今年の九州大学では文理ともに整数問題が出題されました。ここ5年ほど連続して整数分野からの出題が続いていますので、九大受験をする上で整数対策は不可欠と言えます。また、確率の問題は12年連続で出題があり、21世紀に入ってからの18年間で、確率分野からの出題が無かった年は2005年と2006年のたった2年だけです。九州大学を受験するなら整数と確率の対策が必須ですね!
整数 $a$、$b$ は $3$ の倍数ではないとし、$$f(x)=2x^3+a^2x^2+2b^2x+1$$とおく。以下の問いに答えよ。
(1)$f(1)$ と $f(2)$ を $3$ で割った余りをそれぞれ求めよ。
(2)$f(x)=0$ を満たす整数 $x$ は存在しないことを示せ。
(3)$f(x)=0$ を満たす有理数 $x$ が存在するような組 $(a,\ b)$ をすべて求めよ。
(九州大学2018年理系 第4問)
《考え方》
3次式と言えば、今年の首都大文系第2問に本問の類題が出題されています。本稿では合同式表示を使って解説していきますが、$x=3n+1$ などと置いて計算しても同じです。分かりにくいと感じたら自分で書き下してみましょう。以下の合同式では特に断りのない限り$3$を法としています。
解答例
(1)
まず仮定より、整数$a$、$b$は$3$の倍数でないので、$$\begin{cases} a \equiv \pm 1 \pmod{3} \\ b \equiv \pm 1 \pmod{3} \end{cases}$$と置くことができます。この2式の各辺を二乗すると$$\begin{cases} a^2 \equiv 1 \pmod{3} \\ b^2 \equiv 1 \pmod{3} \end{cases}$$となります。いま、$$f(1)=a^2+2b^2+3$$なので、これは$\bmod{3}$ において$$\begin{align} a^2+2b^2+3 &\equiv 1+2+3 \\ &\equiv 0 \end{align}$$と計算できます。よって$f(1)$を$3$で割った余りは $\color{red}{0}$ です。$f(2)$についても同様に、$$f(2)=4a^2+4b^2+17$$なので$\bmod{3}$ において$$\begin{align} 4a^2+4b^2+17 &\equiv a^2+b^2+2 \\ &\equiv 1+1+2 \\ &\equiv 1 \end{align}$$と計算できます。よって$f(2)$を$3$で割った余りは $\color{red}{1}$ です。
(2)
$f(x)=0$ より、$$2x^3+a^2x^2+2b^2x+1=0$$ $$\therefore (2x^2+a^2x+2b^2)x=-1$$となります。$x$が整数のとき $2x^2+a^2x+2b^2$ は整数なので、$x=\pm 1$ に限られますが、$x=1$ のとき、$$2+a^2+2b^2=-1$$となり左辺が正、右辺が負となり不合理です。また $x=-1$ のとき、$$2-a^2+2b^2=1$$ $$\therefore 2b^2+1=a^2$$となりますが、$b^2 \equiv 1 \pmod{3}$ より左辺は$3$の倍数となりますが、右辺の$a^2$は$3$の倍数でないので不合理です。したがって $f(x)=0$ を満たす整数 $x$ は存在しないことが示されました。
(3)
互いに素な整数$p$、$q$(ただし$q$は正)を用いて任意の有理数を$\dfrac{p}{q}$と表すことができます。これより、$x=\dfrac{p}{q}$ と置くと $f(x)=0$ より、$$2p^3+a^2p^2q+2b^2pq^3+q^3=0$$ $$\therefore 2p^3=-q(a^2p^2+2b^2pq+q^2)$$となります。これより、$q$は$2p^3$の約数となりますが、$p$、$q$は互いに素なので $q=1$ または $q=2$ に限られます。ここで(1)より、$f(x)=0$ を満たすような整数$x$は存在しないので $q=2$ に限ります。よって $q=2$ を代入すると、$$p^3=-a^2p^2-4b^2p-4$$ $$\therefore p(p^2+a^2p+4b^2)=-4$$となり、$p$が$4$の約数であることが分かります。$p$、$q$は互いに素なので$p$が偶数となることはありません。よって$$p= \pm 1$$と候補を絞ることができます。
ア)$p=1$ のとき$$1+a^2+4b^2=-4$$となり、左辺が正、右辺が負なので不合理。よって不適です。
イ)$p=-1$ のとき$$1-a^2+4b^2=4$$ $$\therefore (2b-a)(2b+a)=3$$となります。これより
$(a,\ b)=(\pm 1,\ \pm 1)$ (複号任意)
を得ますが、これらは確かに$3$の倍数ではないという条件を満たしているので適しています。
以上より、求める整数の組 $(a,\ b)$ は
$(a,\ b)=(\pm 1,\ \pm 1)$ (複号任意)
となります。
本問のような多項式をテーマにした整数問題では定数項に着目するのが定石です。今年は整式を題材とした整数問題が多数出題されている印象を受けますね(京大や千葉大の問題は本問とは毛色が違いますが)。