図形の回転には複素数の積を使おう!

複素数の積には回転操作(&拡大or縮小)という図形的な意味があります。これを利用すると、ある点の周りの点や直線、曲線などの回転操作が容易に行えます。

 


 

 複素数の掛け算=回転操作

複素数の掛け算は複素平面上における図形の回転操作(&拡大or縮小)に対応しています。このことを解説している参考書やウェブサイトは山のようにありますが、念のためここでも確認しておきます。

複素数の積の図形的意味

 

$z=r_{0}(\cos \theta+i \sin \theta)$、$w=r(\cos \phi+i \sin \phi)$ のとき、$$\begin{cases}\begin{array}{l}z w=r_{0} r\{\cos (\theta+\phi)+i \sin (\theta+\phi)\} \\ \dfrac{z}{w}=\dfrac{r_{0}}{r}\{\cos (\theta-\phi)+i \sin (\theta-\phi)\}\end{array}\end{cases}$$となる。特に $r=1$ のとき、$z$に$w$を掛けることは、複素平面上において原点を中心に角$\phi$だけ点$z$を反時計回りに回転する操作に対応する。また、$z$に$\dfrac{1}{w}$を掛ける(=$z$を$w$で割る)ことは、積のときとは反対に時計回りの回転操作に対応する。

$r=1$ のときのイメージ図

要するに、点$(x,y)$に対応する複素数 $x+yi$ に対して $\cos \phi+i \sin \phi$ という複素数を掛ければ、原点を中心に角$\phi$だけ回転した点の座標が得られます。

回転中心が原点でない場合は平行移動で回転中心の点を原点に重ね合わせてから回転操作を施し、最後に平行移動で元に戻すという手順を取ります。つまり、回転を表す複素数を$w$、平行移動を表す複素数を$\alpha$とするとき、点$z$を回転して得られる点$z^{\prime}$は$$z^{\prime}=w(z+\alpha)-\alpha$$と表現できます。

 

 例題

では、いくつかの例題で使い方を確認しましょう。

例題①

点 $\mathrm{A}(1,3)$ を原点を中心に$90^{\circ}$だけ反時計回りに回転して得られる点は?

求めるべき点は、複素数 $1+3i$ に対して $\cos 90^{\circ}+i \sin 90^{\circ}$ を掛けることで得られます。実際、$$\begin{align}& (1+3i)(\cos 90^{\circ}+i \sin 90^{\circ}) \\ =\,& (1+3i)(0+i) \\ =\,& -3+i \end{align}$$となるので、$(-3,1)$が求める点です。


例題②

原点 $\mathrm{O}(0,0)$ および点 $\mathrm{A}(1,1)$ を頂点とする正三角形のもう一つの頂点の座標は?

求めるべき点は、複素数 $1+i$ に対して $\cos 60^{\circ}+i \sin 60^{\circ}$ を掛ける、もしくは $\cos (-60^{\circ})+i \sin (-60^{\circ})$ を掛けることで得られます。前者の場合、$$\begin{align}& (1+i)(\cos 60^{\circ}+i \sin 60^{\circ}) \\ =\,& (1+i)\left(\dfrac{1}{2}+\dfrac{\sqrt{3}}{2}i\right) \\ =\,& \dfrac{1-\sqrt{3}}{2}+\dfrac{1+\sqrt{3}}{2}i \end{align}$$となり、後者の場合、$$\begin{align}& (1+i)(\cos (-60^{\circ})+i \sin (-60^{\circ})) \\ =\,& (1+i)\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{\sqrt{3}}{2}i\right) \\ =\,& \dfrac{1+\sqrt{3}}{2}+\dfrac{1-\sqrt{3}}{2}i \end{align}$$となるので、2点$\small \left(-\dfrac{\sqrt{3}-1}{2},\dfrac{1+\sqrt{3}}{2}\right)$と$\small \left(\dfrac{1+\sqrt{3}}{2},-\dfrac{\sqrt{3}-1}{2}\right)$が求める点となります。


例題③

座標平面上で原点を中心として曲線 $y=x^2$ を$45^{\circ}$だけ回転させて得られる曲線の方程式は?

求めるべき曲線は、パラメータ表示された複素数 $t+t^2 i$ に対して $\cos 45^{\circ}+i \sin 45^{\circ}$ を掛ける、もしくは $\cos (-45^{\circ})+i \sin (-45^{\circ})$ を掛けることで得られます。

前者の場合、$$\begin{align}& (t+t^2 i)(\cos 45^{\circ}+i \sin 45^{\circ}) \\ =\,& (t+t^2 i)\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}+\dfrac{1}{\sqrt{2}}i\right) \\ =\,& \dfrac{\sqrt{2}}{2}(t+t^2 i)(1+i) \\ =\,& \dfrac{\sqrt{2}}{2}(t-t^2)+\dfrac{\sqrt{2}}{2}(t+t^2)i\end{align}$$となり、この回転操作によって移される点$(X,Y)$は$$\begin{cases} X=\dfrac{\sqrt{2}}{2}(t-t^2) \\ Y=\dfrac{\sqrt{2}}{2}(t+t^2) \end{cases}$$と表せます。これより、$$X+Y=\sqrt{2}\,t$$ $$\therefore t=\dfrac{1}{\sqrt{2}}(X+Y)$$となるので$t$を消去して整理すると、$$X^2+2XY+Y^2+\sqrt{2}X-\sqrt{2}Y=0$$を得ます。これが求める曲線の方程式となります。

また、後者の場合($-45^{\circ}$だけ回転するとき)の方程式は$$X^2-2XY+Y^2-\sqrt{2}X-\sqrt{2}Y=0$$となります。

このように複素数は点だけでなく、直線や曲線といった図形の回転にも利用することができます。

 



図形の回転操作は複素平面上に落とし込んで考えるのが便利です。行列を使っても全く同じことができますが、複素数を使う方が一次変換を直感的に扱えると思います。座標平面や平面図形の問題を複素数で解くという選択肢は常に頭に入れておきたいですね!

 

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