ケンブリッジ大学の入試数学を解説する(STEP2019 MATH1 §A p1)

英国の名門大学であるケンブリッジ大学とウォーリック大学の入試に使われている数学のテスト「STEP」から、昨年の問題を取り上げてみます。イギリスの大学受験生が解いている問題を眺めるのも勉強になる・・・かもしれません。


「Sixth Term Examination Paper」(通称 STEP) は数学の入学試験問題で、11問もしくは12問の問題から6つの問題を選択して解答する形式の試験です。STEPには1、2、3の3種類があり、この順に難度が上がります。

イギリスではSTEPの他に「Mathematics Admissions Test」(通称 MAT) や「Test of Mathematics for University Admission」(通称 TMUA) などの共通数学試験があります。STEPがすべて記述式なのに対してMATでは一部、TMUAでは全てがマーク式の問題になっています。問題の難しさは、おおよそ

STEP3>STEP2>STEP1≈MAT>TMUA

という序列になっており、STEP2,3になると日本の高校数学レベルを超えた内容まで出題されます。

今回は2019年のSTEP1から第1問をご紹介します。


《問題》

A straight line passes through the fixed point (1,k) and has gradient tanθ, where k>0 and 0<θ<12π. Find, in terms of θ and k, the coordinates of the points X and Y where the line meets the x-axis and the y-axis respectively.

(i)
Find an expression for the area A of triangle OXY in terms of k and θ. (The point O is the origin.)
You are given that, as θ varies, A has a minimum value. Find an expression in terms of k for this minimum value.

(ii)
Show that the length L of the perimeter of triangle OXY is given by L=1+tanθ+secθ+k(1+cotθ+cosecθ).
You are given that, as θ varies, L has a minimum value. Show that this minimum value occurs when θ=α where 1cosα1sinα=k. Find and simplify an expression for the minimum value of L in terms of α.

(STEP2019 MATHⅠ §A p1)

» 和訳はこちら

 

ある直線は定点 (1,k) を通り、勾配が tanθ であり、k>00<θ<12π を満たしている。θk を用いて、この直線と x 軸と y 軸との交点 X および Y の座標を求めよ。

 

(i)

三角形 OXY の面積 Akθ で表せ。(ただし点 O は原点とする)

θ が変化するとき、A は最小値を持つ。その最小値を k で表せ。

 

(ii)

三角形 OXY の外周の長さLが、L=1+tanθ+secθ+k(1+cotθ+cosecθ) で与えられることを示せ。

 

θ が変化するとき、L は最小値を持つ。この最小値は1cosα1sinα=kを満たす角 θ=α のときにとることを示せ。L の最小値を α を用いて簡単な式で表せ。

 

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《考え方》

問題の中身は至って普通です。まずは直線の方程式を求めましょう。


解答例

 

 the coordinates of the points X and Y

定点 (1,k) を通り、勾配が tanθ であるような直線 l の方程式はl:y=tanθx+k+tanθとなる。よってx切片およびy切片は x=ktanθ+1y=k+tanθ となるから、点 X および Y の座標はX(ktanθ+1,0),Y(0,k+tanθ)と求められる。

 

 

(ⅰ)

三角形 OXY の面積 AA=12×OX×OY=12(ktanθ+1)(k+tanθ)=12tanθ+k22tanθ+k

 

いま、tanθ>0 であるから相加・相乗平均の不等式より、A=12tanθ+k22tanθ+k=12(tanθ+k2tanθ)+k122tanθk2tanθ+k2k等号が成立するのはtanθ=k2tanθ、すなわち、tanθ=kのときである。0<θ<12π であるから tanθ は任意の正の実数値をとる。よって任意の k(>0) に対して tanθ=k となる θ が存在するから、最小値 2k は必ず存在する。

 

 

(ⅱ)

三角形 OXY の外周の長さLL=1+tanθ+1cosθ+k(1+1tanθ+1sinθ)で与えられることを示す。

 

{OX=ktanθ+1OY=k+tanθXY=OX2+OY2=(ktanθ+1)2+(k+tanθ)2=k2(1tan2θ+1)+2k(1tanθ+tanθ)+(tan2θ+1)=k2sin2θ+2ksinθcosθ+1cos2θ=(ksinθ+1cosθ)2=ksinθ+1cosθより、三角形 OXY の外周の長さ L (=OX+OY+XY)L=1+tanθ+1cosθ+k(1+1tanθ+1sinθ)で与えられる。

 

また、Lθ の関数 L(θ) と見なすと、L(θ)=1cos2θ+sinθcos2θksin2θkcosθsin2θ=sin2θ+sin3θk(cos2θ+cos3θ)sin2θcos2θとなる。

 

よって関数 L(θ) の増減はsin2θ+sin3θk(cos2θ+cos3θ)=0を満たすθの前後で変化する。この等式を整理すると、sin2θ+sin3θcos2θ+cos3θ=k sin2θ(1+sinθ)cos2θ(1+cosθ)=k (1cos2θ)(1+sinθ)(1sin2θ)(1+cosθ)=k 1cosθ1sinθ=kとなる。ここで、角 θ=α はこれを満たすから、1cosα1sinα=kを満たす角 θ=α のときにL は最小値をとる。

 

よって最小値は1+tanα+1cosα+1cosα1sinα(1+1tanα+1sinα)=1+sinα+1cosα+1cosα1sinα(1+cosα+1sinα)=1+sinα+1cosα+1cosα1sinα+1cos2αsinα(1sinα)=1+(1sin2α)+cosα(1cosα)cosα(1sinα)+sinα1sinα=1+11sinα+sinα1sinα=21sinαと求められる。

 


(コメント)

日本の入試と比べてどうでしょうか? 本問に関してはごく普通の問題という感じでしたね。(ⅰ)について、微分を用いてもAの最小値を求めることができます。ですが相加相乗平均の不等式を使う方が簡単だと思います。(ⅱ)では特に増減表を書いていませんが、L(θ) が最小値をとる(L(θ) が一度だけ負→正と符号が変化する)ことは sin2θ+sin3θcos2θ+cos3θ0<θ<π2 の範囲で単調増加することから導かれます。

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