通過領域とは、動く点・線分・曲線・図形が一度でも通る点を集めたものです。図を何枚か描くだけでは、境界の近くに隙間があるか、境界そのものを含むかまでは分かりません。点を固定し、その点を通る位置に図形を動かせるかを調べると、図形の問題を実数の存在条件へ変えられます。
二次関数の最大・最小と、方程式の解の配置を前提に説明します。最後の包絡線は発展事項です。主な例題では、境界を含む場合を不等号で明示します。
1.「一度でも通る」と「いつでも含まれる」は違う
パラメータ$t$によって変わる図形を$A_t$、$t$の許される範囲を$T$とすると、通過領域は$\bigcup_{t\in T}A_t$です。点$P$が通過領域に入るとは、$P\in A_t$となる$t\in T$が少なくとも1つ存在することを意味します。
これに対して$\bigcap_{t\in T}A_t$は、すべての$t$で共通に含まれる点の集合です。例えば直線$y=tx$($0\le t\le1$)の通過領域は原点から広がる2つの領域ですが、すべての直線に共通する点は原点だけです。量化の「ある」と「すべて」を取り違えないようにします。
2.順像法と逆像法は、固定するものが違う
| 考え方 | 固定するもの | 調べること |
|---|---|---|
| 順像法 | 図形を動かす$t$や、点を指定する補助変数 | 得られる点$(x,y)$を集める |
| 逆像法 | 候補の点$(x,y)$ | その点を通る$t$が許された範囲に存在するか |
逆像法では$x,y$を数として固定し、$t$についての方程式・不等式を作ります。$y=g_x(t)$と書ければ、$t$を動かしたときの値域を求める方法も使えます。$g_x$が閉区間上で連続なら、その値域は最小値から最大値までの区間であり、途中の値もすべて取ります。
解法名は説明のための呼び方です。答案では「点$(x,y)$を固定する」「この条件を満たす$t$が存在するためには」と書き、必要十分条件をつなぐことを優先します。
3.基本例:傾きが制限された直線
解答A:$x$を固定して値域を調べる
$x>0$なら$tx+2$は$t$について増加するため$2\le y\le2x+2$です。$x<0$なら減少するため$2x+2\le y\le2$です。$x=0$なら$t$によらず$y=2$です。
各$x$で端から端まで連続に動くので、書いた不等式を満たす点はすべて実現します。境界の直線は$t=0,2$で実現するため含みます。
解答B:$t$を逆に求める
$x\ne0$なら$t=(y-2)/x$なので、$0\le(y-2)/x\le2$が条件です。$x$の符号で場合分けすると解答Aと一致します。$x=0$は割れないので元の式に戻し、$y=2$だけを加えます。割った文字が0になる場合を落とすのが典型的な誤りです。
図示では、まず$y=2$と$y=2x+2$を実線で描き、右側と左側で両直線にはさまれる部分を塗ります。$y\ge2$の部分だけを塗ると、負の$x$の範囲を見落とします。
4.パラメータの二次式は、頂点と端点で調べる
各$t$では$x,y$についての直線ですが、点$(x,y)$を固定すると$t$についての二次方程式です。どの文字を変数として見ているかを意識します。
解答:$g_x(t)=(t-x)^2-x^2$の値域
軸$t=x$が区間$[0,2]$の左・内部・右のどこにあるかで最小値が変わります。
最大値は端点$g_x(0)=0,g_x(2)=4-4x$の大きい方なので
したがって答えは$L(x)\le y\le U(x)$です。境目$x=0,1,2$で式がつながることも確認できます。連続関数の値域なので、上下の境界の間に隙間はありません。
$t$に制限がなければ判別式から$y\ge-x^2$だけで済みます。しかし今回は$0\le t\le2$です。判別式が非負でも、得られる$t$が区間外なら通過しません。例えば$(x,y)=(0,5)$は判別式の条件を満たしますが、$t^2=5$の解は$[0,2]$にありません。

5.動く円板は、点から中心までの最小距離
解答:中心の線分からの距離が1以下
点$(x,y)$が円板に含まれる条件は$(x-t)^2+y^2\le1$です。そのような$t$が存在する条件は、左辺の最小値が1以下であることです。
中央の長方形$[0,2]\times[-1,1]$に、左右の半円を付けた形になります。$x$が区間内なら最も近い中心は$t=x$、外側なら近い方の端点です。中心の移動距離2と直径2を混同しないようにします。
6.円周と円板では「存在条件」が変わる
解答:距離の最小値と最大値ではさむ
円周の条件は$(x-t)^2+y^2=1$です。$d^2(t)=(x-t)^2+y^2$は連続なので、ある$t\in[0,1]$で1になる条件は
最小値は$x<0$なら$x^2+y^2$、$0\le x\le1$なら$y^2$、$x>1$なら$(x-1)^2+y^2$です。最大値は$\max\{x^2+y^2,(x-1)^2+y^2\}$です。したがって円板の通過領域から、両端の円板の内部に共通して入る点を除いた領域になります。端点の円周上にある点は除きません。
例えば$(1/2,0)$はすべての中心からの距離が$1/2$以下なので、円板には含まれても円周は通りません。「最小距離が1以下」だけでは、この点を誤って含めます。
7.線分には、直線の式以外の制限がある
解答:正の座標では最小値を使う
$x>0,y>0$なら$t\in(0,2)$で、線分上の条件は$x/t+y/(2-t)=1$です。逆にこの式と$x,y>0$が成り立てば、2つの正の項の和が1なので、点は切片間の線分上にあります。
これはコーシー・シュワルツの不等式から得られ、等号は$t=2\sqrt x/(\sqrt x+\sqrt y)$です。左辺は$t\to0+,2-$で無限大へ増え、内部で最小値を取る連続関数です。よって左辺が1になる$t$が存在する条件は、最小値が1以下であること、すなわち$\sqrt x+\sqrt y\le\sqrt2$です。
軸上では直接確認すると$0\le x\le2,y=0$と$x=0,0\le y\le2$が含まれます。原点も$t=0$または2の線分に含まれます。全体の答えは
図示では第一象限で$y=(\sqrt2-\sqrt x)^2$($0\le x\le2$)より下を塗り、曲線と両軸上の該当部分も含めます。
「線分$AB$を含む直線」だけを動かすと、第一象限以外まで含む別の問題になります。一般には$P=(1-s)A+sB,\ 0\le s\le1$と書けば、線分という制約を式に残せます。

8.発展:包絡線は境界の候補を与える
曲線族$F(x,y,t)=0$に対して、$F=0$と$\partial F/\partial t=0$を連立して得られる曲線は、包絡線の候補です。近いパラメータの曲線が接する位置を表します。ただし、候補が通過領域の境界であることや、どちら側が領域になるかは別に確認します。
例題2なら$F=y-t^2+2tx$で、$\partial F/\partial t=-2t+2x=0$より$t=x$です。代入して$y=-x^2$が得られます。しかし$t\in[0,2]$なので、使えるのは$0\le x\le2$の部分です。残りの境界は端点$t=0,2$の直線から生じます。
したがって、パラメータ区間の端、図形自身の端点、分母が0になる場合、微分条件で得た候補をそれぞれ点検します。包絡線だけを描いて塗る方向を推測する答案では、領域の全体を証明したことになりません。
9.必要性と十分性を分けて答案にする
パラメータを消去して不等式が出たら、「その不等式を満たす点がすべて実現するか」を確認します。単調な一次式ならパラメータを復元でき、連続な関数の値域なら中間値の定理を使えます。二乗・除算・平方根を取った場合には、符号や0になる場合を元の式へ戻して確認します。
答案の流れは、①点$(x,y)$を固定する、②条件を満たす$t$の存在問題へ直す、③必要十分条件を求める、④境界を含むか確認する、⑤その条件を図示する、という順序です。図と不等式の両方で同じ領域を指定します。
10.確認問題6題
- $-1\le t\le1$で直線$y=tx+1$が動くときの通過領域。
- $t$がすべての実数を動くとき、直線$y=t^2-2tx$の通過領域。
- 例題2で$(x,y)=(1,-1)$と$(1,-2)$は通過領域に入りますか。
- 中心$(t,0)$、半径$r>0$の円板が$a\le t\le b$($a<b$)で動くときの通過領域を、距離を用いて表してください。
- $0<t<2$で例題5の線分を動かすと、原点と$(2,0)$は含まれますか。
- $0\le t\le1$で$y=(x-t)^2$が動くときの通過領域を求めてください。
解答
- $|y-1|\le|x|$です。$x=0$では$y=1$だけになります。
- $y\ge-x^2$です。$t=x\pm\sqrt{x^2+y}$が実数として復元できます。
- 前者は$t=1$で実現します。後者は最小値$-1$より小さいため入りません。
- 線分$[a,b]\times\{0\}$からの距離が$r$以下の点全体です。中央の長方形に半径$r$の左右半円を加えます。
- どちらも含まれません。$0<t<2$では両切片が正なので原点を通らず、$x$切片は2未満です。軸上の端点は開区間になりますが、$x,y>0$で$\sqrt x+\sqrt y=\sqrt2$の曲線部分は内部の$t$で実現するので含まれます。
- 下限は$x<0$で$x^2$、$0\le x\le1$で0、$x>1$で$(x-1)^2$。上限は$\max\{x^2,(x-1)^2\}$です。両者の間を境界込みで取ります。
関連:高校数学のコツ。実数解を区間内に限定する手順は、二次方程式の解の配置にも共通します。
