三角関数の不定積分――偶奇・倍角・半角置換で選ぶ

べきの偶奇から置換を選び、半角置換の有効な区間まで確認します。

レベル:標準〜発展

前提知識:三角関数の恒等式・置換積分

学習の入口:数列・漸化式の型別・レベル別ガイド

1.sinとcosのべきは偶奇を見る

$\int\sin^m x\cos^n x\,dx$ で $m,n$ が非負整数なら、どちらかの指数が奇数のとき、その関数を1個残します。$\sin x\,dx=-d(\cos x)$、$\cos x\,dx=d(\sin x)$ に対応させ、残りの偶数べきを $\sin^2x+\cos^2x=1$ で置き換えます。両方偶数なら半角・倍角公式で次数を下げます。

例題1:奇数のsinを1個残す

$$\int\sin^3x\cos^2x\,dx =\int(1-\cos^2x)\cos^2x\sin x\,dx.$$ $u=\cos x$ として、$$-\int(1-u^2)u^2du=-\frac{\cos^3x}{3}+\frac{\cos^5x}{5}+C.$$ $du$ の負号も含めて置換します。

例題2:両方が偶数

$\sin^2x\cos^2x=\frac14\sin^22x=\frac18(1-\cos4x)$ より、$$\int\sin^2x\cos^2x\,dx=\frac x8-\frac{\sin4x}{32}+C.$$ 4倍角を微分すると4倍になるため、最後の分母は8ではなく32です。

2.tanとsecのべき

$\sec x=1/\cos x$ と書きます。$\sec^2x\,dx=d(\tan x)$ を残せるときは $u=\tan x$、$\sec x\tan x\,dx=d(\sec x)$ を残せるときは $u=\sec x$ を候補にします。$\sec^2x=1+\tan^2x$ を使って残りを変形します。

例題3:secの偶数べき

$$\int\tan^2x\sec^4x\,dx =\int \tan^2x(1+\tan^2x)\sec^2x\,dx =\frac{\tan^3x}{3}+\frac{\tan^5x}{5}+C.$$ これは $\cos x\ne0$ の各区間で成立します。$\sec x$ の記号に不慣れなら、最初から $1/\cos x$ として読めます。

3.有理式なら半角置換

$t=\tan(x/2)$ とすると、$$\sin x=\frac{2t}{1+t^2},\qquad \cos x=\frac{1-t^2}{1+t^2},\qquad dx=\frac{2\,dt}{1+t^2}.$$ $\sin x,\cos x$ の有理式を $t$ の有理式に変えられます。ただし $x=(2k+1)\pi$ ではこの置換が定義されないため、その点をまたぐ区間を1つの置換で扱うことはできません。

例題4:分母が一次の三角式

$$\int\frac{dx}{2+\cos x} =\int\frac{2\,dt}{t^2+3} =\frac2{\sqrt3}\arctan\frac{\tan(x/2)}{\sqrt3}+C.$$ この表示は半角置換が連続な各区間で使います。元の被積分関数は全ての実数で連続ですが、右辺の主値の逆正接は区間境界で跳ぶため、全実数を1つの原始関数として表すなら区間ごとに定数を調整します。

4.置換の前に短い変形を探す

例えば $1/(1+\sin x)$ は分子分母に $1-\sin x$ を掛けると、元の分母と $\cos x$ が0でない範囲で $\sec^2x-\sec x\tan x$ となり、$\tan x-\sec x+C$ と積分できます。元の関数が定義されるのに変形後の表示が未定義になる点では、別表示や極限で接続を考えます。半角置換は広く使えますが、常に最短の計算になるとは限りません。

作問者の視点――条件と解法の関係

確認演習と解答

まず方針と必要な条件を言葉にしてから計算してください。解答は開いて確認できます。

演習1 $\int\sin^2x\cos^3x\,dx$。

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$u=\sin x$ として $\int u^2(1-u^2)du$。答えは $\sin^3x/3-\sin^5x/5+C$。

演習2 $\int\sin^2x\,dx$。

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$\sin^2x=(1-\cos2x)/2$ から $x/2-\sin2x/4+C$。

演習3 $\int\tan^3x\,dx$。

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$\tan^3x=\tan x(\sec^2x-1)$。答えは $\tan^2x/2+\log|\cos x|+C$。$\cos x\ne0$ の各区間で成立します。

参考資料

定理・基本的な方法の確認に使える公開教材です。本ページの例題・演習・作問上のコメントは、解説用に独自に構成しています。