不定積分で大切なのは、公式の数よりも、目の前の式がどの微分公式の逆に当たるかを見抜くことです。置換積分・部分積分・部分分数分解を選ぶ理由と、途中で行き詰まったときの整理の仕方を、計算例で説明します。
実数の範囲で考え、$\log$は自然対数、$C$は積分定数です。答えは被積分関数が連続な各区間で解釈します。高校数学の範囲を中心に、逆三角関数・半角置換を発展事項として加えます。
1.不定積分は原始関数の族
$F'(x)=f(x)$を満たす$F$を$f$の原始関数といいます。1つの区間で2つの原始関数$F,G$があれば、$(F-G)’=0$より差は定数です。そのため$\int f(x)dx=F(x)+C$と書きます。
例えば$\int dx/x=\log|x|+C$は$x>0$でも$x<0$でも使えます。ただし0で区切られた2区間の定数は独立に選べます。「1つの$C$」で両区間のすべての原始関数を同時に表せるわけではありません。
2.積分法を選ぶ順序
| 式の特徴 | 第一候補 | 目標 |
|---|---|---|
| 展開・約分・三角恒等式で簡単になる | 先に式を整理 | 基本公式の和へ |
| $f'(x)g(f(x))$の形 | $u=f(x)$ | 合成関数の微分の逆 |
| 多項式×指数・三角関数 | 部分積分 | 多項式の次数を下げる |
| $\log x,\arctan x$単独 | $1$を掛けて部分積分 | 微分して有理式へ |
| 多項式の比 | 割り算→因数分解→部分分数 | 対数・逆正接へ |
| $\sqrt{a^2-x^2}$など | 三角置換・平方完成 | 根号の中を平方へ |
| $\sin x,\cos x$の有理式 | 恒等式、最後に半角置換 | 有理関数の積分へ |
この順序は絶対的な規則ではありません。例えば$x/(x^2+1)$を部分分数にしようとするより、分母の微分を見つける方が短くなります。「操作した後の式が簡単になるか」を基準に選びます。
3.置換積分――微分まで1組にする
$u=g(x)$とおいたら、$du=g'(x)dx$まで同時に書きます。$dx$だけを機械的に置き換えるより、被積分関数の中に$g'(x)dx$をまとめて見つける方が安全です。
解答
$u=2x^2+3,\ du=4x\,dx$とおくと
微分すると$(1/6)(3/2)(2x^2+3)^{1/2}\cdot4x=x\sqrt{2x^2+3}$となり、係数まで確認できます。
解答:分母の微分と残りに分ける
$3x+5=(3/2)(2x+2)+2$とします。分母は$(x+1)^2+4$です。
分母が常に正なので、この対数には絶対値を省けます。逆正接項の微分は$2/[(x+1)^2+4]$です。
4.部分積分――微分すると簡単になる側を選ぶ
積の微分$(uv)’=u’v+uv’$を移項した式です。$u$には微分すると簡単になる因子、$dv$には積分できる因子を選びます。公式の導出と基本例はOpenStaxの部分積分でも確認できます。
解答:次数を2回下げる
したがって答えは$e^{2x}(x^2/2-x/2+1/4)+C$です。指数関数を微分する側へ置くと多項式の次数が上がり、通常は簡単になりません。
解答:$\log x\cdot1$と見る
$u=\log x,\ dv=dx$とすると、$du=dx/x,\ v=x$です。よって$x\log x-\int1dx=x\log x-x+C$です。見かけ上1つの関数でも部分積分が使えます。
5.元の積分が戻るときは方程式として解く
解答:2回の部分積分
原始関数を定数差を除いて比較すると、$I=e^x\cos x+J$、$J=\int e^x\sin x\,dx=e^x\sin x-I$です。したがって$2I=e^x(\cos x+\sin x)$となり、
途中の不定積分にそれぞれ別の定数を付けても、最後は1つの任意定数にまとめられます。
6.有理関数――まず割り算、次に分解の型
分子の次数が分母以上なら先に多項式の割り算をします。真分数になった後、分母を実数範囲で一次因子と既約二次因子に分解します。
という型が必要です。ここで$q$は実数の根を持たない二次式です。重複因子では途中の次数を省かず、二次因子の上は一次式まで用意します。標準形はOpenStaxの部分分数分解を参照してください。
解答:重解を含む分母
$A/x+B/(x-1)+C/(x-1)^2$とおき、分母を払うと$x^2+1=A(x-1)^2+Bx(x-1)+Cx$です。$x=0,1$から$A=1,C=2$、$x^2$の係数から$B=0$です。よって
最初から$B=0$と決めることはできません。一般形に含めてから係数比較で判明した値です。各区間$(-\infty,0),(0,1),(1,\infty)$で定数を選びます。
解答:分解より前に割る
$x^3/(x^2+1)=x-x/(x^2+1)$なので、答えは$x^2/2-(1/2)\log(x^2+1)+C$です。分子の次数を下げると、その後は置換積分だけで済みます。
7.三角関数――奇数乗を1個残す
解答
$\sin^3x=(1-\cos^2x)\sin x$と分け、$u=\cos x,\ du=-\sin x\,dx$とします。
偶数乗どうしなら半角公式を使います。例えば$\sin^2x=(1-\cos2x)/2$より、$\int\sin^2x\,dx=x/2-\sin2x/4+C$です。三角恒等式は微分の形を作るために選びます。
8.根号の積分と置換する区間
解答:$x=a\sin t$
$-\pi/2<t<\pi/2$とすれば$\cos t>0$なので、$\sqrt{a^2-x^2}=a\cos t$です。$dx=a\cos t\,dt$より
元に戻して
区間を決めずに$\sqrt{\cos^2t}=\cos t$とするのは誤りです。一般には$|\cos t|$であり、今回の区間の選択が符号を保証しています。
9.発展:半角置換で三角有理式を扱う
これにより、$\sin x,\cos x$の有理式は$t$の有理式になります。ただし$x=(2k+1)\pi$で置換が切れるため、区間ごとに解釈します。便利な一般手段ですが、単純な恒等式で済む問題では計算が長くなることもあります。
解答
半角置換すると$2\int dt/(t^2+3)$なので、
この表示は$((2k-1)\pi,(2k+1)\pi)$ごとに使えます。被積分関数自体は全実数で連続ですが、この逆正接表示は区間の境で分枝の調整が必要です。全実数で連続な原始関数が欲しい場合は、区間ごとの定数をつないで選びます。
10.答えは微分して確認する
積分結果の検算には、微分して元に戻るかを見る方法が最も直接的です。係数・符号・合成関数の内側の微分を重点的に確認します。数値を1点で比較するだけでは関数全体の一致は証明できません。
すべての連続関数が、初等関数の有限個の組合せで書ける原始関数を持つわけではありません。例えば$e^{-x^2}$の原始関数には誤差関数などを使います。初等的な形に到達しないことと、積分が存在しないことは別です。定積分なら級数や数値積分も選択肢になります。
11.方針から選ぶ確認問題8題
- $\int 2x/(1+x^4)\,dx$。
- $\int x\log x\,dx$($x>0$)。
- $\int dx/[x(x+2)]$。
- $\int (2x+1)/(x^2+x+3)\,dx$。
- $\int\cos^3x\,dx$。
- $\int dx/(x^2+4x+8)$。
- $\int\arctan x\,dx$。
- $\int x/\sqrt{x^2+9}\,dx$。
解答と方法
- $u=x^2$の置換で$\arctan(x^2)+C$。
- 部分積分で$(x^2/2)\log x-x^2/4+C$。
- $[1/x-1/(x+2)]/2$と分解して$(1/2)\log|x/(x+2)|+C$、$x\ne0,-2$。
- 分母の微分が分子なので$\log(x^2+x+3)+C$。分母は常に正です。
- $\cos^3x=(1-\sin^2x)\cos x$より$\sin x-\sin^3x/3+C$。
- 平方完成して$(1/2)\arctan((x+2)/2)+C$。
- $u=\arctan x,dv=dx$で$x\arctan x-(1/2)\log(1+x^2)+C$。
- $u=x^2+9$で$\sqrt{x^2+9}+C$。
基本公式・定積分・有理関数の一覧は積分のギャラリーから参照できます。
