今回はセンター数ⅡB対策でもお馴染みの面積公式に関する話題です。
数ⅡBで登場する微分積分という概念ですが、これを学ぶ第一の目的は何と言っても面積・体積を求めることでしょう。これらの計算は科学的・工業的にも欠かせない基本的な数学的操作と言えます。ご存知の通り、微分積分は大学入試においても幅を利かせており、センター試験では数学ⅡBの第2問で取り扱われています。
センター試験というのはまさに時間との闘いです。センター試験による入試制度が始まって以来、年によって多少の変動はありますが、問題量は増加の一途を辿っています。数学に関しても例外ではなく、近年の数学ⅡBにおいては平均点が30~40点代で推移することもありました。
・・・ということで、積分計算に時間が掛かる!という方であれば是非ともマスターしておきたい面積公式を幾つかご紹介しましょう。
16公式:S=|a|6(β−α)3 (α<β)
進学校を自称する高校なら確実に扱うであろう公式が、この「16公式」です。これは以下のような図形の面積を求めたいときに利用できます。
これは放物線と直線の交点のx座標が x=α、x=β (ただし α<β )のときに斜線部の面積SがS=|a|6(β−α)3で表すことができるという公式です。ここでaは放物線の二次の項の係数です(※1)。
(※1:例えば放物線が y=4x2+3x+7 であれば、a=4 です)
また、この公式は放物線同士で囲まれる図形の面積を求めたいときにも利用できます。例えば以下のような場合です。
(②逆方向に凸の2つの放物線によって囲まれる図形の面積)
(③同方向に凸の2つの放物線によって囲まれる図形の面積)
この場合、aに相当する値はこれらの放物線の二次の係数の差となります(※2)。2つの放物線の交点のx座標が x=α、x=β (ただし α<β )のときに斜線部の面積Sは、直線のときと同様にS=|a|6(β−α)3で表すことができます。直線を「二次の係数が0の放物線」と見なせば、寧ろ①のケースは②や③の特殊な場合と考えることもできますね。
(※2:例えば放物線が y=4x2+3x+7 と y=−2x2+x+5 であれば、a=4−(−2)=6 です。引く方を逆にして a=−2−4=−6 としても、面積を求める際にaに絶対値を付けるので、結局は同じです)
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《略証》
放物線の方程式を y=ax2+bx+c、接線の方程式を y=mx+n とする。
∫βα{(mx+n)−(ax2+bx+c)}dx=a∫βα(x−α)(x−β)dx=[a2(x−α)2(x−β)]βα−∫βαa2(x−α)2dx=0−a2∫βα(x−α)2dx=−a2[a3(x−α)3]βα=−a6(β−α)3
∴S=|a|6(β−α)3
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13公式:S=|a|3(β−α)3 (α<β)
続いては16公式に次いで有名な「13公式」です。これは以下のような図形の面積を求めたいときに利用することができます。
(④放物線とその接線とy軸に平行な直線によって囲まれる図形の面積)
あまり使う機会がありませんが、いざというときに役に立つ優れものです。上の図の位置関係で言えば、x=α が「y軸に平行な直線」、x=β が「接点のx座標」です。ここでaは放物線の二次の項の係数です(※1と同様)。
また、仮にy軸に平行な直線部分の長さ(上の図の点線部分の線分)が分かっていれば、16公式と三角形の面積から斜線部の面積を求めることも可能です。端と接点のx座標が分かっていれば、どんな傾きの接線に対してもこの公式を適用することができます。
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《略証》
放物線の方程式を y=ax2+bx+c、接線の方程式を y=mx+n とする。
∫βα{(ax2+bx+c)−(mx+n)}dx=a∫βα(x−β)2dx=[a3(x−β)3]βα=−a3(α−β)3=a3(β−α)3
∴S=|a|3(β−α)3
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112公式:S=|a|12(β−α)3 (α<β)
知る人ぞ知る「112公式」は以下のような図形の面積を求めたいときに利用することができます。
(⑤放物線とその2つの接線によって囲まれる図形の面積)
この112公式は、13公式を2つ組み合わせることで得られます。ただ残念ながら、模試を含めて、センター型の試験では使う機会に巡り合うことがほとんどありません。見た目のエレガントさを鑑賞する類の公式です(笑)。面白いのはその証明で、2つの接線の交点のx座標が、2つの接点の中点のx座標に等しいことを利用します。
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《略証》
放物線(Cとする)の方程式を y=ax2+bx+c、緑色の接線l1の方程式を y=kx+l 、赤色の接線l2の方程式を y=mx+n とすると、接線l1と接線l2の交点のx座標はx=l−nm−kと求められる。
さて、Cとl1を連立して得られる方程式ax2+(b−k)x+(c−l)=0は重解 x=α を持つから a(x−α)2に一致する。係数を比較して、{b−k=−2aαc−l=aα2を得る。l2についても同様にして{b−m=−2aβc−n=aβ2を得る。これより、
l−nm−k=(c−n)−(c−l)(b−k)−(b−m)=aβ2−aα2−2aα−(−2aβ)=β2−α2−2(α−β)=α+β2
となる。故に、
S=|a|3(α+β2−α)3+|a|3(β−α+β2)3=|a|3(β−α2)3+|a|3(β−α2)3=2⋅|a|3⋅23(β−α)3=|a|12(β−α)3
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(コメント)
いずれの公式にしても、直線や接線の式が不要で、放物線の二次の項の係数と交点のx座標だけで面積が表現できるというのが売りです。積分の記号を書いたりする時間が節約できるのは勿論ですが、式の展開や分数が出てくる積分計算を回避してケアレスミスを軽減できるというのが面積公式の魅力です。これらの公式をマスターしておけばセンター数ⅡBの微積分が得点源になること請け合いです。
今度、これらの面積公式を利用できる問題の例などもまとめてみようかと思います。