京都大学2020年前期文系数学第3問

前回に引き続き、今年の京大数学の整数問題を扱います。今回は文系の問題を取り上げますが、理系に出題しても試験として問題無く機能しそうな内容です。


《問題》

$a$を奇数とし、整数$m$、$n$に対して、$$f(m,n)=mn^2+ am^2+n^2+8$$とおく。$f(m,n)$が$16$で割り切れるような整数の組$(m,n)$が存在するための$a$の条件を求めよ。

(京都大学2020年 文系第3問)


《考え方》

面白そうな問題です。一目見て、$m$、$n$の対称式になっていないことが分かるので、どこかで場合分けが必要になるのではないかと予想されます。こういう問題ではいきなり「$16$で割り切れる」条件を考えるのではなく、「$2$で割り切れる」、「$4$で割り切れる」などの必要条件から絞っていくのが定石です。

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解答例

 

まず$$f(m,n)=(m+1)n^2+ am^2+8$$と変形する。$m$が奇数のとき、$(m+1)n^2$ は偶数になるが、$am^2$は奇数であるから$f(m,n)$が偶数にならない。よって$m$は偶数であることが必要である。$m$が偶数のとき$f(m,n)$が偶数となるためには $(m+1)n^2$ も偶数でなければならないが、$m+1$ が奇数であることから、$n$もまた偶数であることが必要である。

 

したがって、整数$M$、$N$を用いて$$\begin{cases} m=2M \\ n=2N \end{cases}$$と置ける。これを$f(m,n)$に代入すると、$$\small \begin{align} f(m,n) &=(2M+1)(2N)^2+ a(2M)^2+8 \\ &=4(2M+1)N^2+ 4aM^2+8 \\ &=4\{\underline{(2M+1)N^2+aM^2+2}\}\end{align}$$と整理できる。これより、$f(m,n)$が$16$で割り切れるためには上式の下線部が$4$の倍数となることが必要である。

 

そこで、$M$、$N$を$4$で割った余りで分類し、下線部に対して$4$を法とする合同類を計算すると以下のようになる。$$\small \begin{array}{|c||c|c|c|c|}
\hline M\,\backslash\,N & 0 & 1 & 2 & 3 \\
\hline 0 & 2 & 3 & 2 & 3 \\
\hline 1 & a+2 & \boxed{a+1} & a+2 & \boxed{a+1} \\
\hline 2 & 2 & 3 & 2 & 3 \\
\hline 3 & a+2 & \boxed{a+1} & a+2 & \boxed{a+1} \\
\hline
\end{array}$$ $a$は奇数であるから、$a+2$ が$4$の倍数となることはない。よって表より、下線部が$4$の倍数となり得るのは表中の枠で囲った組の場合に限られる。

 

よって $a+1$ が$4$の倍数となる、すなわち、$a$を$4$で割った余りが$3$となる場合に、$f(m,n)$が$16$で割り切れるような整数の組$(m,n)$が存在する。

 

逆に、ある整数$A$を用いて $a=4A-1$ と置くとき、上式の下線部について$$\small \begin{align} & \, \quad (2M+1)N^2+aM^2+2 \\ &=(2M+1)N^2+(4A-1)M^2+2 \\ &\equiv (N^2-M^2)+2(MN^2+1) \pmod{4}\end{align}$$となるから、$M$、$N$をともに奇数とすれば、これは$a$の値に依らず$4$の倍数となる。したがって、$4$で割った余りが$2$となる整数として$m$および$n$を与えれば、$f(m,n)$が$16$で割り切れるような整数の組$(m,n)$が存在することが言える。

 

以上より、 求める$a$の条件は、

$4$で割った余りが$3$

となる。


(コメント)

解答例中の下線部の式について、行儀良く場合分けして$4$の倍数になるかどうかを調べるのは手間です。合同式を使って表にして一気に片付けると必要条件も分かりやすくなりますし、時間節約にも繋がります。また、このとき単純に偶奇を調べるのではなく、「$4$」を法とする合同類を調べているのも、場合分けをショートカットするためです。

 

それから、「$4$で割った余りが$3$」という条件に行き着いても、その逆(そのような$a$に対して$m$、$n$が存在するかどうか)について言及している答案というのは少ないものです。求められた$a$の条件に対して、題意を満たす組$(m,n)$が存在するかどうかをちゃんと確かめる必要があります。この点については採点官もちゃんとチェックしていると思いますので、最低でも一言くらいは触れておくべきでしょう。

 

今年の京大文系もここ数年と比べて難化した印象です。昨年と同様、文系数学では全く誘導設問が無く、かなり解きにくいセットとなりました。特に第2問は放物線の直交截線(ちょっこうせっせん)に関する出題があり、やや目を引きました。

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