2025年の共通テスト数学ⅠAの第2問〔1〕(前半の問題)を解説します。
花子さんと太郎さんは、公園にある二つの小さな噴水と一つの大きな噴水の高さについて話している。
花子: あの中央の大きな噴水の高さは何メートルだろう。
太郎: 実際に高さを測定するのは難しそうだね。噴水の水がえがく曲線は、放物線になると聞いたことがあるよ。
花子: じゃあ、放物線と仮定して、およその高さを考えてみよう。
花子さんと太郎さんは、噴水の高さについて次のように考えることにした。
参考図
噴水の水がえがく曲線は三つとも放物線とする。三つの噴水の水が出る位置は水平な地面にある。図1のように座標軸が定められた平面上に、三つの噴水を正面から見た図をかく。左右の小さな噴水の水がえがく放物線については後の仮定1を、中央の大きな噴水の水がえがく放物線については後の仮定2を設定する。図1の$P_1, P_2, P_3$は噴水の水が出る位置である。なお、長さの単位はメートルであるが、以下では省略する。
図 1
【仮定1】
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- 左側の小さな噴水の水がえがく放物線 $C_1$ は、$x$ 軸上の点 $P_1\left(-\dfrac{5}{2}, 0\right)$ から出て点 $\left(\dfrac{1}{2}, 0\right)$ に至る。
- 右側の小さな噴水の水がえがく放物線 $C_3$ は、$x$ 軸上の点 $P_3\left(\dfrac{5}{2}, 0\right)$ から出て点 $\left(-\dfrac{1}{2}, 0\right)$ に至る。
- $C_1$ と $C_3$ はともに点 $(0, 1)$ を通る。
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【仮定2】
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- 中央の大きな噴水の水がえがく放物線 $C_2$ は、$x$ 軸上の点 $P_2\left(\dfrac{3}{2}, 0\right)$ から出て $C_3$ の頂点と $C_1$ の頂点を通る。
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(1) 仮定1と仮定2のもとで考える。$C_1$ をグラフにもつ二次関数を $y = ax^2 + bx + c$ とする。このとき $c = \boxed{\text{ア}}$ であり、また
\[
y = -\dfrac{\boxed{\text{イ}}}{\boxed{\text{ウ}}}x^2 – \dfrac{\boxed{\text{エ}}}{\boxed{\text{オ}}}x + \boxed{\text{ア}}
\]である。
$C_1$ の頂点の $y$ 座標は $\dfrac{\boxed{\text{カ}}}{\boxed{\text{キ}}}$ である。このことを用いると、$C_2$ の頂点の $y$ 座標は $\dfrac{\boxed{\text{クケ}}}{\boxed{\text{コサ}}}$ であることがわかる。
したがって、大きな噴水の高さは、小さな噴水の高さの$\boxed{\text{シ}}$である。
$\boxed{\text{シ}}$ については、最も適当なものを、次の⓪~③のうちから一つ選べ。
⓪ およそ2倍
① およそ3倍
② およそ4倍
③ およそ5倍
(2) 花子さんと太郎さんは、大きな噴水の高さについて話している。
花子: 正面から見たとき、大きな噴水が小さな噴水の頂点を通って見えるというデザインは変えずに、大きな噴水の高さを変えることはできるのかな。
太郎: 左右の二つの小さな噴水は変えずに、大きな噴水の水が出る位置を変えてみたらどうかな。
花子: 大きな噴水の高さが5メートルになるときの水が出る位置を考えてみよう。
仮定2の代わりに仮定2´をおく。
【仮定2´ 】
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- 中央の大きな噴水の水がえがく放物線 $C_2’$ は、$x$ 軸の正の部分の点 $P_2’$ から出て $C_3$ の頂点と $C_1$ の頂点を通る。
- $C_2’$ の頂点の $y$ 座標は$5$である。
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仮定1と仮定2´のもとで考える。このとき、$P_2’$ は $P_2$ より $\dfrac{\boxed{\text{ス}}}{\boxed{\text{セ}}}$ だけ $\boxed{\text{ソ}}$ の方にある。
$\boxed{\text{ソ}}$ の解答群
⓪ $P_1$ ① $P_3$
(2025年 共通テスト数学ⅠA 本試験第2問〔1〕)
考え方・解答例
(1)
仮定1の3つ目の条件「$C_1$ と $C_3$ はともに点 $(0, 1)$ を通る」より、$C_1$ と $C_3$ はともに$y$切片が$1$と分かるので $c=1$、「$\boxed{\text{ア}} = 1$」と分かります。
仮定1の1つ目の条件「放物線 $C_1$ は、$x$ 軸上の点 $P_1\left(-\dfrac{5}{2}, 0\right)$ から出て点 $\left(\dfrac{1}{2}, 0\right)$ に至る。」から$$y=a(2x+5)(2x-1)$$という形で表されることが分かります。これが点 $(0, 1)$ を通るので $(x,y)=(0,1)$を代入すると $a=-\dfrac{1}{5}$ を得ます。よって$$y=-\dfrac{1}{5}(2x+5)(2x-1)$$ $$\therefore y=-\dfrac{4}{5}x^2-\dfrac{8}{5}+1$$を得ます。よって「$\boxed{\text{イ}} = 4$、$\boxed{\text{ウ}} = 5$、$\boxed{\text{エ}} = 8$、$\boxed{\text{オ}} = 5$」と分かります。
これを平方完成すると$$y=-\dfrac{4}{5}(x+1)^2+\dfrac{9}{5}$$となるので、$C_1$の頂点の $y$ 座標は $y=\dfrac{9}{5}$ であることが分かります。よって「$\boxed{\text{カ}} = 9$、$\boxed{\text{キ}} = 5$」です。
いま、放物線$C_2$の軸は$y$軸上にあるので、$C_2$の方程式は$$y=Ax^2+C$$という形になっています。これが$C_1$の頂点$\left(1,\dfrac{9}{5}\right)$を通ること、および、仮定2より点$\left(\dfrac{3}{2},0\right)$を通ることから、それぞれの点の座標を代入してやると、関係式$$\begin{cases} \dfrac{9}{5}=A+C \\ 0=\dfrac{9}{4}A+C\end{cases}$$を得ます。この連立方程式を解くと$$A=-\dfrac{36}{25}, \ C=\dfrac{81}{25}$$を得るので、大きな噴水の高さは、小さな噴水の高さの$\dfrac{9}{5}$倍、つまり「およそ2倍」の高さだと分かります。
以上より、「$\boxed{\text{ク}} = 8$、$\boxed{\text{ケ}} = 1$、$\boxed{\text{コ}} = 2$、$\boxed{\text{サ}} = 5$、$\boxed{\text{シ}} = 0$」と分かります。
(2)
仮定2′より、$C_2’$ の頂点の $y$ 座標は$5$なので$C_2’$の方程式は$$y=A’ x^2+5$$と表せます。「左右の二つの小さな噴水は変えず」とあるので、$C_2’$は頂点$\left(1,\dfrac{9}{5}\right)$を通るので代入して$$\dfrac{9}{5}=A’+5$$ $$\therefore A’=-\dfrac{16}{5}$$を得ます。よって$C_2’$の方程式は$$y=-\dfrac{16}{5} x^2+5$$となるので、$x$切片を求めるために$$0=-\dfrac{16}{5} x^2+5$$を解いて $x=\dfrac{5}{4}$ を得ます。
$C_2:y=-\dfrac{36}{25}x^2+\dfrac{81}{25}$ より、$x$切片は$\left(\dfrac{3}{2},0\right)$であるから、$C_2’$の$x$切片は$C_2$に比べて $\dfrac{1}{4}$ だけ$x$軸方向の負側、つまり$P_1$の方にあることが分かります。(下記☑POINTを参照のこと)
以上より、「$\boxed{\text{ス}} = 1$、$\boxed{\text{セ}} = 4$、$\boxed{\text{ソ}} = 0$」と分かります。
図1をよく見ると、$P_2$は$x$軸の正の部分にあります。したがって、$P_2’$は$P_2$に比べて$P_1$の方に寄っていることになります。勘違いして放物線$C_2’$の負側の$x$切片を見てしまわないように注意してください。
第1問に続き、非常にシンプルな内容でした。今年の数ⅠAは易化傾向なので、こちらも落としたくない設問です。
問題文が長ったらしいですが、要求されていることは単純です。放物線の方程式を文字で置く際に、対称性を活かしたり、問題文の条件を反映させる形で立式できると短時間で片付く問題です。よく訓練している受験生であれば、ものの数分で完答できたでしょう。