存在します。
歴史的な製品:明るいマントルとレンズ
酸化トリウムはかつてガス灯のマントルや高屈折率ガラスに使われました。炎の中で強く光る材料や、光を大きく曲げる材料として性能を発揮しました。放射性物質の管理と代替材料の開発が、製品の変化につながります。
エネルギー研究:親物質としての役割
トリウム232は、そのまま通常の核分裂性燃料として使うのではなく、原子炉内の反応でウラン233へつなぐ親物質として扱います。燃料の製造、炉の設計、使用後の管理まで含めたシステムの研究です。資源があることと発電設備が完成していることは別の段階です。
具体的な用途と製品
| 製品・用途 | 使われる形 | 性質と役割 |
|---|---|---|
| 原子力研究 | トリウム系燃料 | 核燃料サイクルを研究する |
| 照明の歴史 | 酸化トリウムを含むマントル | 高温での発光を利用した |
| 光学材料の歴史 | トリウムを含むガラス | 屈折率を高めた |
主な産地と供給網
モナザイトなどに含まれ、インド、ブラジル、オーストラリアなどに資源があります。資源量と実際の生産量を区別します。希土類の採掘・精製では、共存するトリウムの分離と保管が事業の一部になります。
資源貿易と地政学
核燃料研究では供給能力に加えて、保障措置、放射性廃棄物、施設の費用が必要です。希土類資源の開発でも放射性成分の適切な管理が採算と許認可に影響します。単純に豊富な資源を見つければ利用できるという問題ではありません。
トリウム炉の実証・開発状況と商業運転は区別します。過去の資源評価は現在の採掘可能量を直接示しません。
出典:IAEA:Thorium fuel cycle—Potential benefits and challenges
資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。
