【整式の割り算】剰余の定理の使いどころ

剰余の定理は整式同士の除算において活躍する重要な定理です。今回は剰余の定理の上手い使い方について複数の例題で確認していきます。


コンテンツ

整式同士の割り算

割る式が重解を持つ場合
 (微分or二項定理による次数下げ)

代入計算への応用

 

まず、剰余の定理とは以下のようなものでした。

剰余の定理

 

整式 P(x)xα で割ったときの余りは P(α) に等しい

 

剰余の定理は計算を適度にサボりたい人に積極的に使って欲しい定理です。以下、例題で確認していきましょう!

 

 整式同士の割り算

整式同士の割り算では剰余の定理が使えます。ただし、次のように次数が比較的低いものであれば筆算で求めた方が早いことが多いです。

例題①

整式 3x5x4+2x3+x2+5x+1x2+1 で割った余りとして得られる整式を求めよ。

単純な解法はそのまま割り算を実行する方法でしょう。

解答例

 

 

これより、余りは 6x1 と求められる。

※割り算の筆算は係数のみ記入して行った方が時間の節約になります。時々、3x5などといちいち書いて丁寧に(?)計算している人を見かけますが、正直に言ってタイムロスにしかなりません。

この問題を剰余の定理を使って解くと次のようになります。

別解

整式を2次式で割った余りは1次以下の整式となるから、これを ax+b と置き、商をQ(x)をすれば3x5x4+2x3+x2+5x+1=(x2+1)Q(x)+(ax+b)()と表せる。

 

ここで、方程式 x2+1=0 の解は x=±i なので、これらの値を()に代入する。x=i とすると 1+6ix=i とすると 16i となるから、{ai+b=1+6ia(i)+b=16iが成り立つ。この連立方程式を解いて a=6b=1 を得るので、求める整式は 6x1 である。

例題①のようなケースでは筆算でも余りが求められますが、それは数回の手続きで計算が済む場合に限られます。

これがもし「整式 3x25+1x21 で割った余りを求めよ」とかだったらとても計算する気にはなりませんよね。そういうときにこそ剰余の定理を使います。


例題②

整式 3x25+1x21 で割った余りとして得られる整式を求めよ。

解答例

整式を2次式で割った余りは1次以下の整式となるから、これを ax+b と置き、商をQ(x)をすれば3x25+1=(x21)Q(x)+ax+b()と表せる。

 

ここで、方程式 x21=0 の解は x=±1 なので、これらの値を()に代入する。x=1 とすると 4x=1 とすると 2 となるから、{a+b=4a+b=2が成り立つ。この連立方程式を解いて a=3b=1 を得るので、求める整式は 3x+1 である。

余りのみが欲しい場合はこのように剰余の定理が非常に有効です。


また、次数が文字で表されている場合は筆算が使えません。こういうタイプの問題には剰余の定理が威力を発揮します。

例題③

n を正の整数とするとき、整式 xn+xn1+1x21 で割った余りとして得られる整式を求めよ。

解答例

整式を2次式で割った余りは1次以下の整式となるから、これを ax+b と置き、商をQ(x)をすればxn+xn1+1=(x21)Q(x)+ax+b()と表せる。

 

ここで、方程式 x21=0 の解は x=±1 なので、これらの値を()に代入する。x=1 とすると1n+1n1+1=3となり、x=1 とすると(1)n+(1)n1+1=(1+1)(1)n1=1となるから、{a+b=3a+b=1が成り立つ。この連立方程式を解いて a=1b=2 を得るので、求める整式は x+2 である。


nの偶奇で場合分けが必要な問題も考えられます。

例題④

n を正の整数とするとき、整式 xn+2xn1+1x21 で割った余りとして得られる整式を求めよ。

解答例

整式を2次式で割った余りは1次以下の整式となるから、これを ax+b と置き、商をQ(x)をすればxn+2xn1+1=(x21)Q(x)+ax+bと表せる。

 

ここで、方程式 x21=0 の解は x=±1 なので、これらの値をに代入する。x=1 とすると1n+21n1+1=4となり、x=1 とすると(1)n+2(1)n1+1となる。

 

(ア)nが偶数のとき、0となるから{a+b=4a+b=0が成り立つ。この連立方程式を解いて a=b=2 を得るので、求める整式は 2x+2 である。

 

(イ)nが奇数のとき、2となるから{a+b=4a+b=2が成り立つ。この連立方程式を解いて a=1b=3 を得るので、求める整式は x+3 である。

 

 割る式が重解を持つ場合

次のようなケースでは剰余の定理をどのように使えば良いでしょうか?

例題⑤

整式 x5x2+1x22x+1 で割った余りとして得られる整式を求めよ。

今まで、剰余の定理を使うときは割る式の根(解)を代入して求めていました。しかしこの場合はx22x+1=(x1)2なので代入できる値は x=1 の1種類しかありません。対して、余りは1次式 ax+b となり未知数が2個なので、このままでは解が不定になってしまいます。

こういうときは微分を使います

解答例

整式を2次式で割った余りは1次以下の整式となるから、これを ax+b と置き、商をQ(x)をすればx5x2+1=(x1)2Q(x)+ax+b()と表せる。また、()の両辺をxで微分すると5x42x=2(x1)Q(x)+a()を得る。

そこで x=1()および()に代入すると、{a+b=1a=3となる。この連立方程式を解いて a=3b=2 を得るので、求める整式は 3x2 である。


先ほどは導関数を考えることによって条件式の情報を増やすことができました。

もし微分を習っていないのであれば、二項定理や置き換えを用いて余りの部分を取り出すことになります。

例題⑥

整数nn2 を満たすとする。整式 (x+1)nx22x+1 で割った余りとして得られる整式を求めよ。

解答例

まずx22x+1=(x1)2であることに注意する。二項定理より、(x+1)n={(x1)+2}n=nC0(x1)n+nC1(x1)n12++nCn2(x1)22n2+nCn1(x1)2n1+nCn2nとなる。この紫色部分はすべて(x1)2を因数に含むから、整式 (x+1)nx22x+1 で割った余りはnCn1(x1)2n1+nCn2nすなわちn2n1x(n2)2n1と求められる。

t=x2 などと置いても全く同様の議論で解決可能です。なお、上で得た結果は n=0,1 の場合についても成り立っています。

 

 代入計算への応用

時々、次のような計算をしなければならない問題に遭遇します。

例題⑦

整式 f(x)=x5+2x3+x2+1 に対して f(1+3) の値を求めよ。

そのまま x=1+3 を代入して計算してもできないことはありませんが、計算が面倒ですしケアレスミスも不安です。そういうときに剰余の定理が活躍します。根号が邪魔なので少し工夫します。x1=3より、両辺を2乗すると(x1)2=3 x22x2=0()を得ます。方程式()x=1+3 を解にもつので、これで与式を割った余りに x=1+3 を代入すれば所望の値が得られます。

実際、x5+2x3+x2+1=(x3+2x2+8x+21)(x22x2)+58x+43となるので、これに x=1+3 を代入すれば赤色部分は0になり、青色部分のみを計算すればよくなります。

これにより、ほとんど手間を掛けずにf(1+3)=58(1+3)+43=101+583()と求めることができます。


 

冒頭の方でも述べましたが、剰余の定理は計算を適度にサボりたい人に積極的に使って欲しい定理です。急所を把握して省エネ計算術を磨きましょう!

ここに掲載した他にも剰余の定理の上手い使いどころをご存知の方はコメント欄にてご紹介頂けると幸いです。

(2022/01/11追記)記事中の問題設定・解答例の誤りを修正。表現を一部変更。

“【整式の割り算】剰余の定理の使いどころ” への2件の返信

  1. (x-1)^2で割った剰余を二項定理を使って求めるところで
    (n-1)で展開するところが(n-2)で展開しています。

    1. むつ さん

      コメントありがとうございます。
      ご指摘の箇所について確認したところ、確かに誤りでしたので内容を修正しました。
      ご協力に感謝いたします。

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