神戸大の整数問題から素数絡みの倍数の問題を取り上げます。
《問題》
$p$を$3$以上の素数、$a$、$b$を自然数とする。以下の問に答えよ。ただし、自然数$m$、$n$に対し、$mn$が$p$の倍数ならば、$m$または$n$は$p$の倍数であることを用いてよい。
(1)$a+b$ と $ab$ がともに$p$の倍数であるとき、$a$と$b$はともに$p$の倍数であることを示せ。
(2)$a+b$ と $a^2+b^2$ がともに$p$の倍数であるとき、$a$と$b$はともに$p$の倍数であることを示せ。
(3)$a^2+b^2$ と $a^3+b^3$ がともに$p$の倍数であるとき、$a$と$b$はともに$p$の倍数であることを示せ。
(神戸大学2010年 前期理系第2問)
《考え方》
一般に、$m$、$n$を整数、$p$を素数とするとき、
「$mn$が$p$の倍数」⇔「$m$または$n$が$p$の倍数」
です。また、(2)では(1)の結果を、(3)では(1)と(2)の結果を利用します。結果を利用できる形に式変形するところがポイントです。
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解答例
(1)
「$a+b$ が$p$の倍数である」 ・・・①
「$ab$ が$p$の倍数である」 ・・・②
とする。$p$が素数であることから、
「$a$または$b$が$p$の倍数」⇔ ②
であり、②であることと
(ア)「$a$と$b$がともに$p$の倍数」
または
(イ)「$a$と$b$の一方のみが$p$の倍数」
であることは同値である。
(イ)のとき、$a+b$ は$p$の倍数ではない。したがって、①かつ②のとき、(ア)となるから、$a$と$b$はともに$p$の倍数である。
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(2)
$a+b$ と $a^2+b^2$ がともに$p$の倍数であるとき、$$2ab=(a+b)^2-(a+b)$$の右辺は$p$の倍数であるから、左辺の$2ab$も$p$の倍数となる。$p$は$3$以上の素数で$2$は$p$の倍数ではないから、$ab$が$p$の倍数となる。
よって $a+b$ と $ab$ がともに$p$の倍数となる。これと(1)の結果より、$a$と$b$はともに$p$の倍数である。
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(3)
$a^2+b^2$ と $a^3+b^3$ がともに$p$の倍数であるとき、$$\left(a^{2}+b^{2}\right)(a+b)-\left(a^{3}+b^{3}\right)=a b(a+b)$$の左辺は$p$の倍数であるから、右辺も$p$の倍数となる。
いま、$p$は素数であるから、
(ウ)「$ab$ が$p$の倍数」
または
(エ)「$a+b$ が$p$の倍数」
である。
(ウ)のとき、$a^2+b^2$ と $ab$ はともに$p$の倍数である。このとき、$a^2+b^2$ と $a^2 b^2$ はともに$p$の倍数となるから、(1)の結果より$a^2$と$b^2$はともに$p$の倍数となる。これより、$a$と$b$はともに$p$の倍数である。
(エ)のとき、$a+b$ と $a^2+b^2$ がともに$p$の倍数となるから、(2)の結果より、$a$と$b$はともに$p$の倍数となる。
以上より、(ウ)と(エ)のいずれの場合でも、$a$と$b$はともに$p$の倍数である。
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(コメント)
差を取る操作で次数を下げると前問の結果が使えます。取っ掛かりの掴みにくい問題ですが、因数分解できる形に変形すると場合分けで処理できることが多いです。類題を経験していると有利ですね。