国公立大入試数学の解説第2弾はやはり京都大学でしょう。今年もしっかり整数問題が出題されましたが、京大数学の対策をしてきた受験生にとっては易問だったのではないでしょうか。
《問題》
$n^3-7n+9$ が素数となる整数 $n$ をすべて求めよ。
(京都大学2018年 文系第3問/理系第2問)
《考え方》
出た、一行問題!・・・と思いきや、内容は拍子抜けするほど簡単です。
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与式 $n^3-7n+9$ は$$n(n^2-7)+9$$と変形できるので任意の整数$n$に対して$3$の倍数となることが瞬時に分かります(但しこれは$3$の平方剰余に関する知識があれば、の話です)。合同式によれば瞬殺なのですが、「合同式を使うと減点される」という京大入試特有の迷信を信じるのであれば $n=3m \pm 1$ などと置いて計算してあげましょう。こちらの方針でも大した手間ではありません。
若しくは次のように変形するのもアリです。
$$\begin{align} n^3-7n+9 &=(n^3-7n+6)+3 \\ &=(n-1)(n-2)(n+3)+3 \\ &=n(n-1)(n-2)+3(n-1)(n-2)+3 \end{align}$$または$$\begin{align} n^3-7n+9 &=n^3-n-6n+9 \\ &=n(n^2-1)-3(2n-3) \\ &=(n+1)n(n-1)-3(2n-3) \end{align}$$といった式変形によれば、合同式や場合分けを持ち出さなくても、与式が常に$3$の倍数となることが示されます。
いずれにせよ与式は任意の整数$n$に対して$3$の倍数となるので、これが素数になるのであれば、それは$3$に限ります。したがって$$n^3-7n+9=3$$を満たす整数$n$をすべて求めれば十分です。これより、$$(n-1)(n-2)(n+3)=0$$ $$\therefore n=-3,\ 1,\ 2$$を得るので、求める整数は、$$n=\color{red}{-3},\ \color{red}{1},\ \color{red}{2}$$となります。
(コメント)
見た目的には一行問題なのですが、期待していたほど歯応えの無い問題でした。残念(笑)。
ただ、2016年の京大入試で出題された素数の絡む問題も$3$を法として絞り込みを掛けるタイプの出題でしたので、京大入試の整数問題で点を落としたくないのであれば$3$の平方剰余に関する知識は必ず身に付けておくべきでしょう。
2006年前期にもこの考え方を使う問題が出題されています。昔から京大受験では過去問の研究が欠かせないと言われていますが、こちらは迷信ではありません。ただ、今年はこんなに簡単な問題が出てしまっているので、今後数年は類題にお目にかかる機会が無さそうですね・・・(笑)。
もし$3$の平方剰余について予備知識が無くても、与式に小さい$n$を代入してみれば常に$3$の倍数となることが分かるはずです。そこから解き方を着想できれば全く問題ありません。やはり実験は大切です。
(全体を通して)
今年の京大数学は全体的に解きにくそうなので、バランスとしてはこれでも良いのかな?という気はします。ただ、この問題に10分以上も掛けているようでは、数学がそれなりに得意な人から差を付けられてしまうでしょう。
個人的には今年のセットの中では理系第6問(文系第4問と同一題)が面白い問題だと思います。これは京大数学対策の参考書に載るタイプの問題ですね(笑)。
“京都大学2018年理系第2問/文系第3問” への1件の返信