京都大学2020年前期理系数学第4問

今年の京大理系数学の整数問題を扱います。今回はやや難化した印象です。


《問題》

正の整数aに対して、

a=3bc (b,cは整数でc3で割り切れない)

の形に書いたとき、B(a)=b と定める。例えば、B(325)=2 である。

m,nは整数で、次の条件を満たすとする。

 (ⅰ) 1m30
 (ⅱ) 1n30
 (ⅲ) n3で割り切れない

このような(m,n)についてf(m,n)=m3+n2+n+3とするとき、A(m,n)=B(f(m,n))の最大値を求めよ。また、A(m,n)の最大値を与えるような(m,n)をすべて求めよ。

(京都大学2020年 理系第4問)


《考え方》

A(m,n)は「関数 f(m,n)3で最大何回割り切れるか」を表す関数になっています。これを最大化するような30以下の正の整数の組(m,n)を求める、というのが本問の趣旨です。

二変数関数という点が厄介ですが、まずはf(m,n)3の倍数となる条件を考えるところから始めましょう。その際、「n3の倍数でない」という条件を忘れてはいけません。n3で割った余りについて分類してからmの候補を絞り込む、というアプローチが第一選択です。

●   ●   ●

解答例

 

n1(mod3) のとき、f(m,n)=m3+n2+n+3m3+2(mod3)となる。これが3の倍数となるにはm31(mod3)が必要であり、m1(mod3) がこれを満たす。

 

また、n1(mod3) のとき、f(m,n)=m3+n2+n+3m3(mod3)となる。よって、m0(mod3) がこれを満たす。

 

以上より、(m,n)(0,2),(1,1)となることが必要である。

 

(ア)(m,n)(0,2) のとき、ある整数 M,N を用いてm=3M,n=3N1と表せる。ただし整数 M,N1M101N10 を満たすものとする。

 

これをf(m,n)に代入して整理するとf(m,n)=3(9M3+3N2N+1)を得る。よって A(m,n)2 となるためには9M3+3N2N+10(mod3)が必要であるから、少なくとも N1(mod3) が必要となる。このときnとして可能なものは 2112029 の4つであり、このときn2112029N14710n2+n+33233532473297となるから、これらのnについてf(m,n)=m3+n2+n+3の下線部は9の倍数となる。そこで整数kを用いて n2+n+3=9k と置くと、f(m,n)=27M3+9k=9(3M3+k)となる。したがってk3の倍数のとき A(m,n)3 となるが、そのようなnn=11 のみである。n=11 とすると k=15 となるからf(m,n)=27M3+9k=27(M3+5)となる。さらに M3+53の倍数となるためには M1(mod3) が必要となる。このときmとして可能なものは 3122130 の4つであり、このときm3122130M14710f(m,11)234342322342934567となるから、これらのmの値はすべて A(m,n)=4 を満たす。

 

(イ)(m,n)(1,1) のとき、ある整数 M,N を用いてm=3M+1,n=3N+1と表せる。ただし整数 M,N0M90N9 を満たすものとする。

これをf(m,n)に代入して整理するとf(m,n)=3{3(3M3+3M2+M+N2+N)+2}を得る。ここで下線部は3の倍数でないから、このとき A(m,n)=1 となる。

 

以上 (ア)、(イ) よりA(m,n) の最大値は4であり、そのときの(m,n)の組は(3,11),(12,11),(21,11),(30,11)である。


(コメント)

京大では多項式が素数になる条件に関する出題は過去に複数見られますが、素因数の個数に関する出題はそれほど多くない気がします。素因数の個数がテーマの問題としては京大の2010年理系(乙)第5問などに類題がありますので、一度さらっておくと良いでしょう。来年も整数問題が出題されると想定してしっかり対策しておくべきですね!

 

なお、「(ⅲ) n3で割り切れない」という条件が無ければ、(m,n)=(9,15),(18,15),(27,15)のときに A(m,n)=5 となります。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

©Copyright 2017-2025 理系のための備忘録 All Rights Reserved.