【化学基礎】化学式と反応式:原子数と電荷から係数を決める

対象:化学基礎/前提:元素記号、原子・分子・イオン

反応式の係数を合わせるとき、化学式の右下の数字まで変えていませんか。H₂OをH₂O₂に変えると、個数を調整したのではなく、水を過酸化水素という別の物質に置き換えたことになります。化学式が表す粒子の種類と、係数が表す量の比を分けて考えましょう。

✎化学式は何を表しているか

分子式C₂H₆Oは、一分子に炭素原子2個、水素原子6個、酸素原子1個があることを表します。ただし原子のつながりまでは決まりません。エタノールとジメチルエーテルは分子式が同じで、構造が異なります。組成式は原子数の最も簡単な整数比、構造式は原子のつながりを表します。

イオン結晶では独立した分子を想定せず、陽イオンと陰イオンの割合を組成式で表します。Al³⁺とSO₄²⁻なら、全体の電荷が0になる組合せは2×(+3)+3×(−2)=0なので、Al₂(SO₄)₃です。括弧の外の3はSO₄全体に掛かり、酸素原子の割合は12となります。

✎例題:アルミニウムと酸の反応

生成物をAlCl₃とH₂とする反応、Al+HCl→AlCl₃+H₂を考えます。塩素をそろえるためAlCl₃を2、HClを6とすると、水素原子は6個です。H₂を3、Alを2にすれば、各元素の原子数が一致します。

2Al+6HCl → 2AlCl₃+3H₂

左辺と右辺で、Alは2、Clは6、Hは6です。係数は物質量の比にもなりますが、質量の比ではありません。アルミニウム0.040molが十分な酸と反応すれば、反応式から生じる水素は0.040×3/2=0.060molです。反応が完了するという条件と、係数が合っていることは別に確認します。

化学式と係数の役割、イオン反応式への直し方はOpenStaxの反応式の解説でも確認できます。

✎イオン反応式では電荷も数える

HClとNaOHの希薄水溶液を混ぜる反応では、Na⁺とCl⁻は反応前後で変わりません。変化する粒子に注目するとH⁺+OH⁻→H₂Oです。左辺の電荷は(+1)+(−1)=0で、右辺と一致します。H⁺は水中で水和したプロトンを簡略に表した記号です。

反応式から消したNa⁺やCl⁻が、溶液からなくなるわけではありません。正味の変化に直接関わらないため、記述を省いています。沈殿反応でも、まず何が溶けたイオンとして存在するかを考えてから省略します。

✎確認問題

C₂H₆O+O₂→CO₂+H₂Oの係数を合わせよう。

C₂H₆O+3O₂→2CO₂+3H₂Oです。右辺の酸素原子は7個ですが、左辺ではC₂H₆Oが既に1個持つため、O₂は3分子分になります。

Ca²⁺とPO₄³⁻からできる塩の組成式は?

Ca₃(PO₄)₂です。陽イオンの電荷の合計は+6、陰イオンは−6です。CaPO₄では全体が電気的に中性になりません。

✎発展:反応の進み具合を一つの数で表す

反応物の係数を負、生成物を正とした化学量論数νᵢを使うと、各成分の物質量はnᵢ=nᵢ,₀+νᵢξと表せます。ξは反応進行度です。上の反応でξが0.010mol増えると、Alは0.020mol減り、H₂は0.030mol増えます。高校で使うmolの増減表を一般化した表現です。複数の独立した反応が同時に起きる場合には、反応ごとに進行度を考えます。