積分のギャラリー――不定積分から広義積分まで

積分では、公式を探す前に被積分関数の形を観察すると方針が立ちます。合成関数なら置換、積なら部分積分、有理関数なら割り算と部分分数分解、定積分なら対称性や区間の変換を考えます。このページでは、不定積分の基礎から定積分・広義積分・パラメータを含む積分までを、導出と条件を添えてまとめます。

不定積分:関数の形から選ぶ詳しい解説

解法を選ぶ理由、条件・例外、解答付き演習をまとめました。各解説には、例題の設計や誤答の分岐を説明する「作問者の視点」を設けています。

$\ln$は自然対数、$C$は積分定数です。$\arctan x$は値域$(-\pi/2,\pi/2)$の逆正接関数、$\arcsin x$は値域$[-\pi/2,\pi/2]$の逆正弦関数です。高校範囲から読み進められますが、ガンマ関数などを使う節は大学初年級以降の発展内容です。

1.不定積分と定積分の違い

区間$I$で$F'(x)=f(x)$を満たす$F$を、$f$の原始関数と呼びます。不定積分$\int f(x)\,dx=F(x)+C$は、原始関数の族を表します。一方、連続関数の定積分$\int_a^b f(x)\,dx$は、積分区間で定まる1つの数です。微積分の基本定理により$F(b)-F(a)$で計算できます。

$$\int\frac1x\,dx=\ln|x|+C\qquad(x\ne0).$$

実数の範囲で$x<0$も扱うなら、$\ln x$ではなく$\ln|x|$が必要です。ただし定義域が0で分かれているため、$(-\infty,0)$と$(0,\infty)$では積分定数を別々に取れます。この点は、分母に実数の零点がある有理関数でも同じです。

原始関数の表示が違っていても、同じ区間で微分した結果が一致すれば、差は定数です。逆三角関数の加法公式などで式をまとめるときは、枝の違いによる定数のずれに注意します。

2.積分法を選ぶ早見表

見つけた形候補となる方法例
$f'(x)g(f(x))$$u=f(x)$と置換$\int xe^{x^2}\,dx$
$f'(x)/f(x)$対数へ変換$\int2x/(1+x^2)\,dx$
多項式と指数・三角関数の積多項式を微分する部分積分$\int x^2e^x\,dx$
対数・逆三角関数関数に1を掛けた積として部分積分$\int\ln x\,dx$
分子の次数が分母以上の有理関数先に多項式の割り算$\int x^3/(1+x^2)\,dx$
因数分解できる分母部分分数分解$\int1/(x^2-1)\,dx$
$\sqrt{a^2-x^2}$$x=a\sin\theta$円の面積に関係する積分
$\sqrt{x^2+a^2}$、$\sqrt{x^2-a^2}$三角関数または双曲線関数の置換$x=a\sinh t$など
$\sin x,\cos x$の有理式$t=\tan(x/2)$万能な有理化。場合によっては計算量が増える
対称な定積分$x\mapsto a+b-x$や奇偶性$[0,\pi/2]$上で$\sin,\cos$を入れ替える
パラメータを含む積分パラメータで微分して簡単にする$\int_0^1(x^a-1)/\ln x\,dx$

3.基本的な不定積分20選

表の右辺にはすべて積分定数$C$を加えます。各式は被積分関数が連続な区間で使います。表中の$a$は正、$k$は0でない実数です。

番号被積分関数$f(x)$原始関数$F(x)$条件
I01$x^\alpha$$x^{\alpha+1}/(\alpha+1)$$\alpha\ne-1$。一般の実数$\alpha$では$x>0$
I02$1/x$$\ln|x|$$x\ne0$
I03$e^{kx}$$e^{kx}/k$すべての実数$x$
I04$a^x$$a^x/\ln a$$a\ne1$。$a=1$なら原始関数は$x$
I05$\sin(kx)$$-\cos(kx)/k$すべての実数$x$
I06$\cos(kx)$$\sin(kx)/k$すべての実数$x$
I07$1/\cos^2x$$\tan x$$\cos x\ne0$
I08$1/\sin^2x$$-\cot x$$\sin x\ne0$
I09$\tan x$$-\ln|\cos x|$$\cos x\ne0$
I10$\cot x$$\ln|\sin x|$$\sin x\ne0$
I11$1/\cos x$$\ln|\sec x+\tan x|$$\cos x\ne0$、$\sec x=1/\cos x$
I12$1/(a^2+x^2)$$a^{-1}\arctan(x/a)$$a>0$
I13$1/(x^2-a^2)$$\dfrac1{2a}\ln\left|\dfrac{x-a}{x+a}\right|$$x\ne\pm a$
I14$1/\sqrt{a^2-x^2}$$\arcsin(x/a)$$|x|<a$
I15$1/\sqrt{x^2+a^2}$$\ln(x+\sqrt{x^2+a^2})$すべての実数$x$。対数の中は正
I16$1/\sqrt{x^2-a^2}$$\ln|x+\sqrt{x^2-a^2}|$$|x|>a$
I17$\ln x$$x\ln x-x$$x>0$
I18$\arctan x$$x\arctan x-\frac12\ln(1+x^2)$すべての実数$x$
I19$1/[x\ln x]$$\ln|\ln x|$$x>0,\ x\ne1$
I20$f'(x)/f(x)$$\ln|f(x)|$$f$は微分可能で0にならない

公式を使った後は、右辺を微分して係数・符号・合成関数の微分を確認します。例えばI12は$\frac{d}{dx}\{a^{-1}\arctan(x/a)\}=a^{-2}/(1+x^2/a^2)=1/(a^2+x^2)$です。

4.置換積分――内側の微分を探す

$u=g(x)$とおいたら、$du=g'(x)\,dx$まで書き、被積分関数と微分を同時に置き換えます。定積分なら端点も$u$の値に直します。

$$\int_0^1\frac{2x}{1+x^2}\,dx =\int_1^2\frac{du}{u}=\ln2.$$
例題 $\int x\sqrt{1+x^2}\,dx$を求めてください。
解答

$u=1+x^2,\ du=2x\,dx$なので、$\frac12\int u^{1/2}\,du=\frac13u^{3/2}+C$です。元の変数へ戻して$\frac13(1+x^2)^{3/2}+C$となります。

不定積分の置換では、最後に原始関数を$x$の式へ戻します。定積分で端点を変えた後は、元の$x$の端点を再利用しないようにします。置換に逆関数を使う場合は、必要に応じて単調な区間へ分割します。

5.部分積分――微分すると簡単になる方を選ぶ

$$\int u(x)v'(x)\,dx=u(x)v(x)-\int u'(x)v(x)\,dx.$$

多項式と指数関数の積では多項式を微分する側に置きます。対数や逆三角関数は、1との積と考えると使えます。

$$\int x^2e^x\,dx=e^x(x^2-2x+2)+C,$$ $$\int\ln x\,dx=x\ln x-x+C\qquad(x>0).$$

同じ積分が戻ってきたら、方程式として解く

$$\int e^{ax}\cos bx\,dx= \frac{e^{ax}(a\cos bx+b\sin bx)}{a^2+b^2}+C,$$ $$\int e^{ax}\sin bx\,dx= \frac{e^{ax}(a\sin bx-b\cos bx)}{a^2+b^2}+C.$$

ここでは$a,b$は実数で、同時に0ではありません。2回の部分積分で元の積分が再登場するため、それを左辺へ移して解きます。複素指数関数を使う場合は$\int e^{(a+ib)x}\,dx$の実部・虚部からも得られます。

6.有理関数――割り算、因数分解、部分分数

有理関数は多項式の比です。分子の次数が分母以上なら、先に割り算して多項式と真分数に分けます。その後、実数の範囲で分母を一次因子と既約二次因子へ分解します。

$$\frac{x^3}{x^2+1}=x-\frac{x}{x^2+1},\qquad \int\frac{x^3}{x^2+1}\,dx=\frac{x^2}{2}-\frac12\ln(1+x^2)+C.$$

重なった因子は、各べきの項を用意する

例えば$(x-a)^3(x^2+1)$が分母なら、$A/(x-a)+B/(x-a)^2+C/(x-a)^3+(Dx+E)/(x^2+1)$という形を用意します。二次因子の分子は定数だけでは足りず、一次式にするのが原則です。

例題 $\int1/[x(x+1)]\,dx$を求めてください。
解答

$1/[x(x+1)]=1/x-1/(x+1)$より、$\ln|x|-\ln|x+1|+C$です。区間は$(-\infty,-1),(-1,0),(0,\infty)$に分かれ、それぞれで積分定数を選べます。

二次式の分母は、その微分と残りに分ける

例題 $\int(2x+3)/(x^2+2x+5)\,dx$を求めてください。
解答

分子を$(2x+2)+1$に分けます。前半は対数、後半は平方完成$x^2+2x+5=(x+1)^2+4$により逆正接です。答えは$\ln(x^2+2x+5)+\frac12\arctan((x+1)/2)+C$です。分母は常に正です。

7.既存の6系統を、漸化式でまとめる

$m=2,3,4$、$\sigma=\pm1$として$I_n^{(m,\sigma)}=\int x^n/(x^m+\sigma)\,dx$を考えます。$n$は整数です。各式は積分定数の差を除いて書きます。

$$I_n^{(m,\sigma)} =\frac{x^{n-m+1}}{n-m+1}-\sigma I_{n-m}^{(m,\sigma)} \qquad(n\ge m).$$

理由は$x^n/(x^m+\sigma)=x^{n-m}-\sigma x^{n-m}/(x^m+\sigma)$です。$0\le n<m$の原始関数を用意すれば、すべての非負整数$n$へ展開できます。負の$n$には次を使います。

$$I_{-1}^{(m,\sigma)} =\sigma\left(\ln|x|-\frac1m\ln|x^m+\sigma|\right)+C,$$ $$I_n^{(m,\sigma)} =\sigma\left(\frac{x^{n+1}}{n+1}-I_{n+m}^{(m,\sigma)}\right) \qquad(n\le-2).$$

負の$n$では$x=0$も定義域から除きます。実数での対数の絶対値を補い、基本形と$n=-6,\ldots,10$の一覧を各個別記事に整理しています。

代表例:$x^4+1$の分母

$$x^4+1=(x^2+\sqrt2x+1)(x^2-\sqrt2x+1).$$

どちらの二次式も常に正です。部分分数分解して積分すると

$$\begin{aligned} \int\frac{dx}{x^4+1} ={}&\frac1{4\sqrt2}\ln\frac{x^2+\sqrt2x+1}{x^2-\sqrt2x+1}\\ &+\frac1{2\sqrt2}\{\arctan(\sqrt2x+1)+\arctan(\sqrt2x-1)\}+C \end{aligned}$$

です。逆正接の和を1つにまとめると区間によって$\pi$の補正が必要になるため、この表示では和のまま残しています。全実数上で滑らかな原始関数として使えます。

8.三角関数・根号を含む積分

三角関数のべきは、奇数・偶数で方法を分ける

$\sin^m x\cos^n x$で$m,n$が非負整数なら、$m$が奇数のときは$\sin x\,dx$を残して$u=\cos x$、$n$が奇数なら$\cos x\,dx$を残して$u=\sin x$を試します。両方偶数なら$\sin^2x=(1-\cos2x)/2$などの半角公式を使います。

$$\int\sin^3x\cos^2x\,dx=-\frac{\cos^3x}{3}+\frac{\cos^5x}{5}+C,$$ $$\int\sin^2x\,dx=\frac x2-\frac{\sin2x}{4}+C.$$

半角置換で三角有理式を有理関数へ変える

$$t=\tan\frac x2,\quad \sin x=\frac{2t}{1+t^2},\quad \cos x=\frac{1-t^2}{1+t^2},\quad dx=\frac{2\,dt}{1+t^2}.$$

この置換は三角関数の有理式を有理関数に変えます。ただし$x=(2k+1)\pi$では$t$が定義されないため、その点をまたぐ定積分は区間を分けます。まず簡単な置換や対称性を探し、それで難しい場合に使うと計算量を抑えられます。

根号は平方関係を持つ関数で置換する

$$\int\sqrt{a^2-x^2}\,dx= \frac12\left(x\sqrt{a^2-x^2}+a^2\arcsin\frac xa\right)+C,\quad |x|<a,$$ $$\int\sqrt{x^2+a^2}\,dx= \frac12\left(x\sqrt{x^2+a^2}+a^2\ln(x+\sqrt{x^2+a^2})\right)+C,$$ $$\int\sqrt{x^2-a^2}\,dx= \frac12\left(x\sqrt{x^2-a^2}-a^2\ln|x+\sqrt{x^2-a^2}|\right)+C,\quad |x|>a.$$

ここでは$a>0$です。最初の式は$x=a\sin\theta$として$\cos\theta\ge0$となる区間を選び、$a^2\cos^2\theta$を積分します。残りの2式は、部分積分で元の積分を再登場させ、I15・I16を使っても導けます。

9.定積分の対称性と区間変換

反転$x\mapsto a+b-x$

$$\int_a^b f(x)\,dx=\int_a^b f(a+b-x)\,dx.$$
例題 $\int_0^{\pi/2}\sin x/(\sin x+\cos x)\,dx$を求めてください。
解答

$x\mapsto\pi/2-x$で分子が$\cos x$に変わります。元の式と足すと$2I=\int_0^{\pi/2}1\,dx=\pi/2$なので$I=\pi/4$です。分母は区間内で正であり、積分可能です。

奇関数・偶関数

積分可能な奇関数なら$\int_{-a}^a f(x)\,dx=0$、偶関数なら$2\int_0^a f(x)\,dx$です。原点で発散する関数を、奇関数だからという理由だけで0にすることはできません。

逆数置換$x=1/t$

$$\int_0^\infty f(x)\,dx=\int_0^\infty\frac{f(1/t)}{t^2}\,dt$$

が、両辺の広義積分が適切に収束するときに成立します。例えば$\int_0^\infty dx/(1+x^4)=\int_0^\infty x^2\,dx/(1+x^4)$です。0付近と無限遠の収束を確認してから置換します。

10.広義積分――発散点ごとに分ける

無限区間や被積分関数が非有界になる端点を扱うときは、極限で定義する広義積分を使います。内部に特異点$c$がある場合、$\int_a^c f$と$\int_c^b f$がそれぞれ収束することが必要です。

積分収束条件理由
$\int_1^\infty x^{-p}\,dx$$p>1$無限遠の減衰
$\int_0^1 x^{-p}\,dx$$p<1$原点での特異性
$\int_0^1|\ln x|^q\,dx$$q\ge0$なら収束$x=e^{-t}$により指数減衰へ
$\int_0^\infty\sin x/x\,dx$条件収束振動による打消し。絶対値の積分は発散

$\int_{-1}^1dx/x$は通常の広義積分として発散します。左右を同じ幅だけ除いて同時に極限を取る「コーシーの主値」は0ですが、通常の広義積分とは別の定義です。

11.定積分・広義積分のギャラリー25選

条件を表の右端に記します。ガンマ関数$\Gamma$とベータ関数$B$は次節で定義します。

番号積分と値条件・解法
D01$\displaystyle\int_0^1x^a\,dx=\frac1{a+1}$$a>-1$
D02$\displaystyle\int_0^1x^a(-\ln x)^m\,dx=\frac{m!}{(a+1)^{m+1}}$$a>-1$、整数$m\ge0$
D03$\displaystyle\int_0^1x^m(1-x)^n\,dx=\frac{m!n!}{(m+n+1)!}$整数$m,n\ge0$
D04$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^2x\,dx=\frac\pi4$半角公式
D05$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^3x\,dx=\frac23$$u=\cos x$
D06$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\sin^m x\cos^n x\,dx=\frac12B\!\left(\frac{m+1}2,\frac{n+1}2\right)$$m,n>-1$
D07$\displaystyle\int_0^\infty e^{-ax^2}\,dx=\frac{\sqrt\pi}{2\sqrt a}$$a>0$
D08$\displaystyle\int_0^\infty x^{s-1}e^{-ax}\,dx=\frac{\Gamma(s)}{a^s}$$a,s>0$
D09$\displaystyle\int_0^\infty\frac{dx}{1+x^2}=\frac\pi2$逆正接
D10$\displaystyle\int_0^\infty\frac{dx}{1+x^4}=\frac\pi{2\sqrt2}$D11または部分分数分解
D11$\displaystyle\int_0^\infty\frac{x^{p-1}}{1+x^q}\,dx=\frac\pi q\csc\frac{\pi p}{q}$$q>0,\ 0<p<q$
D12$\displaystyle\int_0^\infty\frac{e^{-ax}-e^{-bx}}x\,dx=\ln\frac ba$$a,b>0$
D13$\displaystyle\int_0^\infty e^{-ax}\cos bx\,dx=\frac a{a^2+b^2}$$a>0,\ b\in\mathbb R$
D14$\displaystyle\int_0^\infty e^{-ax}\sin bx\,dx=\frac b{a^2+b^2}$$a>0,\ b\in\mathbb R$
D15$\displaystyle\int_0^\infty\frac{\sin x}{x}\,dx=\frac\pi2$条件収束。ディリクレ積分
D16$\displaystyle\int_0^\infty\left(\frac{\sin x}{x}\right)^2dx=\frac\pi2$絶対収束。部分積分
D17$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\ln(\sin x)\,dx=-\frac\pi2\ln2$反転と倍角公式
D18$\displaystyle\int_0^{\pi/2}\ln(\cos x)\,dx=-\frac\pi2\ln2$D17を反転
D19$\displaystyle\int_0^1\frac{-\ln x}{1-x}\,dx=\frac{\pi^2}{6}$非負項の等比展開
D20$\displaystyle\int_0^1\frac{\ln x}{1+x}\,dx=-\frac{\pi^2}{12}$級数展開と絶対積分可能性
D21$\displaystyle\int_0^1\frac{\ln(1+x)}x\,dx=\frac{\pi^2}{12}$対数の級数展開
D22$\displaystyle\int_0^1\ln x\ln(1-x)\,dx=2-\frac{\pi^2}{6}$級数のS07と対応
D23$\displaystyle\int_0^1\frac{\arctan x}x\,dx=G$$G$はカタラン定数
D24$\displaystyle\int_0^1\frac{x^a-1}{\ln x}\,dx=\ln(a+1)$$a>-1$
D25$\displaystyle\int_0^\infty\frac{\ln(1+b^2x^2)}{1+x^2}\,dx=\pi\ln(1+b)$$b\ge0$
D02・D03・D13・D14の導出

D02は$x=e^{-t}$により$\int_0^\infty t^m e^{-(a+1)t}\,dt$となり、部分積分を$m$回繰り返すと$m!/(a+1)^{m+1}$です。$m=0$はD01と一致します。

D03は$I_{m,n}=\int_0^1x^m(1-x)^n\,dx$として、$m\ge1$なら部分積分から$I_{m,n}=mI_{m-1,n+1}/(n+1)$です。$I_{0,k}=1/(k+1)$へ帰着すると公式が出ます。D13とD14は前節の指数関数と三角関数の原始関数を使い、$a>0$によって無限遠の境界項が0になることを確認します。

D16の導出

まず$\varepsilon$から$R$まで部分積分します。境界項$-\sin^2x/x$は$\varepsilon\downarrow0,\ R\to\infty$で0になるので、$\int_0^\infty\sin^2x/x^2\,dx=\int_0^\infty\sin(2x)/x\,dx$です。$t=2x$に置換すればD15と同じ積分になります。左辺は0付近で有界、無限遠で$1/x^2$以下なので絶対収束します。

D19~D23の導出

D19は$1/(1-x)=\sum_{n\ge0}x^n$に$-\ln x$を掛けます。非負項なので和と積分を交換でき、D02より$\sum_{n\ge0}1/(n+1)^2=\pi^2/6$です。

D20では$1/(1+x)=\sum_{n\ge0}(-1)^nx^n$を使います。各項の絶対値の積分の和が$\sum1/(n+1)^2<\infty$であるため交換でき、$-\sum_{n\ge0}(-1)^n/(n+1)^2=-\pi^2/12$です。D21では$\ln(1+x)$の展開を$x$で割り、同じ級数が正の符号で現れます。

D22は$-\ln(1-x)=\sum_{n\ge1}x^n/n$を使い、$\sum_{n\ge1}1/[n(n+1)^2]=2-\pi^2/6$となります。D23では$\arctan x/x=\sum_{n\ge0}(-1)^nx^{2n}/(2n+1)$を積分し、$\sum_{n\ge0}(-1)^n/(2n+1)^2=G$を得ます。いずれも絶対値を積分した級数が収束するため交換ができます。

12.ウォリス積分と対数三角積分

$W_n=\int_0^{\pi/2}\sin^n x\,dx$とおくと、整数$n\ge2$で部分積分から

$$W_n=\frac{n-1}{n}W_{n-2},\qquad W_0=\frac\pi2,\quad W_1=1.$$

となります。従って$k\ge0$で

$$W_{2k}=\frac{(2k)!}{2^{2k}(k!)^2}\frac\pi2,\qquad W_{2k+1}=\frac{2^{2k}(k!)^2}{(2k+1)!}.$$

例えば$W_4=3\pi/16$、$W_5=8/15$です。余弦のべきも$x\mapsto\pi/2-x$により同じ値になります。

D17の導出:対数の特異点を含んでも計算できる理由

$L=\int_0^{\pi/2}\ln(\sin x)\,dx$とします。原点付近で$\sin x$は$x$と同程度なので、$\ln(\sin x)$は$\ln x$と同程度の特異性しか持たず、積分は収束します。反転により$L=\int_0^{\pi/2}\ln(\cos x)\,dx$。両式を足すと$2L=\int_0^{\pi/2}\ln(\frac12\sin2x)\,dx=-\frac\pi2\ln2+\frac12\int_0^\pi\ln(\sin u)\,du$です。後半は対称性により$L$となるため、$L=-\frac\pi2\ln2$です。

13.ガンマ・ベータ関数で積分をまとめる〔発展〕

$$\Gamma(s)=\int_0^\infty t^{s-1}e^{-t}\,dt\quad(s>0),$$ $$B(p,q)=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}\,dt =\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)}\quad(p,q>0).$$

$\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)$、$\Gamma(1)=1$なので、非負整数$n$では$\Gamma(n+1)=n!$です。定義と積分表示はNIST DLMF §5.9、ベータ積分とガンマ関数との関係は§5.12にまとめられています。

D06では$t=\sin^2x$によりベータ積分に帰着します。D11ではまず$t=x^q$と置き、次に$u=t/(1+t)$とすれば$\frac1qB(p/q,1-p/q)$です。反射公式$\Gamma(z)\Gamma(1-z)=\pi/\sin(\pi z)$を使うと表の値になります。条件$0<p<q$は、原点と無限遠の両方で収束するための条件です。

D07の導出:ガウス積分

$J=\int_0^\infty e^{-x^2}\,dx$とします。非負関数なので積分順序を交換でき、$J^2=\int_0^\infty\int_0^\infty e^{-(x^2+y^2)}\,dx\,dy$です。第1象限で極座標$x=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta$に変換し、面積要素$r\,dr\,d\theta$を含めると$J^2=\int_0^{\pi/2}d\theta\int_0^\infty e^{-r^2}r\,dr=\pi/4$。$J>0$より$J=\sqrt\pi/2$です。一般の$a>0$は$u=\sqrt a\,x$で求まります。

14.パラメータ微分で積分を解く〔発展〕

積分の中にパラメータ$a$がある場合、$a$で微分した方が簡単な積分になることがあります。得られた導関数を$a$で積分し、既知のパラメータ値から定数を決めます。交換には、パラメータの近傍で導関数を可積分な関数によって抑えられることなどを確認します。

D24の導出

$F(a)=\int_0^1(x^a-1)/\ln x\,dx$とすると、$a>-1$で$F'(a)=\int_0^1x^a\,dx=1/(a+1)$です。$a$を$(-1,\infty)$のコンパクト区間に限れば$x^a$は可積分な$x^\alpha$で抑えられ、微分と積分を交換できます。$F(0)=0$から$F(a)=\ln(a+1)$です。$x=1$での見かけの$0/0$は極限値$a$で連続に補えます。

D12の導出:フルラニ型積分

$a>0$を固定し、$F(b)=\int_0^\infty(e^{-ax}-e^{-bx})/x\,dx$とします。$F'(b)=\int_0^\infty e^{-bx}\,dx=1/b$、$F(a)=0$なので$F(b)=\ln(b/a)$です。原点では分子が$(b-a)x+O(x^2)$なので商は有界で、無限遠では指数減衰します。

D25の導出

$F(b)=\int_0^\infty\ln(1+b^2x^2)/(1+x^2)\,dx$とします。$b>0$で微分し、部分分数分解すると

$$F'(b)=\int_0^\infty\frac{2bx^2}{(1+x^2)(1+b^2x^2)}\,dx=\frac{\pi}{1+b}.$$

$b=1$でも連続に同じ値を取ります。$b\downarrow0$では、例えば$0\le b\le1$で被積分関数を$\ln(1+x^2)/(1+x^2)$により抑えられるため、優収束定理から$F(b)\to0$です。従って$F(b)=\pi\ln(1+b)$となります。

D15の導出:減衰因子を入れてから外す

$F(a)=\int_0^\infty e^{-ax}\sin x/x\,dx$を$a>0$で考えます。$F'(a)=-1/(1+a^2)$、$F(a)\to0$($a\to\infty$)から$F(a)=\arctan(1/a)$です。最後に$a\downarrow0$とすると$\pi/2$です。

減衰因子を外した極限が元の広義積分に一致することも必要です。$\sin x$の原始関数が有界で、$e^{-ax}/x$が単調減少することから、$R$以降の尾部は$a\ge0$に一様に定数倍の$1/R$で抑えられます。有限区間での極限とこの尾部評価を組み合わせると一致が示せます。

15.初等関数で書けない積分と、数値積分

$e^{-x^2}$、$\sin x/x$、$1/\ln x$などは、一般に初等関数だけでは原始関数を表せません。積分が存在しないという意味ではなく、指数・対数・三角関数などの有限回の組合せでは表せないという意味です。

$$\operatorname{erf}(x)=\frac2{\sqrt\pi}\int_0^x e^{-t^2}\,dt,\qquad \operatorname{Si}(x)=\int_0^x\frac{\sin t}{t}\,dt.$$

これらの特殊関数、べき級数、数値積分を目的に応じて使います。原始関数が初等関数で書けなくても、D07のように特定区間での定積分が簡単な定数になることがあります。

台形公式とシンプソン公式

$[a,b]$を幅$h=(b-a)/N$で等分し、$x_j=a+jh$とします。合成台形公式は

$$T_N=h\left(\frac{f(a)+f(b)}2+\sum_{j=1}^{N-1}f(x_j)\right).$$

$f$が2回連続微分可能なら、誤差は$\frac{b-a}{12}h^2\max|f”|$以下です。偶数$N$に対する合成シンプソン公式は

$$S_N=\frac h3\left[f(a)+f(b)+4\sum_{\substack{1\le j<N\\j\ {\rm odd}}}f(x_j) +2\sum_{\substack{2\le j<N\\j\ {\rm even}}}f(x_j)\right].$$

$f$が4回連続微分可能なら、誤差は$\frac{b-a}{180}h^4\max|f^{(4)}|$以下です。端点で発散する関数や強く振動する関数へ、これらの評価をそのまま適用しないようにします。特異点で区間を分ける、変数変換で特異性を弱める、振動に対応した方法を使うなどの処理が必要です。

16.確認問題

  1. $\int x/(x^2+4)\,dx$。
  2. $\int x\ln x\,dx$($x>0$)。
  3. $\int_0^1x/(1+x^2)\,dx$。
  4. $\int_0^\pi x\sin x\,dx$。
  5. $\int_0^\infty x/(1+x^4)\,dx$。
  6. $\int_0^1x^2\ln x\,dx$。
  7. $\int_0^{\pi/2}\sin^4x\,dx$。
  8. $\int_{-1}^1 1/x^2\,dx$の収束・発散。
解答
  1. $\frac12\ln(x^2+4)+C$。分母の微分を使う置換積分です。
  2. $\frac{x^2}{2}\ln x-\frac{x^2}{4}+C$。$u=\ln x,\ dv=x\,dx$の部分積分です。
  3. $\frac12\ln2$。
  4. 部分積分から$[-x\cos x+\sin x]_0^\pi=\pi$。
  5. $t=x^2$により$\frac12\int_0^\infty dt/(1+t^2)=\pi/4$。
  6. D02で$a=2,m=1$、対数の符号を戻して$-1/9$。
  7. $W_4=(3/4)(1/2)(\pi/2)=3\pi/16$。
  8. 0で分ける必要があり、$\int_0^1x^{-2}\,dx$が発散するので全体も発散します。原始関数$-1/x$へ端点$\pm1$だけを代入する方法は使えません。