2.式変形と文字式
2.1 文字を使うワケ
この節では「文字」というものについて振り返ってみます。
数学でいう「文字」とは例えば や 、 などを指しており、具体的な数の代わりとして使われるものです。「文字で置く」という手法は整数分野に限らず数学全般において重要です。
文字には『一般化』する効果があります。一般化により、具体的な数字だったら何回も(ほとんどの場合だと無限回は)繰り返さなければならないような一定の操作を、たった文字1個に代表させて記述することができるのです。
では以下の例を考えてみてください。
例題
すべての自然数は倍するともとの自然数より大きくなることを示せ。
こんな自明な問いに対しても文字の「一般化する能力」なくしては証明することができないのです。(文字を使わないでこれをすべての自然数について一般に証明することって可能なのでしょうか(笑)?できたとしてもかなり面倒だと思いますが・・・)
文字というのはこうした一般化された現象・事実に証明を与えるためには必要不可欠な道具なのです。この例題も文字を使えば瞬殺ですよね(笑)。
解答例
ある任意の自然数を とする。題意を示すためには を示せば良い。 よって、すべての自然数の2倍は、もとの自然数より大きいことが示された。
解答例の中で「任意の」という語(英語では”all”、”any”の意)が使われていますが、これは「あらゆる」とか「どれでも」などという意味で、数学の証明にはよく用いられる単語です。
解答例では という文字を使って一般的に証明することができました。これが文字の力なのです。余りにも当たり前のように文字が使われているため、こうした有難みに触れる機会が無かった方には少し新鮮に感じられたでしょうか?(もちろん、ここまで当たり前のことしかお話ししていないのですが・・・)
上記の例でも確認したように、文字とは、ある具体的な数の代わりとして機能する記号の一種なのです。そのため、ある具体的な数の代わりに文字を使って方程式や不等式などを研究する学問を「代数学」(algebra)というのです。一般性が高まるということは、それだけ議論が抽象的になるということですが、それは同時に、より広い範囲の内容を一度に議論できるということも意味します。近代数学はこの代数学の発展とともに整備されてきた学問体系なのです。このことからも文字の存在やその有用性が数学において非常に重要な役割を果たしていることが理解できます。
続いては文字式の復習です。
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