今年の一橋大学では確率が出題されず話題になっているようです。整数問題は今年もちゃんと出題されていて安心しました(笑)。見た目からそこはかとなく難問臭が漂っていますが、寧ろ例年に比べて解きやすくなったのではないでしょうか。
《問題》
連立方程式$$\begin{cases}x^2=yz+7 \\ y^2=zx+7 \\ z^2=xy+7 \end{cases}$$を満たす整数の組 $(x,y,z)$ で $x \leqq y \leqq z$ となるものを求めよ。
(勝手に翻訳)
Find all pairs of integers $(x,y,z)$ such that $$\begin{cases}x^2=yz+7 \\ y^2=zx+7 \\ z^2=xy+7 \end{cases} \ \ (x \leqq y \leqq z)$$
(一橋大学2017 前期第2問)
《考え方》
いつもは大問1に整数が出ていましたし、今年から作問の仕組みが変わったのでしょうか?
それはさておき、このように対称性の高い連立方程式を見るとどこから手を付けて良いか分からなくなってしまう人がいますが、連立方程式を解くときの基本は「差を取る」ことです。以下では
$$\begin{cases}x^2=yz+7 &・・・①\\ y^2=zx+7 &・・・②\\ z^2=xy+7 &・・・③\end{cases}$$
として話を進めます。まず $x=y=z$ のときは①~③のいずれも成立しないので不適です。
①-②より$$x^2-y^2=yz-zx$$ $$\therefore (x+y)(x-y)=-(x-y)z$$ $$\therefore (x+y+z)(x-y)=0$$となるので、
$x+y+z=0$ または $x=y$
を得ます。また、②-③より$$y^2-z^2=zx-xy$$ $$\therefore (y+z)(y-z)=-(y-z)x$$ $$\therefore (x+y+z)(y-z)=0$$となるので、
$x+y+z=0$ または $y=z$
を得ます。
$x=y$ のとき①より $x(x-z)=7$ となり、これを満たすような組$(x,x-z)$は $(7,1)$,$(1,7)$,$(-1,-7)$,$(-7,-1)$ に限られますから、組$(x,z)$は以下の場合に限られます。
$(x,z)=(7,6)$,$(1,-6)$,$(-1,6)$,$(-7,-6)$
$(7,6)$,$(1,-6)$は$x \leqq z$に反するので不適。$(-1,6)$,$(-7,-6)$はいずれも③を満たさないので不適。したがって$x \ne y$です。
$y=z$ のとき②より $y(y-z)=7$ となりますから上記と同様に不適。したがって$y \ne z$です。
以上より$$x<y<z$$が必要です。
次に $x+y+z=0$ のときを考えます。ここで、$x,y,z$のどれか一つでも$0$に等しいと、少なくとも①~③のどれか一つは成立しませんから、$x,y,z$はいずれも$0$に一致しません。このことと $x+y+z=0$ および $x<y<z$ より、少なくとも
「$x<0$ かつ $z>0$」
が言えます。よって$xz<0$ですから、②より$xz+7=y^2 \geqq 0$なので$$-7 \leqq xz <0$$となります。したがって$x$と$z$の組み合わせは以下のようになります。
$x=-1$のとき$z=1,2,3,4,5,6,7$
$x=-2$のとき$z=1,2,3$
$x=-3$のとき$z=1,2$
$x=-4,-5,-6,-7$のとき$z=1$
このうち $x <y< z$ を満たし、$y \ne 0$ となるものは$(x,y,z)=(-2,-1,3)$と$(-3,1,2)$の2組に限られます。また、これらの組は①~③をすべて満足するので求める組は$$(x,y,z)=(-2,-1,3)、(-3,1,2)$$となります。
(コメント)
東工大のときにも触れましたが、一橋大学の整数問題は文系数学とは思えないほどハイレベルなものが出題されており、整数問題を極めたいなら一橋大学の整数問題を解くことをお勧めします。
こういうシンプルな整数問題は解いていて楽しいものです。