創作整数問題#67解法&創作整数問題#68

新型コロナウイルスの影響で今年は帰省を断念された方が全国的にかなり多いようです。早くワクチンが供給されるかウイルスが弱毒化して社会的収束に至るのを待つしかありませんね・・・。


創作整数問題#68


《問題#68》

約分をする際、$$\dfrac{12}{24}=\dfrac{\,1\!\cancel{2}}{\!\cancel{2}\!4}=\dfrac{1}{4}$$という操作は $\dfrac{12}{24} \ne \dfrac{1}{4}$ であるから一般には誤りとなるが、しばしば$$\dfrac{16}{64}=\dfrac{\,1\!\cancel{6}}{\!\cancel{6}\!4}=\dfrac{1}{4}$$のように偶然うまくいく場合も存在する。

このように通常の約分に対して、分子と分母に共通の数字(ただし$0$を除く)が含まれている場合にそれらを打ち消して作った新たな分数から既約分数を得ることを「異常な約分」と呼ぶ。例えば、$\dfrac{36}{69}$に異常な約分を施すと $\dfrac{3}{9}=\dfrac{1}{3}$ となり、$\dfrac{12}{24}$は通常の約分と異常な約分が異なる分数であり、$\dfrac{16}{64}$は通常の約分と異常な約分が一致する分数である。

このことを踏まえた上で、以下の条件を満たす分数をすべて求めよ。

(A)$1$未満の正の分数として表せる
(B)分子と分母がともに2桁の整数である
(C)通常の約分と異常な約分が一致する

(創作問題)


$\require{cancel}$いわゆる「異常約分」に関する問題です。時々、算数パズルなどで取り上げられることがある気がしますが、この名称は日本では一切知られていないようです(検索しても全くヒットせず、Wikipediaには日本語版のページはありません)。英語では “Anomalous cancellation” と呼ばれ、中国語圏では「偶然對消」や「異常對消」と呼ばれているようです。また一つ賢くなってしまいましたね・・・(笑)

さて、このような分数を総当たりで探索しようとすると4000通りくらいの組について調べなければならないので、何とかうまく絞り込みたいところです。

それから、どこにも言及がありませんが(当然ながら)十進法で考えて下さい・・・。十進法以外の記数法の場合についての考察はご自由にやって頂いて構いませんが、面倒そうです。

 

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答えは $\color{red}{\dfrac{16}{64},\dfrac{26}{65},\dfrac{19}{95},\dfrac{49}{98}}$ の4個です。

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創作整数問題#67(解き方)


$x+y$、$x+2y$、$2x+y$ がいずれも平方数となるような整数の組$(x,y)$をすべて求めよ。

「平方数となる」という条件を文字によって式化すると議論しやすくなります。自明なもの($(x,y)=(0,\,0)$)はすぐに見つかりますので、それ以外の場合について解が存在しないことを示します。

解答例

 

まず、$(x,y)=(0,\,0)$ は題意を満たす整数組である。また、$x$と$y$のうち片方が$0$だとすると、もう一方は平方数でなければならないが、これに$2$を乗じた数は平方数になり得ないので不適である。そこで以下では$x$と$y$はどちらも$0$でないものとする。

 

このとき整数 $a$、$b$、$c$ が存在して$$\left\{\begin{array}{ll}
x+y=a^{2} & \cdots ① \\
x+2 y=b^{2} & \cdots ② \\
2 x+y=c^{2} & \cdots ③
\end{array}\right.$$と置ける。

 

②+③ より、$$3(x+y)=b^{2}+c^{2}$$となるので①より、$$\therefore 3 a^{2}=b^{2}+c^{2} \quad \cdots ④$$ $\bmod 3$ で考えると$$b^{2}+c^{2} \equiv 0 \pmod{3}$$が必要となる。ここで、平方数を$3$で割った余りが$0$または$1$に限ることを考えると、$$b \equiv c \equiv 0 \pmod{3}$$が必要となる。よって整数$B$、$C$を用いて $b=3B$、$c=3C$ と置くと、④より$$a^{2}=3(B^{2}+C^{2})$$となる。故に$a$も$3$の倍数であることが必要だから $a=3A$ と置くと、$$3 A^{2}=B^{2}+C^{2} \quad \cdots ⑤$$を得る。

 

⑤は④と同じ形であり、全く同様の議論により $A$、$B$、$C$ もまた$3$の倍数となることが言え、これは無限に繰り返すことができる。しかし素因数$3$を無限にもつ正の整数は存在しないので、これは不合理。したがって、このような整数 $a$、$b$、$c$ は存在しない。

 

以上より、求める整数組は$$(x,y)=\color{red}{(0,\,0)}$$である。

 


(コメント)

無限降下法による証明がポイントです。いまは$3$という素因数に着目しましたが、$\bmod 4$ で考えることもできます。以下のように剰余を表にして考えると分かりやすいでしょう。

 

$x+y$ の剰余表は以下の通りです。$$\begin{array}{c|c|c|c|c}
{{}_x \backslash}^y & 0 & 1 & 2 & 3 \\
\hline 0 & 0 & 1 & 2 & 3 \\
\hline 1 & 1 & 2 & 3 & 0 \\
\hline 2 & 2 & 3 & 0 & 1 \\
\hline 3 & 3 & 0 & 1 & 2
\end{array}$$

$x+2y$ の剰余表は以下の通りです。四角で囲んでいるものは $x+y$ と $x+2y$ の両方が平方数となる可能性のある組です。$$\begin{array}{c|c|c|c|c}
{{}_x \backslash}^y & 0 & 1 & 2 & 3 \\
\hline 0 & \boxed{0} & 2 & 0 & 2 \\
\hline 1 & \boxed{1} & 3 & 1 & 3 \\
\hline 2 & 2 & 0 & 2 & \boxed{0} \\
\hline 3 & 3 & \boxed{1} & 3 & 1
\end{array}$$ $2x+y$ の剰余表はこれを対角線に関してひっくり返したものになるので、四角で囲まれたマスのうち重なるのは結局$$(x,y) \equiv (0,0) \pmod{4}$$の組み合わせしかありません。したがって、$x,y$ は$4$の倍数でなければならず、解答例と同様に無限降下法の議論によって $x,y$ は無限に$4$を約数にもつことが要請されるので矛盾が導かれます。


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