飛び地は「本体と離れている領域」、内陸国は「外洋につながる海岸を持たない国」、一国に囲まれた国は「周囲の国境が同じ一国に接する国」です。同じ分類ではありません。ここでは、飛び地2例、一国に囲まれた独立国3例、国連の内陸開発途上国32か国を、範囲を明示して一覧にします。
飛び地と、囲まれた領域の違い
英語のexclaveは、ある国の主要な領域から分離した領域に注目する言葉です。enclaveは、別の領域に完全に囲まれていることに注目します。一つの場所が両方に当てはまることもありますが、どちらも必ず同じ意味になるわけではありません。
例えば、A国の小さな領域がA国本体から離れ、B国の中にすっぽり入っていれば、A国の飛び地であり、B国に囲まれた領域でもあります。一方、独立国全体が別の国に囲まれていても、外に同じ国の本体があるわけではないので、その独立国を「周囲の国の飛び地」とは呼びません。
| 地域 | 所属国 | 周囲との関係 |
|---|---|---|
| ビュージンゲン(Büsingen am Hochrhein) | ドイツ | スイスに囲まれたドイツの飛び地 |
| カンピョーネ・ディターリア(Campione d’Italia) | イタリア | スイスに囲まれたイタリアの飛び地。ルガーノ湖に面する |
スイスの地形測量機関swisstopoは、国境の説明でこの二つのenclaveを明記しています。湖岸を持つカンピョーネの例からも、「水に接していること」と「海岸を持つこと」は同じでないと分かります。なお、領土の位置関係だけから、関税・通貨・郵便・出入国の制度まで推測することはできません。制度は別途確認が必要です。
国全体が、一つの国に囲まれている例
| 国 | 囲んでいる国 | 位置関係 |
|---|---|---|
| レソト | 南アフリカ共和国 | アフリカ南部で、全周が南アフリカに接する |
| サンマリノ | イタリア | イタリア半島の中に位置する独立国 |
| バチカン市国 | イタリア | ローマ市内に位置する独立国 |
この三つはいずれも内陸国ですが、「内陸国なら必ず一国だけに囲まれる」という逆向きの関係はありません。複数の国と国境を接する内陸国は多数あります。また、陸上の隣国が一つでも、海岸がある国なら、ここでいう全周を囲まれた国には当たりません。
バチカンについては、国の領域と、ローマなどにある教皇庁の所有地・治外法権的な扱いを受ける施設を混同しないことも重要です。施設を所有することや特別な免除を受けることが、そのまま別の領土になることを意味するわけではありません。ここでは国の地理的な領域を分類しています。
内陸開発途上国32か国の一覧
次の表は、2026年10月2日に確認した国連UN-OHRLLSのLLDC一覧に範囲を限定し、地域別に整理したものです。世界の全内陸国を網羅した表ではありません。LLDCはLandlocked Developing Countriesの略で、地理的な内陸国のうち、国連のこの区分に入る国を指します。
| 地域 | 国名 |
|---|---|
| アフリカ(16) | エスワティニ、エチオピア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ、チャド、中央アフリカ、ニジェール、ブルキナファソ、ブルンジ、ボツワナ、マラウイ、マリ、南スーダン、ルワンダ、レソト |
| アジア(12) | アゼルバイジャン、アフガニスタン、アルメニア、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ネパール、ブータン、モンゴル、ラオス |
| ヨーロッパ(2) | 北マケドニア、モルドバ |
| 南アメリカ(2) | パラグアイ、ボリビア |
例えば、カスピ海に面するアゼルバイジャン、カザフスタン、トルクメニスタンも、この一覧に入っています。名前に「海」と付く水域に接していても、外洋につながる海岸を持つ国と同じ扱いにはなりません。また、国際河川の舟運などで海へ物資を運べることと、自国の領土に海岸があることも区別します。
国連のLLDCと、Least Developed Countriesを表すLDCも別の区分です。国連の一覧には両方に当てはまる国に印がありますが、内陸国であることだけで、経済水準や暮らしが一律に決まるわけではありません。
一覧を見るときは、何を数えたかを確認する
飛び地は、国の領土、県や市町村の行政区域、個人の土地のまとまりなど、どの階層を対象にするかで数が変わります。また、海へ開けた離れた領域を含めるか、完全に他国に囲まれたものだけを数えるかによっても、一覧の範囲は変わります。
本記事は、現在の位置関係を公式資料で確認できる例と、国連が明示する32か国の区分を扱っています。国境や国家承認に争いがある地域を、断りなく独立国の一覧へ足したり、過去に解消された飛び地を現存例に混ぜたりしていません。地図の複雑な形を見つけたら、まず「何に属し、何に囲まれ、海岸を持つか」を分けると、その場所の特徴を整理できます。
参考資料
- 国連UN-OHRLLS「List of LLDCs」:2026年10月2日時点で確認した内陸開発途上国32か国
- swisstopo「National border」:ビュージンゲン・カンピョーネの国境上の扱い
- レソト中央銀行「About the Kingdom of Lesotho」:南アフリカに全周を囲まれる位置関係
- 外務省「サンマリノ テロ・誘拐情勢」:冒頭の地理概説。治安評価のための引用ではない
- バチカン市国政府「Geography」:国の領域とローマの位置、領域外施設との区別
資料確認日:2026年10月2日。本文の数値例・模式図は、特記したものを除き本記事の説明用に作成しています。
