ツリウムは、近赤外線の中でも約2μmの光をつくるレーザー材料です。元素ごとの電子状態の違いが、使える光の波長を広げます。
Tm|原子番号69|ツリウム
原子番号69の重希土類元素。天然ではツリウム169が安定同位体です。
見てみよう:姿・色・三態の変化
銀白色の金属です。ツリウムを含む結晶はレーザー材料になり、元素固有の電子のエネルギー差を使って赤外線を生みます。希土類のページを並べると、よく似た金属が別々の波長の光を担当していることが分かります。
| 項目 | 状態・温度 |
|---|---|
| 20℃・約1気圧 | 固体 |
| 融点の目安 | 約1545℃ |
| 沸点の目安 | 約1950℃ |
| 三態の見取り図 | 融点より低温で固体、融点と沸点の間で液体、沸点より高温で気体(約1気圧・平衡状態の目安) |
温度は純物質の代表値を読みやすく丸めています。約1気圧を基本とし、同素体・純度・圧力で値は変わります。融解や沸騰の境界では二つの相が共存します。
同素体と原子の並び方
通常は六方最密構造です。液体や気体へ変えるには加熱が必要です。融点と沸点の間隔が元素ごとに違うことも、原子どうしの結び付きの違いを反映しています。
同位体の分布:原子核の違いを読む
天然の安定同位体は¹⁶⁹Tmです。中性子を取り込ませて得る放射性¹⁷⁰Tmは放射線源として利用されてきました。
同位体は、陽子の数が同じで、中性子の数が異なる原子です。次はCIAAWの2024年版にある代表組成、または試料間で認められる範囲です。割合は質量ではなく原子の個数で表します。
| 同位体 | 代表的な割合・範囲(原子数%) |
|---|---|
| 169Tm | 100% |
割合は近似値です。測定の不確かさは表では省略し、原資料に示されています。範囲の上下端は異なる試料の値で、上下端どうしを足して100%にするものではありません。100%の表記でも、特殊な環境や人工試料まで他核種が存在しないという意味ではありません。
出典:CIAAW:Isotopic Compositions of the Elements 2024
発見の歴史:北の地を指す名前
1879年、クレーベはエルビウムの試料を詳しく分離し、ツリウムを見いだしました。名前は北方の地を指す古名Thuleに由来します。少量しか含まれない成分をスペクトルで追う研究が、新しい元素の発見につながりました。
性質:結晶やガラスの中で光る
ツリウムイオンに光でエネルギーを与えると、電子状態の変化を通じて赤外線を放出します。ファイバーの芯に加えれば、光を閉じ込める構造と発光材料を一体化できます。少量の元素を精密に配置することが光源の設計になります。
具体例:製品化された2μm帯ファイバー
Coherentは約2μmで動作するツリウム添加ファイバーを製品化しています。Exailも同じ波長域のレーザー用ファイバーを提供しています。分光や計測では、対象物の吸収する波長に合わせた光源を選びます。
具体的な用途と製品
| 製品・用途 | 使われる形 | 性質と役割 |
|---|---|---|
| 赤外線レーザー・増幅器 | ツリウム添加ファイバー | 約2μm帯の光を発生・増幅する |
| 分光・光学研究 | ツリウム系レーザー光源 | 物質と赤外線の相互作用を測る |
| 放射線源の開発史 | ツリウム170 | 放射性同位体をX線源などに利用する |
主な産地と供給網
希土類原料中の少量成分として回収し、中国などの分離拠点で高純度化します。工業的な大量消費より、光学材料に使う少量・高純度の需要が中心です。鉱石の成分を分ける工程と品質保証が供給を決めます。
資源貿易と地政学
原料価格だけでなく、必要な純度と添加濃度を安定して再現できることが重要です。元素の精製とガラス加工を別々に評価し、最終的なレーザー性能まで確認する供給網になります。希少な少量成分を高付加価値の装置へ変える例です。
ツリウム170の放射線源は特殊用途・開発史の例です。天然の安定同位体ツリウム169とは区別します。
資料確認:2026年10月。資源統計の対象年は各出典に記載しています。
