線形代数3.3.3

前へ戻る トップへ戻る 次の問題へ

 

 問題3.3.3

定理3.3.3を証明せよ。

 

 ポイント

定理3.3.3とは以下のようなものでした。

(1)1つの列を$c$倍すると、行列式は$c$倍になる。
(2)1つの列が$2$つの列ベクトルの和である行列の行列式は、他の列は同じでその列に各々の列ベクトルをとった行列の行列式の和となる。
(3)2つの列を入れ替えると行列式は$-1$倍になる。
(4)2つの列が等しい行列の行列式は$0$である。
(5)1つの列に他の列の何倍かを加えても行列式は変わらない。

(1)は定数倍、(2)は線形性、(3)は交代性の証明です。

ある行や列を定数倍すれば行列式も定数倍されます。これは以下の変形から説明できます。$$\begin{align}|A^{\prime}|&=\sum_{\sigma \in S_n}{\rm sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)} \cdots \underline{c a_{i\sigma(i)}} \cdots a_{n\sigma(n)} \\
&=c \sum_{\sigma \in S_n}{\rm sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)} \cdots \underline{a_{i\sigma(i)}} \cdots a_{n\sigma(n)} \\
&=c |A| \end{align}$$

(2)は列と行の両方について言えて、$$\begin{align}|A|&=\sum_{\sigma \in S_n}{\rm sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)} \cdots \underline{(b_{i\sigma(i)}+c_{i\sigma(i)})} \cdots a_{n\sigma(n)} \\
&=\sum_{\sigma \in S_n}{\rm sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)} \cdots \underline{b_{i\sigma(i)}} \cdots a_{n\sigma(n)} \\
&\quad +\sum_{\sigma \in S_n}{\rm sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)} \cdots \underline{c_{i\sigma(i)}} \cdots a_{n\sigma(n)} \\
&=|B|+|C| \end{align}$$とすることで行列式を分解することができます。

「2つの列を入れ替える」という操作は互換$(i \ j)$を適用した場合に相当します。置換の積を$$\tau = \sigma(i \ j)$$と置くと、添字は$$\tau(i)=\sigma(j), \tau(j)=\sigma(i)$$ $$\tau(k)=\sigma(k)(k \neq i, j)$$のように移ります。これより以下のように符号が反転するため、(3)の交代性が説明されます。$$\operatorname{sgn}(\tau)=\operatorname{sgn}(\sigma(i \ j))=(-1) \operatorname{sgn}(\sigma)$$

(4)は(3)から説明でき、(5)は(2)と(4)から説明できます。

 

 解答例

(省略)

※(3)については教科書の略解も参照のこと。


前へ戻る トップへ戻る 次の問題へ