「順像法と逆像法」の解説シリーズも遂に最終回です。前回までは問題別に、方針の立て方から解答の方法、モノの見方などを色々と解説してきました。今回はこれまでの知識を踏まえ、実際に通過領域を求める問題に遭遇した際に、どの解法を選ぶのが適切なのかについて考察してみます。
これまでの復習
今までに以下の4題を扱ってきました。
※問題のタイトルがそのままリンクになっています。
座標平面の原点を
線分
(1)
(2)
座標平面上の2点
問1 線分
問2 線分
ここまで「順像法と逆像法シリーズ」の記事をご覧になった方にとってはお茶の子さいさいだと思いますが、もし不安要素があるならダッシュで確認しに行きましょう! ボリューム満点の解説を付けてあるので、まだ読んでいないという方も是非ご覧下さい!
確認のために順像法と逆像法の要点も再掲しておきます。
「順像法」の要点
①
② パラメータをすべての範囲にわたって動かし、
③ 得られた
順像法では点
「逆像法」の要点
① 与方程式をパラメータについて整理する
② パラメータが実数として存在する条件を判別式などで求める
③ 得られた
パラメータを変数と見なして
さらに、解法選択の前提として
・基本的に全ての問題は順像法で解答可能(※一部例外あり)
・パラメータの範囲や点の存在範囲に制約が少ない場合は逆像法で一気に領域を求めるのがラク
順像法は素直
さて、上記の4題はいずれも順像法と逆像法の両方で解くことが可能でした。ただしその手間は問題によって異なります。
領域が多数種類の境界線を持つ場合は、場合分けが大変になります。言い換えると、大量の場合分けが必要な問題では図形の掃過領域が複雑であることが多いです。一概には言えませんが、そのような問題に対して逆像法を採用して解の配置問題に持ち込むと条件を捌くのが結構大変だったりします(例えば前回扱った日医大の問題など)。
また、方程式にパラメータが2文字以上含まれる場合、対称式にでも変換できない限り逆像法で太刀打ちするのは難しく、大抵は順像法が向いています。例えば次の問題を考えてみます。
東京大学2007年 理科第3問
座標平面上の2点
(1)
(2)
2点
※解答はここには掲載しません。基本的には
実数条件 V.S. 力業(円を含む場合)
これまで「基本的に全ての問題は順像法で解くことができます」と散々述べてきた訳ですが、やはり世の中には例外というのが付き物で、残念ながら順像法が不利になる問題も存在します。
例えば次の問題。
岐阜大学1989年など
順像法でまともに解こうとしたら大変な目に遭います。というのも、
このような場合は、消去法的に逆像法(実数解
※なお、領域は以下の斜線部となります。ただし破線と白抜きの点は除きます。
また、次の問題も順像法だと難儀します。
2006年第2回東大実戦 文科第4問
放物線
(1)円
(2)2点
(1)の結果は ↓↓↓ のようになります。
» (1) の答えはこちら
円
» 閉じる
これもパラメータの式としては2次なので解けそうに見えます。しかし
かつ
となります。
…というわけでパラメータの式に円が含まれる場合は逆像法がオススメです。
パラメータが高次の場合
例題①
実数
答えとなる領域は下図の網掛け部分(境界は
無理式を含む場合
例題②
この場合は結局
答えとなる領域は下図の網掛け部分(境界はすべて含む)。
パラメータに制約が少ない場合【重要】
名古屋大学1963年 文理共通第3問
点
点
名古屋大学1978年 文系第4問
放物線
頂点が点
なお、この領域は通過領域の補集合からも得られるので、必ずしも逆像法を使わなければならない訳ではありません。
このように、パラメータや点の存在範囲に制約があまり無い場合は逆像法で一気に領域を求めるのがラクです。勿論、順像法で解くことも可能ですが、パラメータの範囲に制約が無い場合は時間節約の意味でも逆像法をお勧めします。
他にも以下のような問題は逆像法でズバッと解決できます。
名古屋大学1965年 文理共通第3問
放物線
※答えは
名古屋大学1965年 文理共通第3問
(条件)点
図形的意味に着目する
最後にもう一題、見てみます。
例題③
まともに取り合うと面倒そうな問題ですが、図形的な意味を考えれば通過領域の見当を付けられることがあります。これは順像法とか逆像法とかいう以前の話です。
いま、線分
これにより、大雑把に次のような領域が得られるのではないかとアタリを付けることができます。
あらかじめ通過領域の目星が付いていれば、場合分けでミスして変な領域が得られても何かおかしいと気付くことができます。答えの見当が付いているかどうかというのは試験場では命運を分けるカギになることもあります。色々な視点から問題を観察できるようになっておきましょう。
因みに、この例題③の類題が大阪大学1985年文系第3問に出題されています。こちらは辺が1の正方形が曲線
(2022/02/03追記:文章のスタイルを一部変更)
通過領域シリーズは以上で一旦区切りとします。連日5本立てでお送りしてきましたが、その中の一つでも役立つ記事を見つけて頂ければ幸いです。通過領域の問題は一般的な教科書ではほとんど触れられておらず、解き方を知らないと全く手に負えないのが普通です。是非とも本シリーズを通じて対策し、この手の問題を苦手克服どころか得点源にしてライバルに差を付けてしまいましょう!