創作整数問題#82解法&創作整数問題#83

この頃暑いですね! 最近、昔の気象データを見る機会があったのですが、100年くらい前でも意外と今とそれほど気温が変わらなかったりするんですよね。現代のように冷房が発達していない時代に昔の人はどうやって暑さを凌いでいたのか気になります。


創作整数問題#83


《問題#83》

循環小数を表示したときに繰り返される数字の列を循環節という。例えば、$$\dfrac{1}{7}=0.\underline{142857}14285714\ldots$$であるから$\dfrac{1}{7}$の循環節は下線部の$\underline{142857}$であり、循環節の長さは$6$である。

(1)$2$と$5$を除く素数$p$について、$\dfrac{1}{p}$の循環節の長さは $p-1$ の約数になることを示せ。

(2)$\dfrac{1}{83}$の循環節の長さを求めよ。

(3)十進法表記において、最高位の数字が$8$、下$1$桁の数字が$3$で、間がすべて$0$であるような$3$桁以上の整数 $800 \ldots 003$ のうち、$83$で割り切れるものを1つ求めよ。

(創作問題)


$\dfrac{1}{83}$の循環節を手計算で求めるとなるとかなり面倒ですが、$83$が素数であることに着目すれば循環節の長さを絞り込むことができます。(1)はその誘導設問です。(2)が(3)の強力なヒントになっているので、得られた結果を上手く使いましょう。

 

» 答えはこちら

(2)の答えは $\color{red}{41}$、(3)は $\color{red}{8\underbrace{00 \ldots 00}_{41\text{個}}3}$ などです。$n$を自然数として、$\color{black}8\underbrace{00 \ldots 00}_{41n\text{個}}3$ と表されるとき$83$の倍数になります。

※$2$と$5$以外の素数$p$について、$\dfrac{1}{p}$の循環節の長さは $p-1$ の約数になることが知られています。少し難しく言うと、これは素数$p$を法とする$10$の「位数」と関係があります。この事実を用いると(2)の答えが$2$、$41$、$82$に限られることが直ちに分かるので、$10^2$、$10^{41}$、$10^{82}$を$83$で割った余りを調べるだけで十分なのです。実際に $10^{41} \equiv 1 \pmod{83}$ となるので、循環節の長さは$41$と求められます。

» 閉じる


創作整数問題#82(解き方)


$\log_{10}(8^a+2^b)$が整数となるような正の整数組$(a,\,b)$をすべて求めよ。


ディオファントス方程式に落とし込んでから場合分けで処理します。

解答例

 

まず、$\log_{10}\!N$が負でない有理数となるような正の整数$N$の条件が「非負整数$k$を用いて $N=10^k$ と表せること」であることを示す。

補題

 

$\log_{10}N=\dfrac{k}{l}$($k$、$l$は互いに素な非負整数で、$l \ne 0$)と置くと、$$10^{k/l}=N \quad \therefore 10^k=N^l$$となる。左辺を素因数分解すると $2^k \cdot 5^k$となるから、右辺の素因数分解もこれに一致する。一方で、右辺の素因数分解に現れる指数はすべて$l$の倍数となるから、$k$は$l$の倍数となることが必要である。いま、$k$と$l$は互いに素なので $l=1$ の場合に限られる。

 

よって、$N=10^k$($k=0,1,2,\cdots$)と表せるとき $\log_{10}\!N$は負でない有理数(この場合、特に整数)となる。逆に$\log_{10}\!N$が負でない有理数となるのは $N=10^k$($k=0$、$1$、$2$、$\cdots$)と表せる場合に限られる。

補題より、本問は方程式$$8^a+2^b=10^c$$を満たす非負整数の組$(a,b,c)$を求める問題に帰着する。この方程式は$$(*): \quad 2^{b}\left(2^{3 a-b}+1\right)=2^{c} \cdot 5^{c}$$と式変形できるため、$3a-b$ の値で場合分けして考える。

 

(ア)$3a-b=0$ のとき、方程式$(*)$は$$2^{b+1}=2^{c} \cdot 5^{c}$$となる。左辺の素因数に$5$は含まれないから、$c=0$ が必要となる。これより $b=-1$ となるが、これは正の整数ではないので、この場合に解となる正の整数組は存在しない。

 

(イ)$3a-b \geqq 1$ のとき、$2^{3 a-b}+1$ は奇数となる。両辺の素因数$2$の個数が一致することから $b=c$ が導かれ、方程式$(*)$は$$2^{3a-b}+1=5^{b}$$となる。ここでさらに$b$の偶奇によって場合分けをする。

 

(ⅰ)$b$が偶数のとき $b=2B$($B$は$1$以上の整数)と置くと、$$2^{3a-2B}+1=5^{2B}$$ $$\therefore 2^{3a-2B}=(5^{B}-1)(5^{B}+1)$$となる。ここで、$5^{B}-1$ と $5^{B}+1$ の差は$2$であり、$5^{B}-1 \geqq 4$ より、両者がともに$2$の冪になることはない。これは左辺が$2$の冪であることに矛盾する。

 

(ⅱ)$b$が奇数のとき $b=2B+1$($B$は$0$以上の整数)と置くと、$$2^{3a-2B-1}+1=5^{2B+1}$$ $$\therefore 2^{3a-2B-1}=(5-1)(\underline{5^{2B}+5^{2B-1}+ \cdots +1})$$となる。下線部は奇数個の奇数の和であるから奇数である。左辺は奇数の素因数を持たないから $B=0$ に限られる。よって $b=1$ となり、方程式$$2^{3a-1}=4$$より $a=1$ を得る。このとき $c$ は非負整数であるから $(a,\,b)=(1,\,1)$ は求める正の整数組である。

 

(ウ)$3a-b <0$ のとき、方程式$(*)$は$$2^{3a}\left(1+2^{b-3 a}\right)=2^{c} \cdot 5^{c}$$となる。(イ)の場合と同様にして、$3a=c$、$1+2^{b-3 a}=5^{c}$ となるから$c$の偶奇で場合分けすると、$c$は奇数の場合に限られ、$c=1$ が導かれる。ところが $3a =1$ を満たす$a$は存在しないから、この場合に解は存在しない。

 

以上より、$\log_{10}(8^a+2^b)$が整数となるような正の整数組$(a,\,b)$は$$\color{red}{(1,\,1)}$$である。

 


 

本問は、①対数の真数が満たすべき条件を洗い出す、②指数型ディオファントス方程式を解く、という2つのパートからなります。$(a,\,b)=(1,\,1)$ は自明な解なので、すぐに見当が付くでしょうが、それ以外に解を持たないことを示すには指数型ディオファントス方程式をきちんと解かなければなりません。

合同式を使って剰余の組み合わせによる絞り込みを考えた人もいるかもしれませんが、今回はあまり良い手ではないように思われます。$\bmod 3$ や $\bmod 10$ からは$a$と$b$がともに奇数でなければならないことが分かりますが、$(a,\,b)=(1,\,1)$ 以外の解が存在しないことをすぐに示せるわけではありません。

別解を思い付いた方はコメント欄にお願いします!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です