2022年共通テスト数学ⅠAの整数問題で出題された1次不定方程式の係数は巨大で、規則性を見つけないと容易には解けないよう設計されていました。本稿ではこの問題で出題された方程式の整数解について考察してみます。
の一般解
誘導設問としてという方程式が登場しましたが、実はこれを解くのはそれほど難しくはなく、が奇数の場合、という一般解が求められます。ここでは任意の整数です。
なお、が偶数の場合、この方程式は解をもちません(∵が偶数ならば、左辺が偶数、右辺が奇数となり不合理)。
一般解の導出過程はおよそ以下の通りです。
が奇数のとき、を整数として と表せるので、と式変形できます。下線部はの倍数なので適当な整数によりと表せます。これを式に代入すると という形にできます。ここでは任意の値をとる整数なので、 という整数は(が含まれていますが)に独立な整数となります。そこで と置けばと表せるという寸法です。の値を求めるにはこれを式に代入すればよく、僅かな計算でが得られます。
共通テストの場合は だったので、一般解はと求められます。
の一般解
本問の主眼は指数がに増えたを解くことです。2022年共通テスト第4問の妙味は、 がで割り切れるという事実を用いる点にあります。これは以下の計算によって正当化されます。
先ほど であることを導きました。この両辺を2乗するととなりますから、をで割った余りはと分かります。
また、方程式が成り立っているとすれば、移項によりと変形できるので、をで割った余りもと分かります。
以上のことから、をで割った余りとをで割った余りが等しいので、その差 はで割り切れます。いまは一般の奇数なので、が奇数である限り常にこれが成立する訳です。ここが本問のポイントです。
ここから一般解を導きます。
適当な整数を用いてと置けるので、について整理するととなります。
ここで、をで割った商と余りをそれぞれ、と置いて、 と表すことにします。これをの式に代入すると、と表せます。
ここでを絶対値最小剰余に限定すれば、との値が一意に定まります。さらに と表すことにすると、と表せます。このときは式より、 と求められます。これが方程式の一般解です。
※「絶対値最小剰余」とは、剰余となる整数のうち絶対値が最小となるものを指します。例えば ですが、絶対値最小剰余による表現では となります。名称は知らずとも、の計算で多用している方は多いと思います。
共通テストの場合は だったので、をで割った余りは、つまり ですから、一般解はと求められます。の整数解のうち、が3桁の正の整数で最小になるのは 、つまり のときで、 と求められます。
となるようなとの組が実際に存在するのか心配になるかもしれませんが、以上の式変形はの存在を保証する式と同値なので必要十分です。
※いま、 なので となるためには が必要十分ですが、このとき式より と決まります。また、 のとき式より となります。このように、方程式を満たすが存在することと、方程式を満たすが存在することは同値です。
の一般解一覧
方程式の解を の範囲について示しておきます。
一般解の式からも分かりますが、 という1次方程式の解のオーダーはとなります。これは、ある整数解が見つかったとして、より、適当な整数によりと表せることから理解でき、半ば自明と言えます。
【参考記事】
2022年共通テスト数学ⅠAの解説と雑感
11^5x≡1(mod 2^5)
11×3=33≡1(mod2^5)
に気づけば
x≡3^5=243≡19(mod2^5)
x=19が解になることは代入して計算すれば確認できる。
martha さん
管理人の pencil です。
コメントありがとうございます。
これを5乗して
ところで、この解法は方程式の係数がより高次の冪の場合にも応用可能なところがポイントと言えそうです。例えば6乗の場合は から を得るので、 から が求められます。実際、これは最小の正の整数解です。
一般に、 を正の整数、 を奇数とするとき、中国剰余定理から を満たすような整数 が の範囲にただ一つ存在することが従います。この事実に基づいて に相当する整数を根気よく探せば、任意の冪乗について本問の方程式を解くことができますね。
ご教示に感謝致します。
方程式 の整数解は以下の通りです。