今年の京大理系数学の整数問題を扱います。今回はやや難化した印象です。
《問題》
正の整数$a$に対して、
$a=3^bc$ ($b,\,c$は整数で$c$は$3$で割り切れない)
の形に書いたとき、$B(a)=b$ と定める。例えば、$B(3^2 \cdot 5)=2$ である。
$m,\,n$は整数で、次の条件を満たすとする。
(ⅰ) $1 \leqq m \leqq 30$
(ⅱ) $1 \leqq n \leqq 30$
(ⅲ) $n$は$3$で割り切れない
このような$(m,n)$について$$f(m,n)=m^3+n^2+n+3$$とするとき、$$A(m,n)= B(f(m,n))$$の最大値を求めよ。また、$A(m,n)$の最大値を与えるような$(m,n)$をすべて求めよ。
(京都大学2020年 理系第4問)
《考え方》
$A(m,n)$は「関数 $f(m,n)$ が$3$で最大何回割り切れるか」を表す関数になっています。これを最大化するような$30$以下の正の整数の組$(m,n)$を求める、というのが本問の趣旨です。
二変数関数という点が厄介ですが、まずは$f(m,n)$が$3$の倍数となる条件を考えるところから始めましょう。その際、「$n$が$3$の倍数でない」という条件を忘れてはいけません。$n$を$3$で割った余りについて分類してから$m$の候補を絞り込む、というアプローチが第一選択です。
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解答例
$n \equiv 1 \pmod{3}$ のとき、$$\begin{aligned}
f(m,n) &= m^3+n^2+n+3 \\ & \equiv m^3+2 \pmod{3}
\end{aligned}$$となる。これが$3$の倍数となるには$$m^3 \equiv 1 \pmod{3}$$が必要であり、$m \equiv 1 \pmod{3}$ がこれを満たす。
また、$n \equiv -1 \pmod{3}$ のとき、$$\begin{aligned}
f(m,n) &= m^3+n^2+n+3 \\ & \equiv m^3 \pmod{3}
\end{aligned}$$となる。よって、$m \equiv 0 \pmod{3}$ がこれを満たす。
以上より、$$(m, n) \equiv(0,2),(1,1)$$となることが必要である。
(ア)$(m, n) \equiv(0,2)$ のとき、ある整数 $M,N$ を用いて$$m=3M, \, n=3N-1$$と表せる。ただし整数 $M,N$ は $1 \leqq M \leqq 10$、$1 \leqq N \leqq 10$ を満たすものとする。
これを$f(m,n)$に代入して整理すると$$f(m,n)=3(9M^3+3N^2-N+1)$$を得る。よって $A(m,n) \geqq 2$ となるためには$$9M^3+3N^2-N+1 \equiv 0 \pmod{3}$$が必要であるから、少なくとも $N \equiv 1 \pmod{3}$ が必要となる。このとき$n$として可能なものは $2$、$11$、$20$、$29$ の4つであり、このとき$$\small \begin{array}{|c||c|c|c|c|}
\hline n & 2 & 11 & 20 & 29 \\
\hline N & 1 & 4 & 7 & 10 \\
\hline n^{2}+n+3 & 3^2 & 3^3 \cdot 5 & 3^2 \cdot 47 & 3^2 \cdot 97 \\
\hline
\end{array}$$となるから、これらの$n$について$$f(m,n)=m^3+\underline{n^2+n+3}$$の下線部は$9$の倍数となる。そこで整数$k$を用いて $n^2+n+3=9k$ と置くと、$$\begin{aligned}
f(m,n) &= 27M^3+9k \\ & =9(3M^3+k)
\end{aligned}$$となる。したがって$k$が$3$の倍数のとき $A(m,n) \geqq 3$ となるが、そのような$n$は $n=11$ のみである。$n=11$ とすると $k=15$ となるから$$\begin{aligned}
f(m,n) &= 27M^3+9k \\ & =27(M^3+5)
\end{aligned}$$となる。さらに $M^3+5$ が$3$の倍数となるためには $M \equiv 1 \pmod{3}$ が必要となる。このとき$m$として可能なものは $3$、$12$、$21$、$30$ の4つであり、このとき$$\small \begin{array}{|c||c|c|c|c|}
\hline m & 3 & 12 & 21 & 30 \\
\hline M & 1 & 4 & 7 & 10 \\
\hline f(m,11) & 2 \cdot 3^4 & 3^4 \cdot 23 & 2^2 \cdot 3^4 \cdot 29 & 3^4 \cdot 5 \cdot 67 \\
\hline
\end{array}$$となるから、これらの$m$の値はすべて $A(m,n)=4$ を満たす。
(イ)$(m, n) \equiv(1,1)$ のとき、ある整数 $M,N$ を用いて$$m=3M+1, \, n=3N+1$$と表せる。ただし整数 $M,N$ は $0 \leqq M \leqq 9$、$0 \leqq N \leqq 9$ を満たすものとする。
これを$f(m,n)$に代入して整理すると$$\small f(m, n) = 3 \left\{\underline{3\left(3 M^{3}+3 M^{2}+M+N^{2}+N\right)+2}\right\}$$を得る。ここで下線部は$3$の倍数でないから、このとき $A(m,n)=1$ となる。
以上 (ア)、(イ) より、 $A(m,n)$ の最大値は$$\color{red}{4}$$であり、そのときの$(m, n)$の組は$$\color{red}{(3,11),(12,11),(21,11),(30,11)}$$である。
(コメント)
京大では多項式が素数になる条件に関する出題は過去に複数見られますが、素因数の個数に関する出題はそれほど多くない気がします。素因数の個数がテーマの問題としては京大の2010年理系(乙)第5問などに類題がありますので、一度さらっておくと良いでしょう。来年も整数問題が出題されると想定してしっかり対策しておくべきですね!
なお、「(ⅲ) $n$は$3$で割り切れない」という条件が無ければ、$$(m, n)=(9,15),(18,15),(27,15)$$のときに $A(m,n)=5$ となります。