英国の名門大学であるケンブリッジ大学とウォーリック大学の入試に使われている数学のテスト「STEP」から、昨年の問題を取り上げてみます。イギリスの大学受験生が解いている問題を眺めるのも勉強になる・・・かもしれません。
「Sixth Term Examination Paper」(通称 STEP) は数学の入学試験問題で、11問もしくは12問の問題から6つの問題を選択して解答する形式の試験です。STEPには1、2、3の3種類があり、この順に難度が上がります。
イギリスではSTEPの他に「Mathematics Admissions Test」(通称 MAT) や「Test of Mathematics for University Admission」(通称 TMUA) などの共通数学試験があります。STEPがすべて記述式なのに対してMATでは一部、TMUAでは全てがマーク式の問題になっています。問題の難しさは、おおよそ
STEP3>STEP2>STEP1≈MAT>TMUA
という序列になっており、STEP2,3になると日本の高校数学レベルを超えた内容まで出題されます。
今回は2019年のSTEP1から第1問をご紹介します。
《問題》
A straight line passes through the fixed point and has gradient , where and . Find, in terms of and , the coordinates of the points and where the line meets the -axis and the -axis respectively.
(i)
Find an expression for the area of triangle in terms of and . (The point is the origin.)
You are given that, as varies, has a minimum value. Find an expression in terms of for this minimum value.
(ii)
Show that the length of the perimeter of triangle is given by
You are given that, as varies, has a minimum value. Show that this minimum value occurs when where Find and simplify an expression for the minimum value of in terms of .
(STEP2019 MATHⅠ §A p1)
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ある直線は定点 を通り、勾配が であり、 と を満たしている。 と を用いて、この直線と 軸と 軸との交点 および の座標を求めよ。
(i)
三角形 の面積 を と で表せ。(ただし点 は原点とする)
が変化するとき、 は最小値を持つ。その最小値を で表せ。
(ii)
三角形 の外周の長さが、 で与えられることを示せ。
が変化するとき、 は最小値を持つ。この最小値はを満たす角 のときにとることを示せ。 の最小値を を用いて簡単な式で表せ。
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《考え方》
問題の中身は至って普通です。まずは直線の方程式を求めましょう。
解答例
the coordinates of the points and

定点 を通り、勾配が であるような直線 の方程式はとなる。よって切片および切片は 、 となるから、点 および の座標はと求められる。
(ⅰ)
三角形 の面積 は
いま、 であるから相加・相乗平均の不等式より、等号が成立するのは、すなわち、のときである。 であるから は任意の正の実数値をとる。よって任意の に対して となる が存在するから、最小値 は必ず存在する。
(ⅱ)
三角形 の外周の長さがで与えられることを示す。
より、三角形 の外周の長さ はで与えられる。
また、 を の関数 と見なすと、となる。
よって関数 の増減はを満たすの前後で変化する。この等式を整理すると、 となる。ここで、角 はこれを満たすから、を満たす角 のときに は最小値をとる。
よって最小値はと求められる。
(コメント)
日本の入試と比べてどうでしょうか? 本問に関してはごく普通の問題という感じでしたね。(ⅰ)について、微分を用いてもの最小値を求めることができます。ですが相加相乗平均の不等式を使う方が簡単だと思います。(ⅱ)では特に増減表を書いていませんが、 が最小値をとる( が一度だけ負→正と符号が変化する)ことは が の範囲で単調増加することから導かれます。