地図の北と方位磁針の北は同じではない?

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地図で基準にする北と、方位磁針のN極が指す北は、通常は少しずれています。地理的な北を真北、磁針が示す北を磁北といい、その水平な角度の差が偏角です。さらに測量や地図では、平面座標の縦軸が示す方眼北も区別します。

磁針は、その場所の磁場に向く

真北は、その地点の子午線に沿って地理的な北極へ向かう方向です。一方、水平に保った磁針が合わせようとするのは、その場所の地磁気の水平成分です。磁北を単に「磁北極という一点へ直線で向く」と覚えると、実際の地磁気の形を単純化しすぎる場合があります。

地球の地磁気は、地球の回転軸にそろった完全な棒磁石の場ではありません。場所ごとに方向が異なり、時間とともにも変化します。そのため、ある地域で覚えた「何度ずらせばよい」を、世界中や何十年後の地図へそのまま使うことはできません。

偏角には、東西と基準年がある

磁北が真北の東側へずれれば東偏、西側へずれれば西偏です。国土地理院の説明では、磁気図2020.0年値で札幌付近は約10度西、那覇付近は約6度西にずれます。これらは地域差を見る目安であり、現在地の最新の値を小数点以下まで示すものではありません。

必要な場所の偏角は、国土地理院の地磁気値計算や地理院地図で確認できます。地形図の余白に書かれた偏角を使う場合も、どの年を基準とする値かを見ます。古い紙の地図の数値と、新しいアプリの表示が違っていても、直ちにどちらかが故障しているとは限りません。

足すか引くかは、角度の約束から考える

真北・磁北から時計回りに測った方位角を、それぞれT、Mとします。偏角Dは東偏を正、西偏を負と約束すると、T=M+Dです。0度未満や360度以上になった場合は、360度を加減して同じ向きを表します。

仮に西偏8度ならD=−8度です。磁北基準で90度の方向は、真北基準では$$T=90^\circ-8^\circ=82^\circ$$となります。逆に、真東すなわち真北基準90度へ向くには、磁北基準では98度です。この8度は計算用の仮定で、特定地点の観測値ではありません。

「西へ8度だからいつでも引く」とだけ記憶すると、変換の向きを逆にしたときに間違えます。真北と磁北の矢印を紙に描き、どちらをゼロにして角度を読んでいるかを確認すると安全です。資料が西偏を正として表示している場合には、上のDの符号の約束へ読み替える必要もあります。

地図の縦線は、必ずしも真北ではない

球面に近い地球を平面へ投影すると、経線と平面座標の縦線は一般には一致しません。地図の方眼に沿う北が方眼北です。国土地理院の平面直角座標では、座標系の原点を通る南北軸から東西へ離れるにつれ、座標の北と真北にずれが生じます。

区別しておきたい三つの北
名称 基準 主な確認先
真北 地理的な子午線の北向き 経緯線・測量情報
磁北 局所的な地磁気の水平成分 磁針・偏角データ
方眼北 平面座標の縦軸の北向き 座標系・方位の注記

したがって「地図の上を磁針の北へ向ける」だけでは、地図の種類と必要な精度によって誤差が残ります。真北・磁北・方眼北のどの線が描かれているか、凡例や余白の方位図を確かめます。工場などで独自に定める方向は、構内北・プラント北としてさらに分けて扱います。

磁針の近くの金属にも注意する

偏角の補正は地磁気の地域差への対応です。磁石、鉄骨、車、電流の流れる設備などが近くにあって磁針が乱れる問題まで、同じ数値で補正できるわけではありません。スマートフォンも、ケースの磁石や周辺環境、表示が真北基準か磁北基準かの設定に注意が必要です。

小さい角度でも距離が長いと差が出ます。平面近似で、進行方向が8度ずれたまま1km進めば、予定方向に対する横のずれは1,000sin8°≒139mです。これは単純な幾何計算であり、実際の登山経路を評価した値ではありません。現地では方位だけに頼らず、地形と現在位置を合わせて確認しましょう。

参考資料

資料確認日:2026年10月2日。本文の数値例・模式図は、特記したものを除き本記事の説明用に作成しています。

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