今年の名古屋大学の数学は全体的に難化気味だったようです。今日紹介する文系第3問も文系の出題としてはなかなか手強い問題です。
《問題》
次の問いに答えよ。
(1)次の条件(*)を満たす3つの自然数の組$(a,b,c)$をすべて求めよ。
(*)$a < b < c$ かつ $\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c} =\dfrac{1}{2} $ である。
(2)偶数 $2n \ (n \geqq 1)$の3つの正の約数 $p、q、r$ で、$p>q>r$ と $p+q+r=n$ を満たす組$(p,q,r)$の個数を$f(n)$とする。ただし、条件を満たす組が存在しない場合は、$f(n)=0$ とする。$n$が自然数全体を動くときの$f(n)$の最大値$M$を求めよ。また、$f(n)=M$ となる自然数$n$の中で最小のものを求めよ。
(名古屋大学2017 前期文系第3問)
《考え方》
(1)は単位分数の和の方程式の典型題ですね。
$a < b < c$ という条件から、$\dfrac{1}{a} > \dfrac{1}{b} > \dfrac{1}{c}$ が導かれるので、与式より$$\dfrac{1}{2}=\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c} < \dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{a}=\dfrac{3}{a}$$ $$\therefore a<6$$を得ます。$a=1、2$ とすると $b、c$ が存在しないので、$a=3、4、5$ に限られます。
ⅰ)$a=3$ のとき
$$\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c} =\dfrac{1}{6}$$となる。$\dfrac{1}{6}=\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{b}<\dfrac{2}{b}$ より $3<b<12$ であり、$\dfrac{1}{b}<\dfrac{1}{6}$ より $7 \leqq b \leqq 11$ となります。それぞれの場合について調べると、適するものは$$(b,c)=(7,42)、(8,24)、(9,18)、(10,15)$$と求められる。
ⅰ)$a=4$ のとき
$$\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c} =\dfrac{1}{4}$$となる。同様に $\dfrac{1}{4}<\dfrac{2}{b}$ 、$\dfrac{1}{b}<\dfrac{1}{4}$ より $5 \leqq b \leqq 7$ となります。それぞれの場合について調べると、適するものは$$(b,c)=(5,20)、(6,12)$$と求められる。
ⅰ)$a=5$ のとき
$$\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c} =\dfrac{3}{10}$$となる。同様に $\dfrac{3}{10}<\dfrac{2}{b}$ 、$\dfrac{1}{b}<\dfrac{3}{10}$ より $10<3b<20$ であり、$b>a=5$ を合わせると $5 \leqq b \leqq 6$ となります。それぞれの場合について調べると、適するものはありません。
以上より、求める3つの自然数の組$(a,b,c)$は
$(3,7,42)$、$(3,8,24)$、$(3,9,18)$、$(3,10,15)$、$(4,5,20)$、$(4,6,12)$
となります。
(2)は単問だったら難問ですが、(1)を手掛かりに解くことができます。右辺を$\dfrac{1}{2}$にすれば(1)を利用できるのでは?と考えて、(2)の方程式の両辺を$2n$で割ってみると$$\dfrac{p}{2n}+\dfrac{q}{2n}+\dfrac{r}{2n}=\dfrac{1}{2}$$となります。問題は左辺ですが $p、q、r$ は$2n$の約数なので単位分数に直すことができることに気が付きます。つまり、
(**)$pa=qb=rc=2n$ かつ $a<b<c$
を満たすような3つの異なる整数 $a、b、c$ が存在し、$$\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c}=\dfrac{1}{2}$$と置き換えることができます。これで完全に(1)と同じ形にすることができました!
ここで $p、q、r$ の個数は $a、b、c$ の個数に1対1で対応するので、組$(p,q,r)$の個数$f(n)$は条件(**)を満たすような組$(a,b,c)$の個数に等しくなります。よって(1)で求めた解がすべて(**)を満たすような$n$を選べば$f(n)$が最大になると気付くことができます。以下、それぞれの解について調べます。
$(3,7,42)$が解となるとき(**)より$$\dfrac{3p}{2}=\dfrac{7q}{2}=21r=n$$となるから$n$は$21$の倍数です。
$(3,8,24)$が解となるとき(**)より$$\dfrac{3p}{2}=4q=12r=n$$となるから$n$は$12$の倍数です。
$(3,9,18)$が解となるとき(**)より$$\dfrac{3p}{2}=\dfrac{9q}{2}=9r=n$$となるから$n$は$9$の倍数です。
$(3,10,15)$が解となるとき(**)より$$\dfrac{3p}{2}=5q=\dfrac{15r}{2}=n$$となるから$n$は$15$の倍数です。
$(4,5,20)$が解となるとき(**)より$$2p=\dfrac{5q}{2}=10r=n$$となるから$n$は$10$の倍数です。
$(4,6,12)$が解となるとき(**)より$$2p=3q=6r=n$$となるから$n$は$6$の倍数です。
よって$f(n)$は$n$が$21$、$12$、$9$、$15$、$10$、$6$のすべての倍数であるときに最大となることが分かりました。つまり$2^2 \cdot 3^2 \cdot 5 \cdot 7$を素因数に持てばよいので、$1260$の倍数であればよいことになります。故に $M=6$ であり、求める自然数$n$の最小値は $1260$ です。
(コメント)
良く練られた問題です。今後色々な参考書で取り上げられるのではないでしょうか。(理系第5問とかにしても良かったのでは・・・?(個人の感想です(笑)))