有機化学:配座・立体配置・鏡像異性体を区別する

高校化学から大学初年級/内容確認:2026年10月14日

分子を回しただけなのか、別の立体異性体になったのか。まず結合のつながりを確かめ、それから空間配置を比べます。

単結合の回転と、立体配置の違い

エタンをC–C結合の方向から見ると、手前と奥のC–H結合の重なり方が変わります。このように主に単結合の回転で入れ替わる空間配置を配座と呼びます。ブタンでは大きな基が離れたアンチ配座が有利ですが、他の配座も温度に応じた割合で存在します。

一方、二重結合の両端に異なる基が付いたアルケンでは、π結合の重なりを大きく変えずに自由回転できません。E/Zの違いは、普通の単結合回転だけでは解消できない立体配置の違いです。

E/Zは、両端で優先順位を決める

二重結合の各炭素で、直接結合する二つの原子をCIP順位則に従って比べます。基本は原子番号が大きい原子を優先し、同じなら次につながる原子へ進んで比較します。両端で高順位の基が同じ側ならZ、反対側ならEです。片側の炭素に同じ基が二つ付いていると、E/Zは区別できません。

R/Sと+/−は、別の情報

四つの異なる基が結合した四面体型炭素は、鏡像と重ならない構造を作る代表例です。CIP順位則で優先順位を付け、最低順位の基を奥に向けて残りの順をたどると、R/Sを決められます。R/Sは構造の記号で、旋光方向の+/−とは直接対応しません。Rだから必ず右旋性、とは言えないのです。(OpenStax:5.3 光学活性)

用語 比べているもの
エナンチオマー 互いに重ならない鏡像
ジアステレオマー 鏡像の組ではない立体異性体
ラセミ体 一対のエナンチオマーを等量含む混合物
メソ体 不斉中心を持っていても、分子全体はアキラルな化合物

混合物の偏りをeeで表す

ee(%)= |一方の割合 − 他方の割合|
一対のエナンチオマーのうちR体の割合(%)R:S = 50:50 / ee = 0%(ラセミ)

単一の不斉中心を持つ一対だけの混合物です。棒はR体の割合、表示のeeはその差です。80% eeはR体80%という意味ではありません。

分子全体で鏡像と比べる

不斉炭素があれば必ず試料が旋光する、とは限りません。メソ体のように分子全体で対称性がある場合も、ラセミ混合物のように旋光が相殺される場合もあります。逆に、不斉炭素を持たなくても、軸不斉などによってキラルになる分子があります。

エナンチオマーの旋光を比較するときは、溶媒、濃度、温度、波長などの条件をそろえます。

考えてみよう:R体90%、S体10%の混合物のeeは?

90−10=80% eeで、R過剰です。R体の含有率90%と、エナンチオマー過剰率80%を区別します。