最近はなかなか時間が取れず、創作整数問題は久方ぶりの更新となりました。細々と続けてきたこのシリーズもやっと40題目です。
創作整数問題#40
《問題#40》
関数$$f(n)=\dfrac{13}{6}n^3-\dfrac{19}{2}n^2+\dfrac{55}{3}n-8$$が$40$の倍数となるような$2018$以下の正の整数$n$の個数を求めよ。
(創作問題)
単純な剰余に関する問題です。やるべきことが分かっていれば単に少し面倒なだけで、何ということは無いと思います。因みにこの関数$f(n)$はすべての整数$n$に対して整数値を与えますが、このことの証明は容易でしょう。
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答えは $\color{red}{127}$個 です。
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創作整数問題#39(解き方)
整数$n$の方程式$$\left[\left[\left[\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] =4$$を解け。ただし、$[x]$は実数$x$を超えない最大の整数を表すものとする。 |
まずはガウス記号の定義を簡単におさらいしておきましょう。
ガウス記号
実数$x$に対して、$x$を超えない最大の整数を $[x]$ と表す。特に、不等式$$[x] \leqq x <[x]+1$$が成り立つ。
言葉で説明するとやや分かりにくいかもしれませんが、要するに
「実数$x$の整数部分」
を $[x]$ と表現しているだけです($x$が負のときは「整数部分」という表現は微妙ですが・・・)。
例えば、$[3.14]=3$、$[-2.718]=-3$、$[-4]=-4$、・・・のようになります。$x$の絶対値が$1$未満のときや、$x$が負のときは高確率で間違う人が出てきます。この辺りは慣れておく必要があります。
● ● ●
さて、本問はおおよその場合、次の2パターンの解法(※)が考えられます。
①不等式を利用する方法
②$n$の偶奇性に着目する方法
いずれの方法でも解答可能ではありますが、この問題の場合は計算ミスを抑えられる②の解法の方が有利かもしれません。
(※2018/05/17追記)
HN たけちゃん さんからコメント欄にて、エレガントな別解を頂きました!
解答例①
$t=\dfrac{n^2}{2}+n$ と置くと、与式は$$\left[\left[\left[\left[t\right] +t\right] +t\right] +t\right] =4$$となる。ガウス記号の性質より、$$4 \leqq \left[\left[\left[t\right] +t\right] +t\right] +t <5 \tag{1}$$を得る。ここで $m=\left[\left[t\right] +t\right]$ と置くと、$$m+t-1 < [m+t] \leqq m+t$$が成り立ち、この各辺に$t$を加えることで$$m+2t-1 < [m+t]+t \leqq m+2t \tag{2}$$を得る。$(1)$及び$(2)$より、これらの不等式を満たす$m$、$t$が存在するためには$$\begin{cases}m+2t-1 < 5 \\ m+2t \geqq 4 \end{cases}$$が必要である。これより$$\therefore 4 \leqq m+2t < 6 \tag{★}$$を得る。
また、$t-1 < [t] \leqq t$ より、この各辺に$t$を加えることで$$2t-1<[t]+t\leqq 2t$$を得る。これより、ガウス記号を取ると$$\therefore 2t-2<[[t]+t]\leqq 2t$$となるので、辺々に$2t$を加えて$$4t-2<m+2t\leqq 4t \tag{3}$$を得る。よって$(★)$を満たす$m$、$t$が存在するためには$$\begin{cases}4 \leqq 4t \\ 4t-2<6 \end{cases}$$が必要である。これより$$\therefore 1 \leqq t < 2$$が必要となる。よって$$1 \leqq \dfrac{n^2}{2}+n < 2$$
$\therefore -1-\sqrt{5}<n\leqq -1-\sqrt{3}$ かつ $\sqrt{3}-1<n\leqq \sqrt{5}-1$
を得る。これより $n=-3$ または $n=1$ に絞られるが、$n=-3$ のとき$$t=\dfrac{9}{2}-3=1.5$$となり $[t]=1$ となるので適する。また、$n=1$ のときも$$t=\dfrac{1}{2}+1=1.5$$となり $[t]=1$ となるので適する。
以上より、求める整数$n$は$$\color{red}{n=-3,\ 1}$$となる。
解答例②
以下、$N$を整数とする。
(ア)$n=2N$ のとき、$\dfrac{n^2}{2}+n=2N^2+2N$ より、与式の左辺は
$$\scriptsize \begin{align}&\ \ \ \ \ \left[\left[\left[\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] \\
&=\left[\left[\left[\left[2N^2+2N\right] +2N^2+2N\right] +2N^2+2N\right] +2N^2+2N\right] \\
&=\left[\left[\left[4N^2+4N\right] +2N^2+2N\right] +2N^2+2N\right] \\
&=\left[\left[6N^2+6N\right] +2N^2+2N\right] \\
&=\left[8N^2+8N\right] \\
&=8N^2+8N \end{align}$$
と整理できるから、与式は$$8N^2+8N=4$$と書き直せるが、左辺は$8$の倍数であるのに右辺は$8$の倍数でないので不合理。よってこのときは解が存在しない。
(イ)$n=2N+1$ のとき、$\dfrac{n^2}{2}+n=2N^2+4N+\dfrac{3}{2}$ より、与式の左辺は
$$\scriptsize \begin{align}&\ \ \ \ \ \left[\left[\left[\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] \\
&=\left[\left[\left[\left[2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] \\
&=\left[\left[\left[(2N^2+4N+1) +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] \\
&=\left[\left[\left[4N^2+8N+\dfrac{5}{2}\right] +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] \\
&=\left[\left[(4N^2+8N+2) +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] \\
&=\left[\left[6N^2+12N+\dfrac{7}{2}\right] +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] \\
&=\left[(6N^2+12N+3) +2N^2+4N+\dfrac{3}{2}\right] \\
&=\left[8N^2+16N+\dfrac{9}{2}\right] \\
&=8N^2+16N+4 \end{align}$$
と整理できるから、与式は$$8N^2+16N+4=4$$と書き直せて、これより$$N=-2,\ 0$$を得る。
以上より、求める整数$n$は$$\color{red}{n=-3,\ 1}$$となる。
(コメント)
解答例①は不等式による絞り込みだけで解決しました。所詮は整数が相手なので、手計算で調べられる程度の範囲・個数に絞ることができればOKです。また、解答例②では途中式を丁寧に書き下しているので何となく難しそうに見えていますが、実際にはごく単純な計算をしているだけです。
この創作整数問題シリーズでは初登場となったガウス記号ですが、大学入試のみならず、難関私立高校の入試などでもガウス記号は頻出です。一般的に、ガウス記号の絡んだ問題は悉く得点率が低くなる傾向にあります。少しでも苦手意識のある方はしっかりと対策しておきたいですね。
#39は,ガウス記号の性質に着目する次の方法を考えていました.
(解答例1と少し似ていますが,同値変形だけで処理できます.)
実数 $x$,整数 $n$ に対して,$[x+n]=[x]+n$ であることに注意する.
任意の実数 $y$ に対し,$[y]$ は整数だから,
$[[y]+x]=[y]+[x].$
したがって,与えられた方程式の左辺は,
$$\left[\left[\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right]$$
$$\left[\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right]$$
$$\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right]$$
$$\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right] +\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right]$$
と変形され,方程式は
$$\left[\dfrac{n^2}{2}+n\right]=1.$$
これは
$$1\leqq\dfrac{n^2}{2}+n<2$$
を意味し,$3\leqq(n+1)^2<5$ となって,
整数 $n$ は,$n=-3,1.$
あれれ,式変形で,最後は同じものを2つ書いてしまいました.
どうも失礼しました.
たけちゃん さん
コメントありがとうございます。
$[x+n]=[x]+n$ というガウス記号の基本的な性質を利用すれば瞬殺ですね!
この別解を見ると解答例の解き方がいかに回り道であるかを思い知らされます。
別解のご提供に感謝致します。