創作整数問題#35解法&創作整数問題#36

関東地方では三十余年振りに積雪がゼロでない状態が一週間ほど続きました。寒ければ雪が融けないのは当たり前ですが、これほどまでに融けないとは誰も思わなかったのでは・・・。非降雪地域の路面は積雪が全く考慮されていないため、雪が積もった途端に殺人的な滑りやすさになってしまいます。タイルなどの上を歩く際は要注意!


創作整数問題#36


《問題#36》

3次方程式$$2x^3-mx^2-(4m+1)x-12=0$$が整数解をもつような整数$m$をすべて求めよ。

(創作問題)


基本問題です。創作整数問題シリーズでは初めて扱うタイプですが、入試問題としては出題されやすいタイプの問題です。

 

 

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答えは $\color{red}{m=21, \ -36}$ です。

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創作整数問題#35(解き方)


$0$以上$1$以下の既約分数を以下の手順で並べる。

まず分母が$1$となるような既約分数を大小順に並べる。分母が$2$となるような既約分数を大小順に並ぶように列に加える。さらに分母が$3$となるような既約分数を大小順に並ぶように列に加える。・・・これを続けていき、最後に分母が自然数$n$となるような既約分数を大小順に並ぶように列に加える。この数列を$F_n$とする。ただし、$\dfrac{0}{1}$および$\dfrac{1}{1}$は既約分数とみなすものとする。

例えば、$F_1$は$$\dfrac{0}{1}\ \ \dfrac{1}{1}$$となり、$F_3$は$$\dfrac{0}{1}\ \ \dfrac{1}{3}\ \ \dfrac{1}{2}\ \ \dfrac{2}{3}\ \ \dfrac{1}{1}$$となる。数列$F_n$の項数を$f^{\sharp}_n$とするとき以下の問いに答えよ。

(1)$n \geqq 2$ のとき、$f^{\sharp}_n$は奇数であることを示せ。

(2)数列$F_n$の総和が$\dfrac{f^{\sharp}_n}{2}$であることを示せ。

ファレー数列とはイギリスの地質学者ジョン・ファレーに因んだ数列で、彼が1816年の「Philosophical Magazine」という雑誌に論文を投稿したことで広く知られるようになりました。

前回も少し触れた通り、ファレー数列はオイラーのトーシェント関数に関係しています。「既約分数」からなる数列ですので、この数列を調べる際には「互いに素」という性質が付きまといます。

$F_n$で初めて登場する分数の分母は$n$ですから、$F_n$で新たに出てくる項は$n$と互いに素な$n$より小さい自然数が分子になります。$n$と互いに素でない、つまり$1$でない公約数をもつなら、$F_{n-1}$までに、ある既約分数として既に登場していますから、オイラーのトーシェント関数$\phi(n)$を用いると$$f^{\sharp}_{n}-f^{\sharp}_{n-1}=\phi(n) \tag{ⅰ}$$と表せます。ここで、オイラーのトーシェント関数$\phi(n)$とは、$n$以下の自然数のうちで$n$と互いに素なものの個数を表しています。$(ⅰ)$式より、$\phi(n)$が$f^{\sharp}_{n}$の階差数列となっているので関係式$$f^{\sharp}_{n}=1+\displaystyle \sum_{m=1}^n \phi(m) \tag{ⅱ}$$を得ます。$f^{\sharp}_{1}=2$ なのでこれはすべての自然数$n$について成立しています。ここで $\phi(1)=\phi(2)=1$ であり、$n \geqq 3$ のとき$\phi(n)$が偶数値をとることを既知とすれば(1)はすぐに分かります。ただ、そんなわけにもいかないと思いますので、$\phi(n)$を使わずに、これを理解してみましょう。

$n$と$k$が互いに素のとき、$n$と$n-k$も互いに素です。当然、その逆も真です。これは多分問題ないと思いますが、一応(?)説明しておきます。

$n$と$k$は互いに素であるとします。$n$と $n-k$ がある公約数$d$をもつとすると、それらの差 $n-(n-k)$ も$d$の倍数となります。よって$n$と$k$はともに$d$の倍数となりますが、$n$と$k$は互いに素なので $d=1$ しかありえません。これより、$n$と $n-k$ は互いに素であることが分かります。

したがって次のことが言えます。

数列$F_n$に$\dfrac{k}{n}$が新たに加わるならば$\dfrac{n-k}{n}$も新たに加わる。

$n$と互いに素な$k$について$k$と $n-k$ が1対1で対応しますから、$F_n$には新たに偶数個ずつ項が増えていくことになります。$\dfrac{1}{2}$の場合は自分自身しか対応できないので奇数個増えることになり、$n \geqq 2$ のときは$f^{\sharp}_{n}$がつねに奇数であることが言えます。

またこのとき1対1で対応する$\dfrac{k}{n}$と$\dfrac{n-k}{n}$の和はちょうど$1$となりますから、数列$F_n$の和は$\dfrac{\phi(n)}{2}$ずつ増えていきます。$n=2$ の場合は$\dfrac{1}{2}$しか増えないので一端脇に置いておきます。

これより数列$F_n$の和を$S_n$とすると$$\begin{align} S_n &=1+\dfrac{1}{2}+\displaystyle \sum_{k=3}^n \dfrac{\phi(k)}{2} \\ &=\dfrac{3}{2}+\dfrac{1}{2} \displaystyle \sum_{k=3}^n \phi(k) \\ &=\dfrac{3}{2}+\dfrac{f^{\sharp}_{n}-3}{2} \ \ (\because (ⅱ)) \\ &= \dfrac{f^{\sharp}_{n}}{2}\end{align}$$となります。これは $n=1,\ 2$ でも成立するので、これで(2)も示すことができました。


(コメント)

(2)のところで説明しているのは、和が$1$になるような組の個数は$\dfrac{1}{2}$を除いた$\dfrac{f^{\sharp}_{n}-1}{2}$個なので、これに$\dfrac{1}{2}$を加えてやれば$F_n$の総和が$\dfrac{f^{\sharp}_{n}}{2}$と表すことができる、というものです。上記の和が $k=3$ から始まっているのは、$\dfrac{1}{2}$を除外すると $n=1$ のときがやや書きにくかった、というだけなのでそれほど深い意味はありません。

今回はファレー数列のごくごく基本的な内容を問題風にしてみました。理屈が分かれば小学生でも理解できそうです。この他に、幾何や解析の分野でもファレー数列が関係する事象が知られています。何とも奥が深い数列です。

それからこれは余談ですが、ファレー数列に関する論文は既に1802年の時点でフランスの数学者シャルル・ハロスによって世に出されていたようです。ハロスの論文は当時あまり注目されなかった一方で、ファレーの論文はたまたま著名な数学者であるフランスの数学者コーシーの目に留まり、その内容に関する証明がコーシーによって与えられるなどしたため、今日では「ハロス数列」ではなく「ファレー数列」と呼ばれて広く知られるようになりました。そう考えるとやはりタイミングというのは重要な要素なのだと改めて感じさせられますね。

 

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