有理関数の不定積分――部分分数分解と重複因子を整理する

分母の因子から分解の形を決め、対数・逆正接へ帰着させます。

レベル:標準〜大学初年級

前提知識:多項式の割り算・因数分解・基本積分

学習の入口:数列・漸化式の型別・レベル別ガイド

1.割り算→因数分解→分解の型

有理関数 $P(x)/Q(x)$ は、分子の次数が分母以上なら先に割り算します。残った真分数の分母を実数係数の一次因子と既約二次因子に分け、各因子の重複度まで含めて部分分数の候補を置きます。

分母の因子用意する項
$(x-a)^m$$A_1/(x-a)+\cdots+A_m/(x-a)^m$
$(x^2+px+q)^m$(実数の根なし)各 $j=1,\ldots,m$ に $(B_jx+C_j)/(x^2+px+q)^j$

二次因子の上を定数だけにすると、必要な成分を表せないことがあります。重複因子も最高のべきだけでは足りません。係数は分母を払って恒等式にし、代入や係数比較で決めます。

2.3つの代表例

例題1:最初に多項式の割り算

$$\frac{x^3+1}{x^2+1}=x+\frac{1-x}{x^2+1}.$$ よって $$\int\frac{x^3+1}{x^2+1}\,dx =\frac{x^2}{2}+\arctan x-\frac12\log(x^2+1)+C.$$ 分母の微分 $2x$ に比例する項と、定数の項を分けています。$x^2+1>0$ なのでこの対数には絶対値を付けなくても構いません。

例題2:重複した一次因子

$$\frac1{x(x+1)^2}=\frac1x-\frac1{x+1}-\frac1{(x+1)^2}.$$ 従って $$\int\frac{dx}{x(x+1)^2} =\log|x|-\log|x+1|+\frac1{x+1}+C.$$ $x=0,-1$ を含まない各区間で成立します。$(x+1)^{-2}$ の積分は対数ではなく $-(x+1)^{-1}$ です。

例題3:平方完成と分子の調整

$x^2+2x+5=(x+1)^2+4$、$2x+3=2(x+1)+1$ なので、$$\int\frac{2x+3}{x^2+2x+5}\,dx =\log(x^2+2x+5)+\frac12\arctan\frac{x+1}{2}+C.$$ 逆正接の係数 $1/2$ を落とさないよう、微分して確認します。

3.二次因子が重なるとき

$J_m=\int dx/(x^2+a^2)^m,\ a>0$ と置くと、$m\ge2$ では $$J_m=\frac{x}{2a^2(m-1)(x^2+a^2)^{m-1}} +\frac{2m-3}{2a^2(m-1)}J_{m-1}.$$ $x/(x^2+a^2)^{m-1}$ を微分して整理すると導けます。出発点は $J_1=\arctan(x/a)/a$。例えば $$\int\frac{dx}{(x^2+1)^2}=\frac{x}{2(x^2+1)}+\frac12\arctan x+C.$$ 平方完成後に平行移動すれば、一般の既約二次因子にも使えます。

4.積分定数と区間の条件

原始関数は、被積分関数が定義される連結な区間ごとに考えます。極を挟んだ別々の区間では積分定数が異なって構いません。定積分に使う場合も、区間内に極がないか先に確認します。原始関数の両端の差を形式的に計算して、発散する広義積分を有限値にしてはいけません。

作問者の視点――条件と解法の関係

確認演習と解答

まず方針と必要な条件を言葉にしてから計算してください。解答は開いて確認できます。

演習1 $\int (x^2+2)/(x+1)\,dx$。

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$x^2+2=(x+1)(x-1)+3$ より、$x^2/2-x+3\log|x+1|+C$。$x\ne-1$ の各区間。

演習2 $\int dx/(x^2-4)$。

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$1/(x^2-4)=\frac14\{1/(x-2)-1/(x+2)\}$。答えは $\frac14\log|(x-2)/(x+2)|+C$。$x=\pm2$ を除く各区間。

演習3 $\int x\,dx/(x^2+1)^2$。

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$u=x^2+1,\ du=2x\,dx$ より $-1/\{2(x^2+1)\}+C$。分子が分母の微分に対応するなら、先に置換を使えます。

参考資料

定理・基本的な方法の確認に使える公開教材です。本ページの例題・演習・作問上のコメントは、解説用に独自に構成しています。