明日起きられる確率は50%?

ご無沙汰しております。管理人のpencilです。

久しぶりの更新ですが、表題から推察される通り雑談回です…。


次のような冗談をたまに(?)聞く機会があります。

「明日起きられる確率は、『起きられる』『起きられない』の2通りだから、50%である」

数学ネタのギャグとしては面白いかもしれませんが、医学的(?)には何ともナンセンスです。もし明日起きられる確率が50%、すなわち$\dfrac{1}{2}$だとすると、1週間生き延びることができる確率は$$\dfrac{1}{2^7}=0.0078125$$となり、0.8%に満たない僅かな確率となります。仮に今日から、明日起きられる確率が50%になった場合、1週間後の日本人の人口は1億3千万人から、たったの100万人に減少する計算になります。

・・・では何%なら平均寿命を全うできるのだろう?ということで計算してみました。

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日本人の平均寿命を参考に、平均的な日本人が「明日起きられる確率」の概算値を求めてみます。厚生労働省が発表しているデータによれば、日本人の平均寿命は男性が 81.25 歳、女性が 87.32 歳(平成30年簡易生命表による)となっています。平均寿命は「平均余命」とも呼ばれる統計値で、実は計算方法がやや特殊で正確に計算して求めるのが割と面倒な値なのです(平均寿命の求め方については別途、解説サイトをご覧になって下さい…)。ここでは議論を簡単にするために適当なモデルを採用することにします。

以下、かなり大雑把ではありますが、

・日本人の半数は84歳まで生存する

・生涯を通じて「明日起きられる確率」は一定値 $p$ である

と仮定します。一般に平均寿命は「50%の人が生存している年齢」として単純に算出される訳ではないのですが、上記のようなモデル化によって放射性元素の半減期などと同様に計算することができます。

84年間で朝を迎える回数は、閏年を考慮すると、大体$$365 \times 84 + 84 \div 4=30681$$と求められます。これより、30681日後の生存率が50%となるような確率$p$は等式$$p^{30681}=0.5$$を満たします。これより、$$p \approx 0.9999774081…$$と求められます。しかし、この計算で求められた確率$p$は「明日起きられるかどうか」というより「明日生き残れるかどうか」の確率に等しいような気がします。そこで交通事故などの死因を除いて考えれば、明日起きられる確率は大体99.999%程度になるのではないでしょうか?ほとんど100%に近い値です。

ただ、99.999%という値は、逆に捉えると0.001%の確率で明日起きられないということを表しており、10万人に1人は「明日起きられない」ということを意味しています。そう考えると何気ない日常も死と隣り合わせであるように感じられてきますね…。

平成17年~平成22年の統計によると、日本で1日の間に亡くなる方の数は平均3280人と計算されています。これをもとに日本の全人口1億2680万人に対して1日あたりの平均生存率を計算すると、約99.9974%と求められます。先ほど計算した値に近い値となっていますが、これは恐らく偶然でしょうか。


以上の考察から、

「明日起きられる確率は99.999%程度である」

と結論されます。全然50%ではありませんでしたね(笑)。$\require{cancel}$

冒頭の、一見数学的に見えるけれども実は全く数学的に正しくない推論・命題は「数学的誤謬」(英語では “Mathematical fallacy” )と呼ばれます。有名なものとして、$$\dfrac{\text{sin} x}{n}=\dfrac{\text{si}\cancel{\text{n}} x}{\cancel{n}}=\dfrac{\text{si}x}{1}=6$$といった(非)等式や、

「人類は皆ハゲである」

といった命題迷題が知られています(これは何と古代ギリシャ時代から知られている数学的誤謬で、数学的帰納法により容易に(?)示されます)。こういったジョークは真偽がどうこうというよりも、直感的に面白いかどうかが重要となります。

※参考:「数学的なジョーク」(外部リンク)

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今回取り上げたものと似たタイプの数学的誤謬として、

「大学入試は合格するか不合格になるかの2通りしかないのだから、君が東大に合格する確率は50%だ」

といったものがあります。勿論これは誤りで、受験生の中から無作為に合格者を抽出したとしても、志願倍率が3倍程度なので合格率は30%程度にしかなりませんし、ちゃんと勉強しなければ0%に収束します。

一方で、

「夜勤明けの大学生が1時限目の講義に間に合うように起きられる確率は50%以下である」

はある程度正しいように思われます(笑)。(ただしこれは数学的誤謬ではなく単なる経験論というべきですね)


あまり知られていなくて面白い「数学的誤謬」をご存知の方や、思い付いてしまった方はコメント欄にてシェアして頂けると嬉しいです!

 

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