無限和と積分・微分を交換する根拠を、誤差を一斉に抑える考え方から理解します。
1.各点収束と一様収束の違い
部分和 $S_N(x)=\sum_{n=1}^N u_n(x)$ が各 $x$ で $S(x)$ に近づくことが各点収束です。一様収束では、集合 $E$ 全体について $$\sup_{x\in E}|S_N(x)-S(x)|\longrightarrow0$$ を要求します。同じ $N$ を選べば全ての $x$ で誤差を小さくできる、という量の順序の違いがあります。
例題1:端点の近くが取り残される
関数列 $f_N(x)=x^N$ を $[0,1]$ で考えると、$x<1$ では0、$x=1$ では1に各点収束します。しかし極限との差の上限は常に1なので一様収束しません。$0\le x\le r<1$ に範囲を狭めれば $\sup |x^N|=r^N\to0$ です。区間の端を少し動かすことが定理の適用を変えます。
2.M判定と明示的な誤差
$|u_n(x)|\le M_n$ が全ての $x\in E$ で成立し、$\sum M_n<\infty$ なら、$\sum u_n$ は $E$ で一様かつ各点で絶対収束します。さらに $$\sup_{x\in E}\left|\sum_{n>N}u_n(x)\right|\le\sum_{n>N}M_n.$$ これがWeierstrassのM判定です。十分条件なので、適切な $M_n$ が見つからないだけで非一様収束とは言えません。
例題2:三角関数の級数
$\sum_{n=1}^\infty \sin(nx)/n^2$ は実数全体で $|\sin(nx)/n^2|\le1/n^2$。従って一様収束し、尾部は $\sum_{n>N}1/n^2\le\int_N^\infty t^{-2}dt=1/N$ で抑えられます。$N=1000$ なら全ての実数 $x$ で絶対誤差は $10^{-3}$ 以下です。
3.項別積分に必要なこと
各 $u_n$ が有限閉区間 $[a,b]$ で連続で、級数がそこで一様収束すれば、$$\int_a^b\sum_{n=1}^\infty u_n(x)\,dx =\sum_{n=1}^\infty\int_a^b u_n(x)\,dx.$$ 差の積分の絶対値が $(b-a)\sup|S-S_N|$ 以下になることが根拠です。無限区間や特異点を含む広義積分には、この有限閉区間の定理をそのまま使えません。
例題2を $[0,\pi]$ で積分すると、$$\int_0^\pi\sum_{n=1}^\infty\frac{\sin(nx)}{n^2}\,dx =\sum_{n=1}^\infty\frac{1-(-1)^n}{n^3}.$$ この等式は、和の関数を先に初等関数で表せなくても正当化できます。
4.微分は、微分後の一様収束を確認する
各 $u_n$ が $[a,b]$ で連続微分可能、ある1点 $x_0$ で $\sum u_n(x_0)$ が収束し、$\sum u_n'(x)$ が $[a,b]$ で一様収束するなら、元の級数も一様収束し、内部で $S'(x)=\sum u_n'(x)$ となります。
元の関数列が一様収束するだけでは不足します。$f_N(x)=\sin(Nx)/N$ は0へ一様収束しますが、$f_N'(0)=1$ は極限関数の導関数0へ近づきません。例題2でも形式的な微分級数 $\sum\cos(nx)/n$ は $x=0$ で発散するため、実数全体での項別微分をこの定理からは主張できません。
5.べき級数と端点を分ける
収束半径の内側の閉区間では、べき級数とその微分級数に一様収束の議論を適用できます。収束半径ちょうどの端点は別に判定します。「$|x|<1$ で導いた式に $x=1$ を代入する」には、端点までの連続性や適切な定理など、追加の根拠が必要です。
作問者の視点――条件と解法の関係
確認演習と解答
まず方針と必要な条件を言葉にしてから計算してください。解答は開いて確認できます。
演習1 $\sum_{n=0}^\infty x^n$ の $[0,r]$($0<r<1$)での、$n=N$ まで取った誤差を評価せよ。
解答・考え方を開く
$|\sum_{n=N+1}^\infty x^n|\le r^{N+1}/(1-r)$。$r$ に依存し、$r\to1$ では一様に小さくできません。
演習2 $\sum_{n=1}^\infty x^n/n^2$ は $[-1,1]$ で一様収束するか。端点で微分できると即断できるか。
解答・考え方を開く
$|x^n/n^2|\le1/n^2$ より一様収束します。しかし形式的な微分級数は $x=1$ で $\sum1/n$ となり発散するので、そのまま端点まで項別微分を正当化することはできません。
演習3 各 $u_n$ が連続で $[0,2]$ 上の尾部の上限が $1/N$ 以下なら、積分の誤差は。
解答・考え方を開く
$|\int_0^2(S-S_N)dx|\le2/N$。区間の長さを掛けるのが基本です。
関連する解説
参考資料
定理・基本的な方法の確認に使える公開教材です。本ページの例題・演習・作問上のコメントは、解説用に独自に構成しています。
