本稿では積分を使って一般の図形の重心を求める方法を解説します。
そもそも重心とは?
「重心」とは「質量をもつ図形に対して働く万有引力(重力)の合力の作用点」として定義される点のことを指します。
身近な例で考えてみましょう。手元に鉛筆がある人は、下の図のように人差し指で釣り合いのとれる位置を探してみて下さい。このようにして、ちょうどバランスのとれるポイントが見つかるはずです。この位置が鉛筆の重心に相当します。
鉛筆全体に働く重力の合力は重心に集約されていると見なすことができて、実際に「万有引力(重力)の合力の作用点」になっています。そのため、重心をピンポイントで支えれば、鉛筆全体に働く重力と釣り合いが取れるのです。
物体(質量を有する物質の集合体)には例外なく重心が存在します。重心の位置を算出しておくと物理的な現象を考察する上で役立ちます。例えば、剛直な物体に働く重力は重心に集中して働くものとして考えることができるので、物体の運動を考えるのが簡単になります。
重心を求める「公式」
重心がどこにあるのかを見つける一般的な方法を知っておくと便利です。高校物理の教科書には次のような公式が載っています。
これは座標軸を自分で設定して計算により求める公式ですが、分割の難しい図形に適用するのは困難です。例えば下図のAのような長方形を組み合わせた図形の重心は上の式を使って求められますが、Bのような曲線を含む図形の重心は求めることができません。
そこでBのような場合では「面積の細分を考える」という積分の考え方に似た方法で重心を求めます。分かりやすくするために直角二等辺三角形を例に考えてみましょう。
直角二等辺三角形の面積全体(
この直角二等辺三角形の質量を
いま、斜線部の重心の位置を
これが今回紹介する重心の公式です。このように面積の細分を考えることによって、関数の積分を用いて重心の位置を求めることができます。
直角二等辺三角形の重心
上記の公式により、等辺の長さが
放物線の重心
公式を使えば上図のような放物線が囲む図形の面積も求められます。
半円の重心
半径が
半球の重心
以上の方法は平面図形だけでなく立体図形にも応用可能です。最後に半径が
底面からの高さが
以上の結果は高校の範囲では基本的に教わることは無いと思います。積分表示になっているので難しそうに見えますが、結局のところ求めるべきは加重平均なので、考え方は変わりません。質量分布が一様な物体であれば、今回紹介した公式
ところで、半円では円周率
半円の重心、
-2/3(1-x^2)^(3/2) の微分は2x(1-x^2)^(0.5)
ではないですか?
Mikimoto さん
コメントありがとうございます。 が抜け落ちていましたので、修正しました。
仰る通り
ご指摘に感謝いたします。