級数の収束判定と誤差評価――判定法の選び方を例題で学ぶ

級数では、一般項が0に近づくこと、部分和が有限の値に近づくこと、近似値の誤差が小さいことを区別します。この記事では判定法を並べるだけでなく、式の形から方法を選び、判定不能になったときの次の手まで説明します。

主に実数の級数を扱います。$\log$は自然対数です。対数を含む例では開始番号を明示し、有限個の項が未定義になる問題を避けます。

1.収束するのは部分和の数列

$$S_N=\sum_{n=1}^N a_n,\qquad \sum_{n=1}^{\infty}a_n=S\ \Longleftrightarrow\ \lim_{N\to\infty}S_N=S\in\mathbb R.$$

収束すれば$a_N=S_N-S_{N-1}\to0$です。しかし逆は成り立ちません。調和級数$\sum1/n$では一般項は0へ近づきますが、$2^{k-1}+1$から$2^k$までの$2^{k-1}$項はそれぞれ$1/2^k$以上なので、各まとまりの和は$1/2$以上です。まとまりを増やすたびに部分和が増え続け、発散します。

最初の有限個の定義された項を取り除いたり加えたりしても、収束・発散は変わりません。和の値は変わります。「十分大きい$n$で成り立つ比較」が使えるのはこのためです。

2.式の形から判定法を選ぶ

見つける特徴試す方法注意点
$a_n$が0へ近づかない一般項の必要条件0へ近づけば次へ進む
多項式の比・根号最高次数、極限比較正項で比較する
階乗・指数の積比の判定法極限1は判定不能
式全体の$n$乗根の判定法極限1は判定不能
$1/[n(\log n)^p]$積分判定・凝縮判定対数が定義される開始点
交互に符号が変わる絶対収束を先に確認、次に交代級数判定大きさの単調減少を確認
$\sin n,\cos n$などの振動部分和の有界性と部分和分法符号が変わるだけでは不足

3.比較判定と極限比較

十分大きい$n$で$0\le a_n\le b_n$とします。$\sum b_n$が収束すれば$\sum a_n$も収束します。$\sum a_n$が発散すれば$\sum b_n$も発散します。大小関係と結論の方向を逆にしないことが重要です。

$a_n,b_n>0$で$a_n/b_n\to L,\ 0<L<\infty$なら、2級数の収束・発散は一致します。例えば十分大きい$n$では$(L/2)b_n\le a_n\le(3L/2)b_n$と挟めるからです。$L=0$なら$b_n$の収束から$a_n$の収束を言えますが、$b_n$の発散からは決まりません。

例題1 $\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\frac{3n+2}{n^3+5}$を判定してください。
解答:次数を見る

$b_n=1/n^2$とすると$a_n/b_n=(3n^3+2n^2)/(n^3+5)\to3$です。$\sum1/n^2$は収束するので、与えられた級数も収束します。値を正確に求めることは、この判定には必要ありません。

例題2 $\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}(\sqrt{n^2+1}-n)$を判定してください。
解答:有理化して比較する

一般項は$1/(\sqrt{n^2+1}+n)$です。$1/n$との比は$n/(\sqrt{n^2+1}+n)\to1/2$。調和級数との極限比較から発散します。一般項が0へ近づくことだけでは結論を出せません。

4.積分判定と対数の境界

$f$がある番号以降で正・連続・単調減少、$a_n=f(n)$なら、$\sum a_n$と$\int f(x)\,dx$の無限遠での収束は一致します。減少関数の曲線の上下に幅1の長方形を並べると、和と面積を挟めることが理由です。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac1{n^p}\text{ は }p>1\text{ のとき、かつそのときに限り収束します。}$$

$p\le0$では一般項が0へ近づきません。$p>0$では積分を使い、$p\ne1$なら$x^{1-p}/(1-p)$、$p=1$なら$\log x$の無限遠の挙動から判定できます。

例題3 実数$p$に対して$\displaystyle\sum_{n=2}^{\infty}\frac1{n(\log n)^p}$を判定してください。
解答:$t=\log x$で境界を一段進める

被積分関数は十分大きい$x$で正・減少です。$t=\log x$とおくと

$$\int_2^{\infty}\frac{dx}{x(\log x)^p}=\int_{\log2}^{\infty}t^{-p}\,dt.$$

したがって$p>1$で収束し、$p\le1$で発散します。$p=1$では原始関数$\log\log x$がゆっくりでも無限大へ増えることが決め手です。$n=1$では$\log1=0$なので、この例は$n=2$から始めています。

積分判定の条件と剰余の長方形評価は、OpenStaxの発散判定・積分判定でも確認できます。

5.比・根の判定法と「1」の意味

十分大きい$n$で$a_n\ne0$とし、$L=\lim|a_{n+1}/a_n|$が存在するとします。$L<1$なら絶対収束、$L>1$なら発散、$L=1$なら判定不能です。根の判定も$L=\lim\sqrt[n]{|a_n|}$について同じ結論になります。

例題4 $\sum 3^n/n!$と$\sum(n/(2n+1))^n$を判定してください。
解答

前者は隣接比$3/(n+1)\to0$なので収束します。後者は$n$乗根が$n/(2n+1)\to1/2$なので収束します。階乗を開く比、$n$乗を外す根という対応が方法を選ぶ理由です。

$1/n$も$1/n^2$も隣接比と$n$乗根の極限は1ですが、一方は発散し他方は収束します。「極限が1だから発散」とは言えません。判定法の厳密な記述はOpenStaxの比・根の判定法を参照してください。

比が1未満なら、なぜ収束するのか

$L<q<1$を選ぶと、ある$N$以降で$|a_{n+1}|\le q|a_n|$です。繰り返して$|a_{N+k}|\le|a_N|q^k$となり、収束する等比級数で上から抑えられます。比の極限そのものを、すべての$n$に対する上界として使うのではありません。

6.絶対収束と条件収束

$\sum|a_n|$が収束するとき、元の級数は絶対収束するといいます。絶対収束は収束を保証します。元の級数は収束しても絶対値の級数が発散するときは条件収束です。

$b_n\ge0$が単調減少して0へ近づくなら、$\sum(-1)^{n-1}b_n$は収束します。偶数部分和は増加し、奇数部分和は減少し、その差$b_{2N+1}$が0へ近づくため、同じ値を挟みます。この説明から剰余評価も得られます。

$$\left|S-\sum_{n=1}^N(-1)^{n-1}b_n\right|\le b_{N+1}.$$

例えば$\sum(-1)^{n-1}/n$は条件収束し、$\sum(-1)^{n-1}/n^2$は絶対収束します。単調減少が途中から成立する場合も収束判定は使えますが、上の剰余評価を使う位置はその単調性が成立する範囲に置きます。

「符号が交互で、一般項が0へ近づく」だけでは不十分です。$b_{2k-1}=1/\sqrt k,\ b_{2k}=1/\sqrt k+1/k$なら$b_n\to0$ですが、2項ずつの和は$-1/k$なので$\sum(-1)^{n-1}b_n$は発散します。

7.発展:ディリクレの判定法

$U_N=\sum_{n=1}^Nu_n$が有界で、$b_n\ge0$が単調に0へ近づくなら$\sum u_nb_n$は収束します。交代級数判定では$u_n=(-1)^{n-1}$で、その部分和が0または1になることを使っていました。

部分和分法による理由

区間$m$からの部分和を$V_k=\sum_{n=m}^ku_n$とします。$|U_N|\le M$なら$|V_k|\le2M$です。有限和の恒等式

$$\sum_{n=m}^Nu_nb_n=V_Nb_N+\sum_{k=m}^{N-1}V_k(b_k-b_{k+1})$$

より、絶対値は$2M[b_N+(b_m-b_N)]=2Mb_m\to0$で抑えられます。尾部の和が一様に小さくなるのでコーシーの収束条件を満たします。

例として$\theta\notin2\pi\mathbb Z$なら、有限等比和から$\left|\sum_{n=1}^Ne^{in\theta}\right|\le2/|1-e^{i\theta}|$です。実部・虚部の部分和も有界なので、$\sum\sin(n\theta)/n$は収束します。$\theta\in2\pi\mathbb Z$なら各項が0であり、別に直接確認できます。

8.何項まで足せばよいか

収束することが分かっても、必要な項数はまだ分かりません。絶対誤差を$\varepsilon$以下にしたいなら、計算する前に剰余$R_N=S-S_N$を抑えます。

状況使える誤差評価
正・減少な$f(n)$の収束級数$\int_{N+1}^{\infty}f(x)dx\le R_N\le\int_N^{\infty}f(x)dx$
交代級数の条件を満たす$|R_N|\le b_{N+1}$
$n\ge N+1$で$|a_{n+1}|\le q|a_n|$, $0\le q<1$$|R_N|\le|a_{N+1}|/(1-q)$

$\sum1/n^2$なら$1/(N+1)\le R_N\le1/N$です。絶対誤差を$10^{-4}$以下に保証するには、この単純な上界では$N=10000$が十分です。交代版では$|R_N|\le1/(N+1)^2$なので$N=99$で同じ保証を得られます。これらは十分な項数であり、常に最小の項数とは限りません。

$\sum_{n=0}^{\infty}1/n!$を$n=6$まで足すと、次項は$1/7!$です。それ以降の隣接比は$1/8$以下なので、誤差は$(1/7!)/(1-1/8)=1/4410$以下です。極限比0をそのまま$q=0$として代入してはいけません。

9.確認問題8題

  1. $\sum_{n=1}^{\infty}n/(n^2+1)$。
  2. $\sum_{n=1}^{\infty}n^2/2^n$。
  3. $\sum_{n=2}^{\infty}1/[n(\log n)^2]$。
  4. $\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^{n-1}/\sqrt n$。
  5. $\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^n n/(n+1)$。
  6. $\sum_{n=1}^{\infty}1/[n(n+1)]$の和と第$N$項までの誤差。
  7. $\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^{n-1}/n$の誤差を$10^{-3}$以下にする十分な$N$。
  8. 正項級数で$a_n\le1/n$だけ分かりました。収束・発散は決まりますか。
解答
  1. $1/n$との比が1なので発散。
  2. 隣接比$((n+1)/n)^2/2\to1/2$なので収束。
  3. 積分判定で収束。
  4. 交代級数判定で収束し、絶対値の級数は$p=1/2$で発散するため条件収束。
  5. 一般項が0へ近づかず発散。
  6. $1/[n(n+1)]=1/n-1/(n+1)$より$S_N=1-1/(N+1)$。和は1、誤差は厳密に$1/(N+1)$。
  7. $1/(N+1)\le10^{-3}$を満たす$N=999$で十分。
  8. 決まりません。$a_n=1/n^2$と$a_n=1/n$が反例です。

公式の一覧と個々の和は級数のギャラリーへ。条件収束する級数の並べ替えは和を変えうるため、有限和と同じ感覚で項の順序を入れ替えないようにします。