二項係数を4で割った余り(2021年東京大学前期共通数学第4問)

今年も2次試験のシーズンになりました。今回は東大の整数問題を扱います。論証が難しい問題でした。


 

以下の問いに答えよ。

(1)正の奇数KLと正の整数ABKA=LB を満たしているとする。K4で割った余りがL4で割った余りと等しいならば、A4で割った余りはB4で割った余りと等しいことを示せ。

(2)正の整数aba>b を満たしているとする。このとき、A=4a+1C4b+1B=aCbに対して KA=LB となるような正の奇数KLが存在することを示せ。

(3)abは(2)の通りとし、さらに ab2で割り切れるとする。4a+1C4b+14で割った余りはaCb4で割った余りと等しいことを示せ。

(4)2021C374で割った余りを求めよ。

(2021年東京大学 前期共通 第4問)

 

 考え方

二項係数に関連する整数問題は3年ぶりで、2015年や2018年の問題と同様に分子と分母の偶奇性に着目させる出題でした。本問は誘導設問が3つも付いています。(2)と(3)の論証が難しいでしょうか。論証の際は二項係数を書き下して考えるのが肝です。4で割った余りに注目して4a+1C4b+1の中からaCbを炙り出すことができるかがポイントになります。先回りして(4)だけ解答することも一応可能ですが…。


解答例

 

(1)

klを整数とし、KL4で割った余りを r=1,3)として K=4k+rL=4l+r と置く。

 

KA=LB が成り立つとき、(4k+r)A=(4l+r)B 4(kAlB)=r(BA)となるが、r4の倍数でないので、BA4の倍数であることが必要である。これより、A4で割った余りはB4で割った余りと等しい。

 

 

(2)

Aの分子・分母を書き下したときに、分子・分母に4の倍数が現れる項とそれ以外を分けて表すとA=4a+1C4b+1=4a+14b+14a4b4a14b14(ab)+224(ab)+11=4a4b4(a1)4(b1)4(a2)4(b2)4(ab+1)44a+14b+14a14b12a12b14a34b34a54b52a32b32(ab)+114(ab)+11となる。

 

ここで4a4b4(a1)4(b1)4(a2)4(b2)4(ab+1)4=aba1b1a2b2ab+11=aCb (=B)である。また、4a+14b+14a14b12a12b14a34b34a54b52a32b32(ab)+114(ab)+11=(4a+1)(4a1)(2a1){4(ab)+1}(4b+1)(4b1)(2b1)1について分母をK、分子をLと置くと、KLはともに奇数であり、4a+1C4b+1=aCbLKとなるから、A=4a+1C4b+1B=aCbに対して KA=LB となるような正の奇数KLが存在することが示される。

 

 

(3)

まず、L=(4a+1)(4a1)(2a1)×(4a3)(4a5)(2a3)×(4a4b+5)(4a4b+3)(2a2b+1)×(4a4b+1)K=(4b+1)(4b1)(2b1)×(4b3)(4b5)(2b3)×5×3×1×1と表せることに注意する。

 

任意の整数rについて 4a+r4で割った余りと 4b+r4で割った余りは等しい。

 

また、正の整数abについて ab2で割り切れるとき、(2a+r)(2b+r)=2(ab)4の倍数となるから、2a+r4で割った余りと 2b+r4で割った余りは等しい。

 

以上のことから、KLの各項を比較することにより、K4で割った余りとL4で割った余りは等しいことが分かる。

 

これと、(2)よりK4a+1C4b+1=LaCbが成り立つこと、およびKLがともに正の奇数であることから(1)の結果を用いて、4a+1C4b+14で割った余りはaCb4で割った余りに等しいことが示される。

 

 

(4)

(3)の結果を利用して、2021C37505C9(mod4)126C2(mod4)=6312531(mod4)=3となるから、2021C374で割った余りは3である。

 


 

本問は論証の手掛かりが掴みにくく、試験場で取り組むには難しい問題だったのではないかと思います。ポイントとなるのは4a+1C4b+1の分子・分母を書き下して考える部分です。「A=4a+1C4b+1B=aCbに対して KA=LB となるような正の奇数KLが存在する」ということは、AA=LK×Bという形で表せることに相当します。ここから、Aを書き下してBを炙り出し、LKに当たる分子・分母が奇数の分数を発見できるのではないか、というのが(2)の式変形のモチベーションです。この奇数のペアは積の形で取り出せるので、各要素を4で割った余りについて比較すればK4で割った余りとL4で割った余りは等しいことが言えます。これが(3)の方針です。(4)は前問の結果を利用して計算するだけなので特に問題は無いでしょう。

今年の東大理系数学は特に解析色の強いセットでした。今年も確率の問題が出題されず、理系数学は4年連続で確率分野からの出題がありませんでした。これは東大数学の歴史の中でも異例のことです。

最近の東大数学では二項係数を題材にした問題が頻繁に出題されています。関連して、2018年の問題2015年の問題をさらっておくと良いでしょう。整数問題ではありませんが2020年の問題も参考になると思います。

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