【高校数学】ベクトルの1次独立と1次従属

今回はベクトルの1次独立と1次従属に関するまとめです。

 


まずは定義を確認しましょう。

定義

空間の3つのベクトル $\vec{a}$、$\vec{b}$、$\vec{c}$ に対して、$$k \vec{a}+l \vec{b}+m \vec{c}=\vec{0}$$ を満たす実数 $k$、$l$、$m$ が $k=l=m=0$ に限るとき、ベクトル $\vec{a}$、$\vec{b}$、$\vec{c}$ は3次元空間において「1次独立」であるという。

そうでないとき、$\vec{a}$、$\vec{b}$、$\vec{c}$ は「1次従属」であるという。

1次独立」というのは「線形独立」と呼ばれることもあり、「ゼロベクトルの表示が自明なものに限ること」と言い換えることができます。また、「1次従属」は「線形従属」と呼ばれることもあります。次の課程の高校数学ではベクトルが

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具体的な例で考えてみます。

例えば、$$\vec{a}=\left[\begin{array}{c}
1 \\
0 \\
0
\end{array}\right], \ \vec{b}=\left[\begin{array}{c}
0 \\
1 \\
0
\end{array}\right], \ \vec{c}=\left[\begin{array}{c}
0 \\
0 \\
1
\end{array}\right]$$の線形結合が零ベクトルになる、即ち$$k\,\vec{a}+l\,\vec{b}+m\,\vec{c}=\vec{0}$$となるような実数 $k$、$l$、$m$ の組は $k=l=m=0$ に限ります。

一方で、$\vec{a}$、$\vec{b}$、$\vec{c}$ が同一平面上のベクトルであるとき、例えば $k$、$l$、$m$ のうち $m \ne 0$ であれば、ある実数 $k^{\prime}$、$l^{\prime}$ を用いて$$\vec{c}=k^{\prime} \vec{a}+l^{\prime} \vec{b}$$と表せて、$$k^{\prime} \vec{a}+l^{\prime} \vec{b}+(-1) \vec{c}=\vec{0}$$となるので、$\vec{a}$、$\vec{b}$、$\vec{c}$ は1次従属です。例えば、$$\vec{a}=\left[\begin{array}{c}
1 \\
-1 \\
0
\end{array}\right], \ \vec{b}=\left[\begin{array}{c}
0 \\
1 \\
-1
\end{array}\right], \ \vec{c}=\left[\begin{array}{c}
1 \\
0 \\
-1
\end{array}\right]$$の場合、$k=l=1$、$m=-1$ とすれば$$k\,\vec{a}+l\,\vec{b}+m\,\vec{c}=\vec{0}$$が成り立つので、$\vec{a}$、$\vec{b}$、$\vec{c}$ は1次従属です。

以上のことから、$\vec{a}$、$\vec{b}$、$\vec{c}$ が1次独立のときは、$\mathrm{OA}=|\vec{a}|$、$\mathrm{OB}=|\vec{b}|$、$\mathrm{OC}=|\vec{c}|$ とすると、四面体 $\mathrm{OABC}$ を作ることができます。逆に、四面体の3脚であるような $\vec{\mathrm{OA}}$、$\vec{\mathrm{OB}}$、$\vec{\mathrm{OC}}$ は1次独立となります。

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3次元ベクトルの場合についてまとめておきます。

①「$\vec{a}$、$\vec{b}$、$\vec{c}$ が1次独立」と次の3つは同値

  1. $k \vec{a}+l \vec{b}+m \vec{c}=\vec{0}$ が成り立つのは、$k=l=m=0$ に限る。
     
  2. $k \vec{a}+l \vec{b}+m \vec{c}=k’ \vec{a}+l’ \vec{b}+m’ \vec{c}$ が成り立つのは、$k=k’$、$l=l’$、$m=m’$ に限る。
     
  3. 空間内の任意のペクトル $\vec{d}$ は$\vec{d}=\alpha \vec{a}+\beta \vec{b}+\gamma \vec{c}$ ($\alpha$、$\beta$、$\gamma$は実数)とただ1通りに表される。
    ※このとき、$\langle\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}\rangle$ を基底、($\alpha, \beta, \gamma$) を基底に関する $\vec{d}$ の成分という。

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②「$\vec{a}$、$\vec{b}$、$\vec{c}$ が1次従属」と次は同値

  • $k \vec{a}+l \vec{b}+m \vec{c}=\vec{0}$ を満たす少なくとも1つは$0$でない $k$、$l$、$m$ が存在する。

 


2次元ベクトルは平面のベクトル、3次元ベクトルは空間のベクトルとして考えればイメージしやすいですが、4次元ベクトルやそれ以上の高次のベクトルについても「1次独立/従属」が同様に定義されます。一般の$n$次ベクトルの場合について、「線形従属でない」=「線形独立」と説明している参考書も多いです。

 

“【高校数学】ベクトルの1次独立と1次従属” への3件の返信

  1. 今や,すべての人にとっていろいろと大変な時期というしかありませんね.
    有意義な記事をアップいただいていることに敬意を表します.

    3つのベクトル
    $\vec{a}=(1,0,0),\vec{b}=(2,0,0),\vec{c}=(1,1,0)$
    は1次従属ですが,
    $\vec{c}$は$\vec{a}$と$\vec{b}$の1次結合では表されませんね.
    「$\vec{a},\vec{b},\vec{c}$が1次従属」と
    「$\vec{a},\vec{b},\vec{c}$の中の任意の1つは他の1次結合で表される」…(*)
    は同値ではないと思います.

    この記事では,2つのベクトルの1次独立の定義は明示的には書かれていませんが,
    「$\vec{a},\vec{b},\vec{c}$が1次従属,かつ,どの2つも1次独立」
    を前提とすれば,(*)は成立します.

  2. 細かい指摘になりますが,
    「$\vec{a},\vec{b},\vec{c}$が1次従属,かつ,どの2つも1次独立」…[1]
    ならば
    「$\vec{a},\vec{b},\vec{c}$の中の任意の1つは他の1次結合で表される」…[2]
    は成立しますが,逆は不成立です.
    (反例:$\vec{a}=\vec{b}=\vec{c}=(1,0,0)$とか…)
    つまり,「同値」は危ないと思います.

    前のコメントで提示したのは,あくまで
    「[1]ならば[2]は成立」です.

    1. たけちゃん さん

      コメントありがとうございます。
      確かに特別な例が色々と考えられる中で「同値」とするのは問題がありますね。
      色々と混乱を生んでしまっても良くないので、該当箇所は削除することにさせて頂きました。(前のコメントは勝手ながらmathjaxを有効化させて頂きました)

       

      たけちゃん さんを始めとして、いつも当サイトを丁寧にご覧下さっている皆様に感謝申し上げます。ウェブサイトの運営は完全に私の趣味の範疇ですが、読者の方々がいて下さることが何よりの励みになっています。
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