今回は京都大学の整数問題です。今年も昨年と同様、多項式が素数になる場合をすべて求めるタイプの問題でした。来年はそろそろ2変数の整数の問題が出題されるでしょうか?
《問題》
$f(x)=x^3+2x^2+2$ とする。$|f(n)|$と$|f(n+1)|$がともに素数となる整数$n$をすべて求めよ。
(京都大学2019年理系 第2問)
《考え方》
本問は「素数」という条件を使って絞り込むことがカギとなります。
・$3$以上の素数は奇数
・$1$と自身以外の約数をもたない
これらの性質は当たり前に思われますが、整数問題で絞り込みを行う際に意外に効いてきます。
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式を睨みつけていても仕方がないので、試しに$f(x)$に$n+1$を代入してみると、$$f(n+1)=n^3+5n^2+7n+5$$となります。しかしこれが因数分解できるわけでもないので、残念ながらこの計算はあまり重要ではありません。そこで、$|f(n+1)|$にこだわらずに考えてみます。
少し代入して計算してみると(一見しただけでも)分かることですが、$n$が偶数のとき $f(n)=n^3+2n^2+2$ は偶数となりますから、$|f(n)|$と$|f(n+1)|$のいずれか一方は常に偶数となります。偶数であるような素数は$2$しかありませんから、ここから絞り込みが可能となります。
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解答例
$n$を偶数とすると、$f(n)=n^3+2n^2+2$ は偶数となるから、$|f(n)|$と$|f(n+1)|$のいずれか一方は偶数である。したがって$|f(n)|$と$|f(n+1)|$がともに素数であるためには、偶数となる方が$2$に等しいことが必要である。
$f(n)=2$ とすると、$$n^3+2n^2+2=2$$ $$\therefore n^3+2n^2=0$$ $$\therefore n^2(n+2)=0$$より、$n=0,\,-2$ を得る。また、$f(n)=-2$ とすると、$$n^3+2n^2+2=-2$$ $$\therefore n^3+2n^2+4=0$$ となるが、これは整数解をもたない。
したがって $|f(n)|=2$ を満たすような整数$n$は $n=0,\,-2$ のみである。
これより、$|f(-3)|$、$|f(-1)|$、$|f(1)|$が素数になるかどうかを調べればよいが、$$|f(-3)|=7$$ $$|f(-1)|=5$$ $$|f(1)|=3$$より、いずれも素数である。
以上より、求める$n$は$$n=-3,\,-2,\,-1,\,0$$となる。
(コメント)
昨年に続き、平易な整数問題でした。結果的には$f(n+1)$の計算が全く不要でしたね。また、$f(n)=-2$ を満たす整数$n$が存在しないことはもう少し丁寧に説明しても良いでしょう。
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最近の京大数学は易化傾向が続いていますが、今年は常用対数表が出現するなどユニークな面もありました。その常用対数表を使うことになる第6問は虚数絡みのシンプルな整数問題(?)からの出題でした。やはり整数問題はシンプルなところが良いですね。
京大数学としては7年ぶりとなる小問集合が出題されたり、証明問題が出題されなかったりするなど、少し傾向が変わった部分もありましたが、全体としては歴代の京大数学の中でも控え目な難度だったように思います。
計算量を抑えるような方針で解いて時間を節約していけば、全問でそれなりの得点を確保できそうなセットでした。特に大問1,2,5,6辺りは落とすと差が付きそうです。
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