整数第2章第2節 3.文字式の変形

2.3 文字式の変形

文字式の変形には基本的に「展開」(expansion)と「因数分解」(factorization)しかありません(二乗したりルートを取ったりすることもありますが…)。

→(展開)→

 

$(A+B)(C+D)$ ⇄ $AC+BC+AD+BD$

 

←(因数分解)←

この基本的な式変形さえ覚えておけば実用上問題ありません。重要なのは目的意識を持って変形することです。何を意図して式変形しているのか、またどのような形になるのが理想なのかを常に考えておくことが式変形の極意です。

 

展開の心得

 

同じ形があれば一端まとめて後回し。

無ければ順番に。

 

(例)

$$\small \begin{align} & \quad (x^2+2x+1)(x^2-x+1) \\ &= ((x^2+1)+2x)((x^2+1)-x) \\ &=(x^2+1)^2+(2x-x)(x^2+1)-2x \cdot x \\ &= (x^4+2x^2+1)+(x^3+x)-2x^2 \\ &=x^4+x^3+x+1 \end{align}$$

例の計算での同じ形は $x^2+1$ です。これを一時的にカタマリとして扱い、展開しやすくしています。これは数Ⅰの教科書にも載っているテクニックですね。

 

因数分解の心得

 

同じ形があればまとめる。

無ければ作る!カタマリを常に意識。

 

(例)

$$\small \begin{align} x^4-x^3-x+1 &= x^3 (x-1)-(x-1) \\ &=(x^3-1)(x-1) \\ &= (x-1)^2 (x^2+x+1) \end{align}$$または、$$\small \begin{align} x^4-x^3-x+1 &= x (x^3-1)-(x^3-1) \\ &=(x-1)(x^3-1) \\ &= (x-1)^2 (x^2+x+1) \end{align}$$と変形します。

例えばここで$x^4$と$1$、$x^3$と$x$でまとめても$(x^4+1)-(x^2+1)x$となってこれ以上変形できなくなってしまいます。因数分解においては「同じもの」を作る意識が大切です。


このように式変形とは漫然と式をいじるのではなく、カタマリに注目しながらゴールを目指して行うものなのです。以上が式変形の基礎となります。

整数問題に立ち向かうときは展開よりも因数分解の方が圧倒的に重要です。因数分解の基本は同じもので「括る」という操作です。整式が絡んでくる整数問題の場合、同じ因数で括るという操作が突破口になることが少なくありません。

また、次数に着目することも式変形のヒントになることがあり、不等式で解の候補を絞り込むときのポイントとなることがあるので、多項式を変形する際はその特徴をよく捉えておくことが重要です。

 


次は文字式の色々な式変形の方法を復習します。

 

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