分数式の整数問題(2018年の入試から)

久し振りの更新となりました。今回は今年の大学入試数学から分数式が登場する整数問題を2問取り上げます。1つ目は小樽商科大学、もう一つは千葉大後期の問題です。

  • 小樽商科大学2018年 第2問


《問題》

(1)$|2x-2|<x^2+2x+2$ を満たす実数 $x$ の範囲を求めよ。

(2)$\dfrac{2n-2}{n^2+2n+2}$ が整数となるような整数 $n$ をすべて求めよ。

(小樽商科大学2018年 第2問)


誘導設問のありがたい問題です。素直に場合分けします。

《解答例》

(1)

ⅰ)$2x-2>0$、即ち $x>1$ のとき、与不等式は$$2x-2<x^2+2x+2$$ $$\therefore x^2>-4$$となる。これは $x>1$ を満たすすべての実数$x$で成り立つから、求める範囲は $x>1$ となる。

ⅱ)$2x-2 \leqq 0$、即ち $x \leqq 1$ のとき、与不等式は$$-2x+2<x^2+2x+2$$ $$\therefore x^2+4x>0$$ $$\therefore x(x+4)>0$$となるから、求める範囲は $x<-4,\ 0<x \leqq 1$ となる。

以上より、求める実数$x$の範囲は$$\color{red}{x<-4,\ 0<x}$$となる。

(2)

与式 $\dfrac{2n-2}{n^2+2n+2}$ が$0$となるとき、$$n=1$$である。また、$0$でない整数となるとき、分子は分母の整数倍となる必要があるから、少なくとも$$|2n-2| \geqq n^2+2n+2 \tag*{・・・(★)}$$が必要である。ここで(1)の結果から、$(★)$を満たす整数$n$の範囲は$$-4 \leqq n \leqq 0$$に限られることが分かる。このうちで与式が整数値をとるものを探すと、$$\color{red}{n=1,\ 0,\ -1,\ -2,\ -4}$$と求められる。

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絶対値の付いた不等式の処理で躓かなければ特に問題はなさそうです。解の候補が多いときは分子と分母の偶奇性や素因数に着目して条件を絞り込むことができます。

今回は誘導設問がありましたが、特に誘導が無い場合、(2)は次のように解くこともできます。

《(2)別解 》

$k$を整数とし、$$\dfrac{2n-2}{n^2+2n+2}=k$$と置く。これより2次方程式$$kn^2+2(k-1)n+2(k+1)=0$$を得る。これが実数解$n$を持つためには判別式$D$について、$$D/4=(k-1)^2-k \cdot 2(k+1) \geqq 0$$が成り立つことが必要である。故に整数$k$に関して$$-2-\sqrt{5}<k<-2+\sqrt{5}$$が必要となるから、$$k=-4,\ -3,\ -2,\ -1,\ 0$$に限られる。

$k=0$ のとき $n=1$

$k=-1$ のとき $n^2+4n=0$ $$\therefore n=0,\ -4$$

$k=-2$ のとき $2n^2+6n+2=0$ となり、これを満たす整数$n$は存在しない。

$k=-3$ のとき $3n^2+8n+4=0$ $$\therefore (n+2)(3n+2)=0$$ $$\therefore n=-2$$

$k=-4$ のとき $2n^2+5n+3=0$ $$\therefore (n+1)(2n+3)=0$$ $$\therefore n=-1$$

以上より、$$\color{red}{n=1,\ 0,\ -1,\ -2,\ -4}$$と求められる。

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不等式だけを追っていると与式が$0$となる場合を見落としてしまいやすいですが、判別式による方法では見落としのリスクがやや減少します。2次式の分数式では比較的よく使われる手法です。

続いて千葉大後期の問題を見ていきましょう。

  • 千葉大学2018年後期 第2問


《問題》

$\dfrac{8a+8}{a^2+4a+12}$ が整数となる整数 $a$ の値をすべて求めよ。

(千葉大学2018年後期 第2問)


整数分野の一行問題ですが、2次の分数式なので後期試験としては易しめです。

《解答例》

与式$$\dfrac{8a+8}{a^2+4a+12} \tag*{・・・(*)}$$が$0$となるとき、$a=-1$ である。また、$0$でない整数となるとき、$$|8a+8| \geqq a^2+4a+12$$が必要である。

ⅰ)$8a+8>0$、即ち $a>-1$ のとき、与不等式は$$8a+8 \geqq a^2+4a+12$$ $$\therefore a^2-4a+4 \leqq 0$$ $$\therefore (a-2)^2 \leqq 0$$ $$\therefore a=2$$となる。これは $a>-1$ を満たし、かつ与式$(*)$は整数値$1$をとる。

ⅱ)$8a+8 \leqq 0$、即ち $a \leqq -1$ のとき、与不等式は$$-8a-8 \geqq a^2+4a+12$$ $$\therefore a^2+12a+20 \leqq 0$$ $$\therefore (a+2)(a+10) \leqq 0$$ $$\therefore -10 \leqq a \leqq -2$$となる。これは $a \leqq -1$ を満たしている。

ここで $\bmod{3}$ を考えると、$$\begin{cases} 8a+8 &\equiv -a-1 \\ a^2+4a+12 &\equiv a^2+a =a(a+1) \end{cases} \pmod{3}$$となるので、$a$が$3$の倍数のとき、分子は$3$の倍数でないが分母が$3$の倍数となって割り切れない。したがって$a$は$3$の倍数でない。よって残りの$a$の候補は$$a=-2,\ -4,\ -5,\ -7,\ -8,\ -10$$に絞られる。

$a=-2$ のとき $(*)=-1$、

$a=-4$ のとき $(*)=-2$、

$a=-5$ のとき $(*)=-\dfrac{32}{17}$、

$a=-7$ のとき $(*)=-\dfrac{16}{11}$、

$a=-8$ のとき $(*)=-\dfrac{14}{11}$、

$a=-10$ のとき $(*)=-1$ となる。

よって求める整数$a$は$$\color{red}{n=2,\ -1,\ -2,\ -4,\ -10}$$となる。

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不等式で処理しましたが、こちらも先程の小樽商科大の問題と同様、2次の分数式なので判別式の実数解条件などから絞り込むことができます。場合分けがない分、判別式による解法の方がスッキリ解けるかもしれません。ただし、この方法は2次の分数式にしか適用できないのが難点です。例えば、以下のような問題だと不等式によるアプローチが適切でしょう。

  • 改題してみると・・・


《問題》

$\dfrac{8a+8}{a^3+4a+12}$ が整数となる整数 $a$ の値をすべて求めよ。

(千葉大学2018年後期 第2問 改題)


よく見ると分母が3次式になっています。こんな問題で3次方程式の解の公式を持ち出すと訳が分かりませんので、やはり不等式を用いた解法を選択することになります。

 

» 改題の答えはこちら

答えは $\color{red}{a=-1,\ -2}$ です。

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(コメント)

分数式を題材とした整数問題は頻出です。恐らく来年度の入試でも出題される可能性が高いでしょう。解き方は単純なのでしっかり対策しておきたいですね!

 

“分数式の整数問題(2018年の入試から)” への4件の返信

  1. 千葉大学2018年後期 第2問)を 拝見致しました。

    ((1 + t + t^2)/(1 – 4 t + 2 t^2), (-1 + t + t^2)/(1 – 4 t + 2 t^2))
    ∈Z^2 となる t∈Z を 求めて下さい;

  2. 管理人の pencil と申します。
    act さん、誤植のご指摘ありがとうございます。

    このページに限らず、他にも誤植等が残っているかもしれません。
    恐れ入りますが、発見された場合はコメント、若しくはお問い合わせフォームにてご連絡して頂けると幸いです。

    今後とも当サイトを宜しくお願い致します。

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